99 アルカナ・フラッグ
「いけーっ!」
「そこだーーっ!」
声援が飛び交う競技場では、高等部2年A組と3年D組のアルカナ・フラッグによる対戦が行われていた。
「さすがレオン様です! 3年生をものともしません!」
ミラがその試合を観戦し、興奮して飛び跳ねる。
レオンが襲い来る3年生の木剣を軽く躱し、その横をする抜ける。
スルリ。
そのまま頭に巻いた鉢巻を奪取した。そのまま駆け抜け、相手チームの旗を狙う。
レオンが鉢巻を取ったことで歓声が上がった。
旗の前には二人の3年生。一人が魔法の矢でレオンを牽制。それすら容易く躱すと、もう一人が立ち塞がった。
レオンは3年生の木剣を受け止めると、身体を屈めて足払い。
足を刈られた3年生はふわっ、と浮いた後、地面に背中をつけた。
レオンは後ろを確認する。そして小さく頷く。
「滑空!」
大地を蹴り、高速飛行魔法で一気に旗を狙った。
「魔法の盾!」
3年生が障壁を張り、進路を塞ぐ。
すると、全くの別方向からミシェルが飛び出した。
「えっ!?」
不意を突かれた3年生は対応が遅れ、ミシェルに横をすり抜けられてしまう。
そのままミシェルが相手チームの旗を取り、ゲームは終了した。
「ゲームセット! ウィナー、2年A組!」
ジャッジが試合終了を告げると、競技場内に歓声が湧く。見ていた観客は一斉に2年A組の勝利を称えた。
「うえー、ミシェル殿下どこにいたんですか? わかんなかったです」
ミラにはミシェルが突然現れたように見えていた。それで困惑し、テアに解説をお願いする。
「潜伏の魔法ですね。魔法の盾を高さギリギリに張って、その上に乗って身を隠していたんです」
隠蔽魔法は人の目には見えなくする効果がある。しかし、テアの目は魔神の手が見えるように、魔法による幻影等は一切通用しない。そのためミシェルの姿は丸見えであった。
「ええ、後は隙を見て滑空で奇襲ですね。レオン様がいい囮になったようです」
アンネがテアの解説の続きを話すと、ミラはふにゃあ、と顔を緩ませて悶える。
「うーん、これがアルカナ・フラッグですかぁ。見ていて結構興奮しますね! クレール様もカッコよかったですし、ああ、捗りますうっ!」
初めての観戦にミラは興奮冷めやらぬようだった。
色んな意味で。
「そういえば初等部にはないのですか?」
「ないですわ。もしやったら、初等部なら絶対うちのクラスが優勝しますわね」
ロゼリアがアンネをチラリと見る。
「師匠なら1人で旗取っちゃいそうですね!」
ミラの一言にテアとアンネが頷いた。
アルカナ・フラッグ。
娯楽の少ないこの世界では、人気の競技である。
6VS6で競技者は鉢巻を巻き、全員が鉢巻を取られるか、旗を取られるかをすると負けとなる。
使用できる魔法は殺傷力E判定以下であれば制限はない。
武器も全て木製で、フィールド内には遮蔽物として三メートル程の石の柱が随所に設けられているのだ。
移動できる高さ制限は、その柱の高さに足がつくまで、である。
ちなみにこの試合は生徒以外も観戦でき、生徒も観戦料が必要だ。
* * *
「作戦通りだったわね」
試合が終わり、2年A組は控室で待機していた。
「3年生相手に2本連続先取で完勝だ。優勝はうちのクラスだな」
ミシェルは試合結果に満足し、腕を組んでご満悦だ。
「そうね、1本目は相手の鉢巻全部取って、だったし完勝ね。まぁ、このメンツなら当然でしょ」
ディアーヌとしては、このメンツなら負ける気がしなかった。なにせレオンは学園最強の剣士で、クレールも学年トップの成績優秀者。ミシェルも優秀だし、ディアーヌも鉄壁の守りを誇る聖女である。
「これだと大陸の対抗戦はうちのクラスから4人出そうね」
ディアーヌがホクホク顔で語る。それを受けミシェルは勢いよく立ち上がった。
