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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第1章 ラスボス廃棄少女になった私

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9 私の世界が終わる日 2

「な、何が起こったんだ!?」


  驚く賊ども。しかしそんなことはどうでもいい。


 今必要なのはこいつらを一人残らず殺すことだ。


「テ、テア⋯⋯?」

「ジルは逃げていいよ。マエルさんは私が治すから」


 わかる。

 どうすればマエルさんを助けられるのか。黒い手を1本白く染める。


 その手がマエルさんの身体に触れる。


「癒せ」


 私の一言でマエルさんの身体が淡い光に包まれる。

 すると傷はみるみる塞がりマエルさんの顔色も良くなってきた。


「大丈夫、あいつらは殺すから⋯⋯」


  抑揚のない声。

 まるで自分を俯瞰している気分だ。何かに突き動かされるように私は右手をかざした。破壊の手が賊どもを掴みに行く。

 その手は賊どもに見えないはずだ。


「破壊しろ」


 その一言で賊どもの頭が弾け飛んだ。

 なんの感慨もない。

 まるで邪魔な虫を踏み潰しているような感覚。頭が割れ、倒れる盗賊を見てもただの肉の塊としか思えなかった。


「な、なんだ? 何が起きている?」

「あ、悪魔だ! こいつは悪魔だ!」

「くそっ、やっちまえ!」


 賊どもが何か喚いているが全く響かないな。

 今までやって来たことがブーメランになって返ってきてるだけだ。


「くそっ! このガキは殺せ!」


 賊どもが何人かこちらに走って来る。しかし全く恐怖を感じない。なんというか、本当に何も感じないのだ。


 賊どもが私に飛びかかる。しかし私は冷静に悪魔の手を操り、襲いかかる賊どもの胸に手を突っ込ませた。


 ――ああ、どくどくと脈打っているのを感じる。


 こんな奴らの心臓でも温かいんだね。


「もぎ取れ」


 その瞬間、賊どもが心臓を失った。賊どもが絶叫をあげる。

 胸から大量の鮮血が飛び、私の顔にも数滴かかった。流れ落ちる血が口元へと滑りゆく。


 ペロリ。


 これが血の味か、美味しくはないな。


 なんで舐めようと思ったのか。それは自分でもわからない。


 しかしなぜだろう、わかることがあった。


 私は今笑みを浮かべている。


「ひ、ひいいぃぃぃぃっ!」


 その様子にジルが絶叫をあげた。

 それでも私はジルの方を向かなかった。


 私の今の関心は、こいつらを皆殺しにすることだけなのだから。

 1本の腕に腰掛け、もう一本の腕に捕まる。これで移動すれば早そうだ。


 さぁ、始めようか。


「に、逃げろ、逃げるんだ!」

「⋯⋯逃がさない」


 私の指先を賊どもに向けた。そして悪魔の手が賊どもに手のひらを向ける。


「死ね」


 あまりにざっくりした命令。しかし悪魔の手から放たれた黒い光線は賊どもの胸を、腹を貫いていく。その光線は貫通し、後ろの賊の身体を穿った。これで入り口あたりにいた賊どもは全員殺した。あとは中に入り込んだ賊を殺すのみ。


「ジル」

「⋯⋯!」


 私が振り向くとジルはあからさまに怯えていた。

 声さえ出せず、後ずさった勢いで尻もちをつく。


「中に入った賊を殺してくる。2人だけだからすぐに済む。マエルさんをお願い」

「あ、あ⋯⋯」


  ガタガタと震え、返事すらままならないようだ。

 それなのに私の心は傷つかない。まるでもう1人の私が動き、それを遠くから眺めているような気分だ。


 まぁいい。とにかくさっさと残りを殺そう。逃がしたのは2人だけのはずだ。私は腕に乗って低空飛行しながら賊を追う。


「見つけた」


 まず1人。そいつは他人の家にいたようだ。悲鳴が聞こえたおかげですぐわかったよ。その家へ躊躇なく入ると、ちょうど賊が剣を振り上げているところだった。


「させない」


 悪魔の手を飛ばし、首根っこを掴む。


「おぶっ!?」


 乱暴に掴んだせいか変な声をあげる。他の手も飛ばし、両脚を掴ませた。そして強引にひきずり倒すと私の方へと寄せる。


「もう1人はどこ?」

「ば、化け物がぁっ!」

「うるさい」


 答えないから殺すのみだ。掴んだ首を破壊すると首が転がり、そこから血が噴き出す。しまった、家を汚してしまったか。


「ひっ⋯⋯!」


 助けられた村の男は悲鳴をあげ後ずさる。さて、残り一人だ。さっさと殺そう。


「あと一人⋯⋯」


 ボソッと呟き家を出る。どこだ、どこにいる?

 

「や、やめろーーーっ!」


 聞き覚えのある声だ。あそこか。私は声のした方へ急行する。その様子は多くの村人が目にしていたのだが、そんなことすら今の私の頭からは消えていたのだ。もう1人は誰かの家の前にいた。


「来るな化け物!」


 もう1人の賊は私を見るなり近くにいた子供を人質にとる。見覚えのある女の子だ。しかし悪魔の手は人の目には見えない。つまり人質など無意味だ。


「ひっ⋯⋯! テ、テア⋯⋯ちゃん⋯⋯?」

「⋯⋯問題ない。すぐ終わるから」

「おい、うごぶふぁっ!?」

「キャアアアアアアッ!」


 言葉の最後が聞き取れなかったな。頭が爆ぜたから仕方がないか。ああ、あの子の顔と身体を血まみれにしてしまった。後で謝らないと。


「⋯⋯これでお終い。ねぇ」


 私は横を向く。そしてまたも抑揚の無い声で周りに訊いた。


「他に賊、見てない?」

「い、いや⋯⋯」

「そう、ならこれで終わりか」


 そう思うと、すーっと自分の中の何かが去っていく感じがした。


「ねぇ、誰も怪我してない?」


 感情が戻ったような、変な感じがするなぁ。それでも私の心の中に人を殺した、という感覚が薄い。確かに私が私の意思で殺したつもりはある。なのに心への影響が全く感じられない。私ってこんなサイコパスだっただろうか?


「いや⋯⋯。それより、お前テアちゃんだよな?」

「うん、そうだけど」

「違う⋯⋯」


 女の子が呟く。


「え⋯⋯?」

「こんなのテアちゃんじゃない⋯⋯」


 その一言に私は固まってしまった。


「テアちゃんがこんな平気で人を殺せるわけない!」


 返り血に濡れながら女の子が叫ぶ。



「お、おい! 助けて貰ったんだろうが!」

「テアちゃんを返せこの化け物!」


 何も言い返せなかった。

 確かに私は私なのに、だ。


 どうしてか、私はその言葉を否定することができなかった。

 


   

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