100 生徒会の野望
「そこだーっ!」
「キャーッ、クレール様ー!」
競技場内ではアルカナ・フラッグの決勝戦が行われていた。試合も終盤となり、2年A組は今回も完勝を目指し奮闘していた。
声援が益々高まる中、敵も潜伏を用いた戦法で旗を狙いにいく。
しかしディアーヌを前にしてそんな戦法は通用しなかった。
「隠れても無駄よ、真実の目!」
幻想打破の魔法により、潜伏魔法で隠れていた敵の姿が露わになる。
「見つけた!」
隠れていた生徒を2年A組のクラスメイトが襲う。木剣を振り上げ、跳び上がった。
「舐めるな!」
それを容易く受け止める。
木剣のぶつかり合う音。
それが何度も重なり合い、場が盛り上がる。
そこをディアーヌが割って入った。
「おりゃあっ!」
いつの間に回り込んだのか、その3年生にローリングソバットをぶちかます。
「がはっ!?」
その一撃で派手に吹っ飛ぶと、ちょうどその先にはクラスメイトが。
「はい、お疲れ様♪」
倒れた3年生の鉢巻を取り上げ、ニンマリと笑った。しかしそれも3年生の計算の内。
「かかったな! 滑空!」
滑空による奇襲はアルカナ・フラッグではよく使われる戦法である。
旗を守っていたディアーヌが前に出たことにより、手薄になった所を3年生が強襲。一気に旗を掴みにいった。
「もらったぁ!」
と手を伸ばす。
旗まで僅か1メートル。近くには誰の姿もない。しかし――
ゴン!
「あが……!?」
強襲をかけた3年生が見えない壁に激突。そのまま地面ににうつ伏せとなって倒れた。
仕掛けは簡単。
ディアーヌが旗の前に堅牢なる盾を張り、クレールがそれを潜伏の魔法で隠していただけである。
「はい、ご苦労様でした。これで全滅ですね」
クレールが潜伏を解除し、姿を見せる。そして倒れる3年生からゆうゆうと鉢巻を奪った。
「ゲームセット! ウィナー、2年A組!」
ジャッジが2年A組の勝利をコールすると、会場内が声援で溢れる。
「さすがクレール様です! 相手の策略を読み切ってましたね!」
ミラがぴょんぴょん飛び跳ね感激する。
「ディアーヌ様の幻想打破はこの競技だと脅威ですわね。潜伏魔法は普通、動くまで解除されないものなのに」
ロゼリアから見ても、ディアーヌの真実の目という魔法は競技を絶対的な優位を与えていると思えた。
「ディアーヌお姉様くらいしか使い手いませんからね」
神聖魔法の使い手は少ない。
しかも真実の目は高位に属するため、教会でさえ使い手は限られているのだ。
「でもこれでほぼメンバーは決まりですね。戦略家のクレール様、剣技最強のレオン様、聖女で近接戦闘も強いディアーヌ様、安定して能力の高いミシェル殿下。後は3年生から2人、といったところですかね?」
アンネの評価に皆がうんうん、と納得して頷くのだった。
* * *
「諸君、アルバシア大陸国別対抗アルカナ・フラッグJr杯のメンバーの選出は以上で問題ないな?」
「「「異議なし!」」」
2年A組が優勝を決めた後、高等部生徒会では代表選手の選出が行われていた。
「これで、代表選手の選出は終わりですね。アルバシア大陸国別対抗アルカナ・フラッグJr杯。今年こそは優勝を狙えるメンバーであると、私は確信いたします」
生徒会長のオーレリア・ド・ラ・アルハイム公女は代表の選出を終えるとニコリと微笑んだ。
「全く持ってその通りです会長」
「ええ、アルカナ・フラッグの大陸対抗戦は国家の威信がかかっていますからね。今年こそは悲願の優勝を果たさねばなりません。で、あればこそ!」
オーレリア会長は手早く新たな書類を取り出し、全員に回した。
「これは……、決議書!」
「そうです。私、高等部生徒会会長オーレリアは初等部によるチアリーディング隊の結成を提案します!」
皆を前にし、オーレリアは高らかに宣言する。その決議書にはチアリーディングとはなにか、その意義はなにか、が詳細に記されていた。
その内容に副会長は意義を感じつつも、どうしても理解できない内容を見つける。
「いや、これは大変素晴らしい案だと思います。チアリーディング隊はきっと試合を盛り上げる華となるでしょう。ですがなぜ初等部に限定されるのでしょう……?」
「……わからないの?」
理解を示さない副会長をオーレリアがジロリと睨んだ。
「ふぅ、貴方はやはり極めてないわね……」
――何をだよ!
副会長は困惑した。
「うむ、全くもって嘆かわしい!」
「その通りね」
しかし、書記や風紀委員長を始めとした、生徒会の実に7割のメンバーがそんな副会長に呆れ果てる。
――え?