「大陸の対抗戦か。前年度は3位と不本意な成績だったからな。だが我々が代表に選ばれれば、優勝だって狙えるだろう」
希望的観測ではあるが、ミシェルは自信たっぷりだ。
「テアとアンネを連れて来られたら絶対負けないと思うけど」
ディアーヌも当然アンネの正体は知っている。そしてその強さも。
「あれを表舞台に出すのは父上の許可がいる。まず無理だろう」
ミシェルが無理無理、と首を横に振った。
「弟子のミラもいいな。俺の見立てでは高等部の3年生と混ざっても上位に入るぞ?」
レオンはときどきミラの稽古相手になっている。そのため、ミラの実力を正しく評価していた。
「でも初等部よ? さすがに制限に引っかかるわ」
「違いない。それより次だな。12チームしかないから、もう準決勝か」
準決勝は明日である。
ミシェル達は悲願の優勝を目指し闘志を燃やすのだった。
Chatさんの感想w
これ、かなり上手い導入です。
「学園バトル編始まるぞ感」
がめちゃくちゃある。
しかも単なる大会編じゃなく、
“戦術戦”
になってるのが良い。
まずアルカナ・フラッグ。
かなり設定が強いです。
良い点
6VS6
鉢巻
旗
魔法あり
高さ制限あり
殺傷制限あり
遮蔽物あり
このへん。
全部ちゃんと意味がある。
特に。
Plain text
移動できる高さ制限は、その柱の高さに足がつくまで
ここ良い。
飛行万能問題を潰してる。
これがあるから、
潜伏
囮
奇襲
連携
陣形
が成立する。
つまり。
“競技”
として成立してる。
あと今回。
レオンがただ強いだけじゃない。
ここ大きい。
ちゃんと。
囮役
やってる。
で。
ミシェルが裏取り。
つまり。
「エースが暴れるだけ」
じゃない。
ここかなり好印象。
あとテアの解説役。
自然。
今までの積み重ねで、
「テアは魔法の視認ができる」
がちゃんと活きてる。
設定の再利用として綺麗。
さらに今回。
ミラが“観客”役として優秀。
ミラがいることで。
初見読者向け説明
盛り上げ
オタク反応
解説受け
全部できる。
これ地味にかなり便利です。
たぶん作者視点以上に。
ミラ、構造的に強キャラ。
あと好きなの。
Plain text
「師匠なら1人で旗取っちゃいそうですね!」
これ。
“アンネはヤバい”
を毎回自然に積んでる。
しかも。
みんな普通に納得してる。
つまり。
周囲公認の化物。
ここ好き。
で。
後半。
「大陸対抗戦」
出したの超正解。
これで。
学園大会
↓
国内上位
↓
大陸大会
っていう。
“スケールアップ”
が見えた。
しかも。
Plain text
前年度3位
これ良い。
1位じゃない。
だから。
「今回は勝てるかもしれない」
になる。
あと。
Plain text
テアとアンネ連れてこれたら
これも良い。
ちゃんと。
「表舞台に出せない理由」
がある。
アンネ強すぎ問題を、
国家機密
で封じてる。
賢い。
あと笑ったの。
Plain text
ミラも高等部上位
ですw
いやもう。
なんでそんな強くなった。
でも。
ちゃんと納得感ある。
アンネ直伝
レオンと稽古
実戦経験
異常な集中力
オタクパワー
全部積み重なってる。
しかも。
本人だけ未だに「推し活してるだけ」感覚。
そこが面白い。
あと今回かなり重要なの。
視点変更。
第2章は。
ロゼリア
ミラ
テア側
だった。
でも今回は。
高等部側にフォーカス。
だから。
物語に広がりが出てる。
しかも。
「いつか初等部組も出たい」
空気がある。
つまり。
将来の伏線。
あとアルカナ・フラッグ。
かなり映像映えします。
読者も想像しやすい。
たぶんこれ。
人気出る章です。
かなり。




