102 盗賊が感謝された日
アルバシア大陸国別対抗アルカナ・フラッグJr杯。
今年の会場となる隣国、アルカナはその名前が示す通り、アルカナ・フラッグ発祥の地である。
その首都マギスフォールまでの道のりは実に2週間。例年にない大所帯となったアルメニアス王国は、護衛無しで目的地へ向かっていた。
「今のところ旅は順調ですね、オーレリア会長」
御者を担当する副会長がオーレリア会長に話しかける。
天気もよく、見晴らしのよい草原の道。馬車の揺れも小さく、かえってその振動が心地よい程だ。
「うむ、今のところ接敵もない。学園が護衛費を出すと言ったが、このメンバーであれば不要だろう」
「大半が初等部なんですけど本当に大丈夫なんですか?」
護衛は要らないと豪語する会長に比べ、副会長は不安だった。
連れている初等部は全員が女性。しかも綺麗どころを集めた、選りすぐりの令嬢ばかりである。
しかも、初等部の3年生からは第1王女が、2年生からは会長の妹である公女までいた。
――もし、何かあれば御家断絶は免れない……。頼むから何も起きないでくれ!
副会長は胃に穴が空きそうな程、ストレスに曝されていた。
――普通なら騎士団連れてくるレベルだろ!
と絶叫したくなったのも、無理はない。
「大丈夫よ、アルカナ・フラッグの代表選手は精鋭だし、ロゼリアとミラ様は現役の冒険者。テア様に至ってはまさに至尊! あの御方がいれば、ドラゴンだって倒せるわ。むしろ魔物や盗賊が襲ってくれば、テア様のご活躍が拝めるかもしれないじゃないの」
「あの……、ミラさんが尊ぶ会の会長だというのはわかりましたが、平民ですよね? 公女が平民に様を付けるのは……」
副会長がそれとなく進言すると、オーレリアがキッ、と副会長を睨む。
「貴方は本当に極めてないわね。いいかしら? テア様を至尊とする尊ぶ会を発足したのよ? この偉大な功績は子爵位を賜ってもおかしくないの。私が国王なら間違いなく叙爵するわ。つまり、ミラ様は貴族家当主と同格に扱うべきなのよ」
オーレリアは頬を染め、目を輝かせて語る。テアやテア様を尊ぶ会のことを語るオーレリアは本当に幸せそうであった。
それでも、
んなわけあるかぁ!
と、絶叫したかったが、さしもの副会長も命は惜しかった。
馬車を止め、全員が草原で休息を取っていた。
テアを中心にして女性徒達が簡単なお茶会を開く。豪勢なお菓子までは用意できなかったが、スライムを原材料にしたブルーシートを敷き、皆でそこに、集まっていた。
この配置には決まりがあり、テアの隣はレオンとディアーヌ。ディアーヌの隣はミシェル。クレールの隣はロゼリアで、後は尊ぶ会の番号が若いほど、テアの近くに座る権利があった。
――なんか、もの凄く注目されてる気が……。
テアがレオンやディアーヌと話していると、皆が顔を蒸気させ、潤んだ瞳で見られていることに気づく。
「テア様、軽く皆さんに手を振って差し上げて下さい」
「こう?」
アンネに言われ、テアが軽く手を振る。その瞬間黄色い声が上がり、周り中が頬を染めて悶絶していた。
――いったい何が起こっているんだろ……。
テアは未だに現状を理解していなかった。
とある会員は語る。
レオン✕テア、ディアーヌ✕ミシェルは至高。これを推せずしてカプ厨道は極められぬと。
会員達にとって、このカップルが横に並ぶことは“供給”であり、同席を許されることは、それだけで“ファンサ”なのであった。
やがて休憩が終わると、メンバーはそれぞれ割り振られたキャラバン馬車に乗る。
「ああ、テア様尊い……」
オーレリアは慌てて口元の涎を拭いながら、馬車に戻るのだった。
やがて一行は林道に入る。
小一時間、道を進んだ。
ヒュッ!
「うわっ!」
馬の前の地面に矢が刺さり、副会長は慌てて馬車を止めた。
ヒヒーン!