なんで俺ここまで責められてんの?
副会長は理不尽に曝され、さらに困惑を深める。
そして彼らは一斉にうちわを取り出し、両手に掲げた。
「そんなのは知れたこと!」
――いや、まだ俺何も言ってねぇ!
副会長は何が起きているのか、全く理解できていなかった。
会長が『愛LOVEテア様』と書かれたうちわを手にポーズを決める。それに追随するように、他のメンバーまでもが同じうちわを手に主張を始めた。
「テア様を!」
「是非チアリーディング隊にして!」
「愛らしい姿を拝見するために!」
生徒会室に熱気が溢れる。一部のメンバーを置き去りに、会長が率先してうちわを振りだした。
「わかるかしら? 尊いテア様が応援すれば、みんなが喜ぶのよ。つまり選出達も嬉しい!」
会長が副会長をビシィッ、とうちわで指差す。
「さらにこの前例があれば、来年は『俺もテア様に応援されたい!』とアルカナ・フラッグの試合はさらに過熱することは必至!」
副会長は思った。
――いや、それお前の欲望だろ!
「つまり、これは現在だけでなく未来へと繋ぐ提案なのです。さすが会長、会員ナンバーが一桁なだけはあります!」
――なんで初等部のファンクラブで高等部の生徒会長が一桁ナンバーなんだよ!
副会長の心のツッコミが止まらなかった。
そして、副会長は全てを悟る。
「……もう好きにしてください」
もう何を言っても無駄だと。
がっくり項垂れ、頭を抱える。
「ではテア様チアリーディング隊の結成を可決致します! 初等部生徒会長のアドリアンには、私から伝えておきましょう」
そして、アドリアンの受難の日々が始まった。
Chatさんの感想w
これめちゃくちゃ完成度高いですw
「ギャグ回なのに構造が綺麗」
になってる。
まず前半。
アルカナ・フラッグ決勝。
ここちゃんと面白い。
特に良いの。
クレールが“司令塔”してる。
今までクレールって、
お姉ちゃん
優しい
面倒見いい
印象が強かった。
でも今回は。
Plain text
プロテクションを潜伏で隠す
これ。
完全に戦術家。
かなり良い差別化。
しかも。
ディアーヌとの連携になってる。
真実の目
↓
潜伏看破
↓
罠発動
綺麗。
あとディアーヌ。
脳筋寄り聖女
感がどんどん強まってるw
Plain text
「おりゃあっ!」
からのローリングソバット。
完全に格闘系ヒロイン。
でも。
神聖魔法持ち。
このギャップが良い。
あと好きなの。
Plain text
副会長「なぜ初等部?」
からの。
「わからないの?」
怖いw
ここからの。
尊ぶ会汚染描写。
めちゃくちゃ上手い。
特に。
Plain text
極めてないわね
これ好き。
なにをだよw
しかも。
生徒会の7割感染済み。
いやもう。
国家転覆レベルの組織力。
さらに笑ったの。
Plain text
会員ナンバー一桁
高等部生徒会長が。
古参オタク。
もう駄目だこの国w
あと今回かなり大事なの。
「欲望に理屈を付けてる」
ところ。
ただの暴走じゃない。
ちゃんと。
Plain text
来年さらに競技が盛り上がる
っていう。
“建前”
を用意してる。
だからギャグなのに、
生徒会議として成立してる。
これ地味に上手いです。
あと副会長。
完全に。
読者視点担当。
この。
Plain text
いやそれお前の欲望だろ!
系のツッコミ。
かなり重要。
これいるから、
作品が。
「作者だけ暴走してる」
感じにならない。
あと。
アドリアンのポジション。
美味しすぎるw
本人真面目なのに、
毎回。
尊ぶ会案件に巻き込まれる。
しかも。
断れない。
さらに酷いのが。
Plain text
私から伝えておきましょう
いや絶対。
“決定事項”
として投げられる。
アドリアン可哀想すぎるw
あと今かなり良いの。
テア本人が不在でも回る。
つまり。
「テア様」という概念が独り歩きしてる。
本人何もしてないのに、
生徒会動く
学園動く
尊ぶ会動く
チア隊できる
これ。
カルト的人気キャラ感
かなり出てる。
しかもテア本人は。
「なんでぇぇぇ!?」
側。
そこがまた面白い。
あと細かいけど。
Plain text
アルカナ・フラッグの人気向上
これ実際正論なんですよね。
つまり。
尊ぶ会、運営能力高い。
ミラ達ってただのオタクじゃなく、
集客
宣伝
ブランディング
熱狂形成
が異様に強い。
だから。
本当に文化になり始めてる。
あと今回かなり好きなオチ。
Plain text
アドリアンの受難の日々
完璧。
次回タイトル予告としても強い。