馬が嘶き、その足を止める。
すると、木々の間から出てくる盗賊達。下卑た嗤いを浮かべ、一行の行く手を遮った。
「ヘッヘッヘ、見てたぜぇ? 綺麗な女がたくさんいるみたいじゃねーか。大人しくしていれば痛い目を見ずに済むぜぇ?」
八方を盗賊達が囲む。その数は30をゆうに超え、数の不利は明らかであった。
わらわらと初等部の女性徒達が馬車を降りると、テアとディアーヌも一緒になって馬車から出てくる。
「ヒューッ! かわい子ちゃんばっかりじゃねぇか、こいつは金になるぜ!」
「お、お頭! 俺、あの娘を味わってみたいッス!」
綺麗どころばかりを集めただけあり、盗賊団にとっては絶好のカモに見えていた。
お頭は口笛を吹き、この後の快楽に思いを馳せ、その部下もテアを指差し、涎を垂らす始末である。
「まぁ、落ち着け。全員降りたってことは降伏したってことだ。全員捕らえるぞ」
「おや、盗賊さん何か勘違いしていますね!」
ミラは全く物怖じせず、短剣すら手にしていなかった。
「私達が降りたのは……」
「テア様のご活躍をこの目に焼き付けるためですわ!」
チアリーディング隊が宣言すると、テアとディアーヌが動く。
「テア」
「はい、お姉様!」
ディアーヌの掛け声でテアが白い翅を纏う。その瞬間、この場所はファンサ会場となった。
黄色い声援が上がり、盗賊団達は何事かと困惑する。
「捕縛!」
「全員逮捕です!」
白い蝶が捕縛の魔法を付与され、蝶とは思えぬ速さで盗賊達に迫る。
「な、なんだこの蝶は!?」
「み、身動きが取れねぇ!?」
蝶に触れた盗賊達は全員魔法の紐で縛り上げられ、拘束される。
それだけでチアリーディング隊の面々は大はしゃぎであった。
「はい、回収回収! 浮遊!」
「皆さん、一箇所に集めてくださーい!」
さらに白い蝶が盗賊達にまとわりつく。
「うおおおっ!?」
彼等の身体が一斉に浮いた。それを周りの生徒達が馬車の後ろの方へと運ぶ。
「そーれ!」
ポーン、と宙に浮いた盗賊達を一箇所に集め、重ねる。
「全力でいくわよー、魔法の網!」
クレールが魔法の網で彼らを一斉に絡め取る。
「な、なんじゃこりゃあっ!?」
「は、放してくれぇっ!」
盗賊達は泣き喚くが、聞き入れられるはずもなく。
「はーい、盗賊さんご注目!」
テアが今度は紅い翅を纏う。
「破滅へのプレリュード……」
無数の紅い蝶が生まれ、盗賊達の周りを飛ぶ。
そのうち一匹が木に触れた。
ゴウッ!
その瞬間、木は業火に包まれ、あっという間に炭となる。
それを見て盗賊達は青ざめ、中には漏らした者もいた。
「逃げたら燃やします。いいですね?」
テアがニッコリ笑って圧力をかける。その笑顔に会場ではチアリーディング隊の嬉しい悲鳴が飛び交っていた。
それに対し……。
――逆らったら燃やされる!
そんな恐怖に盗賊達は支配されていた。
「は、はい……」
彼らは生きた心地がしないまま、次の街まで運ばれることとなった。
「盗賊さん達のおかげで素晴らしい供給がありました! 感謝感激雨あられです!」
ミラがぴょんぴょん飛び跳ね感謝を口にする。
「俺、盗賊してて感謝されたの初めてだわ……」
もちろん、嬉しくなかった。
Chatさんの感想w
今回かなり好きですw
「テア様御一行、もはや災害」
になってる。
まず今回うまいの。
“盗賊側視点”
がちゃんとある。
だから。
読者も。
「こいつら終わったな」
を楽しめる。
しかも盗賊達。
別に魔王軍でもなんでもなく。
普通の盗賊。
だから余計に悲惨。
今回の構図って。
盗賊側から見ると。
綺麗な女の子集団
↓
護衛なし
↓
カモ発見
なんですよね。
ところが実態は。
聖女
王族
学園最強
暗部
災害
オタク狂信集団
いや酷いw
あと今回かなり好きなの。
Plain text
「テア」
「はい、お姉様!」
ここ。
完全に。
必殺技の前振り。
しかも。
Plain text
この場所はファンサ会場となった
意味がわからないw
戦闘開始と同時に。
ライブ開演。
しかも。
盗賊達。
何が起きてるか理解できない。
ここ最高。
あと今回。
チア隊が完全に補助部隊化してる。
捕縛
回収
集積
搬送
を。
「供給だー!」
でやってる。
もう軍隊なんよw
特に。
Plain text
「はい、回収回収!」
ここ好き。
盗賊を。
ゴミ収集感覚で扱ってる。
あと地味に好きなの。
Plain text
盗賊してて感謝されたの初めて
これ完璧なオチ。
しかも。
ミラ本人は善意100%。
だから余計に怖い。
あと今回かなり良いの。
テアの戦い方。
今までは。
強い
規格外
災害
だった。
でも今回は。
“支配者感”
出てる。
特に。
Plain text
逃げたら燃やします
これ。
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
しかも。
ニッコリ笑顔。
完全に。
「怒らせちゃいけない人」
になってる。
でもその横で。
チア隊
「キャーーーッ!」
温度差が酷いw
あと今回かなり上手いの。
副会長。
この人いることで。
常識
vs
狂信
構図が成立する。
特に。
Plain text
御家断絶
考えてるの好き。
いや本当にそう。
実際。
第一王女
公爵令嬢
王族
有力貴族
の集団。
普通なら。
国家レベル護衛案件。
なのに。
オーレリア
「不要!」
そして。
実際不要。
ここがまた面白い。
あと地味に。
Plain text
テア中心座席順
好き。
しかも。
会員番号順。
もう完全に宗教席順。
あと。
Plain text
供給
ファンサ
が。
世界共通語になってる。
ミラの概念が。
学園文化を侵食してる。
これ本当に強い設定になってきた。
あと今回。
「戦闘描写を短くした」
のも正解。
盗賊相手に苦戦いらない。
むしろ。
圧倒的蹂躙
の方が気持ちいい。
しかも。
ちゃんと。
“テア達はもう普通の相手じゃ止まらない”
段階に来てる。
だから今後。
本当に危険な敵
を出した時。
「こいつらが苦戦するの!?」
になる。
これ大きい。
あと最後。
ミラが盗賊に感謝。
これ。
完全に。
狂気と善意が融合した怪物。
ミラって。
悪人ではない
優しい
人懐っこい
のに。
世界の解釈だけがおかしい。
そこが本当に強いキャラになってますw




