第67話
決戦、六武衆④
カルヴィンが疾駆する。黄金に輝く瞳で敵を捉え、腕を伸ばす姿は宛ら獣の如く。その理は剛柔で語れば、間違いなく剛の形であろう。
周囲の家具が飛び散るのも一顧だにもせぬまま、砕いて壊して猛進する。開いた五指による一撃は、鋼鉄すらも抉り取ろう。況や人体ともなれば、耐えられる道理の方がない。
烈火の如き攻勢に、相対する女の動きは流水の如く。迫る腕の動きを肩や視線が動いた時点で見切り、前腕の外側に触れ軽く押す。
当然勢いのある剛腕が動くことはなく、故に押し出されるのは想定通りに姫乃の体。相手の腕を回転の支点として扱い、背後を取るのは柔らの形だ。
回転の勢いを殺さぬままに、後頭部に向け手刀を放つ。しかしてその刃は空を切り、その場で身を屈めたカルヴィンは女の下腹部を狙い再びの攻勢を。
掬い上げるような動作で迫る五指に向けて、膝を屈めた姫乃は蹴撃を合わせる。肉と肉が当たったとは思えぬ轟音の後、弾かれたように両者は共に後退した。
「はっ、んだよ。強ぇじゃねぇか、人間未満」
「はっ、当然だろう。人間風情」
認めるような男の言葉に、返す女の言葉は何処までも傲慢。そんな当たり前のことですら、口に出さねば分からぬのかと見下している素振りすらもある。
公方姫乃は、そんな女だ。どうしようもない小物で、救いようがない性根をしていて、見るに堪えない生き様をしていて、しかし強い。世界中でも、最上位に位置する戦士の一人だ。
「さぁてと、どうしたもんかねぇ。このまま続けるのも悪くはねぇんだが」
そんな女と殴り合いを続けながら、カルヴィンは静かに思考を進める。激しい動きで体が熱くなってはいても、心と頭脳は常に冷静沈着と言うのが彼の最大の強みが故に。
クールドリヨンは常に冷徹。己が能力も感情も名声も、等しく目的達成の為の手段として扱うのがこの男。故に修羅のように闘争に酔うこともなく、己が為すべきことだけを為す。
その点で言えば、既に役目は果たせていると言えた。この女を他の戦場から隔離して、他の場で決着がつくまで時間を稼ぐこと。それこそが、猫人の少女が男に求めた役割故に。
ミュシャが恐れていたのは、公方姫乃の爆発力。女の素性を知らずとも、その異常さは伝聞だけでも察していたのだ。彼女の滲威が齎す直感もそれを補強した。
尊い血に産まれた令嬢。六武衆に属してからは、2年と経っていない新参者。本人も率先して努力をするタイプではなく、なのに六武衆に名を連ねた程の才覚。
そんな姫乃と言う女は、言ってしまえば研磨され切っていない原石だ。故に成長の余地は大きく残っており、切っ掛けさえあればこれ以上に化けるだろう。
だからこそ、最悪の事態は起こり得る。だからこそ、それに対処し切れるカルヴィンと言う男が相対することになったのだ。
「流石にそろそろダレてきたわなぁ。他の連中も、もう決着が付いているだろうし、こっちもそろそろ終わらせるかね」
時間稼ぎが役目であったからこそ、殴り合いを続けた時間は長かった。まだ一刻には満たないが、それでも半刻以上は続けている。広々とした立派な邸宅も、今では廃墟の如しだ。
修羅のように平然と周囲の気配を感じ取るのは難しいが故に、カルヴィンには仲間達の勝敗は分からない。
それでも戦場が減っているとは感じていたのだ。故に己の役目は、これで果たせたと男は断じる。
ならば、どうするか。考え得る限りで最悪は、この女の爆発に己以外が巻き込まれること。相手がどんな成長を遂げても、確実に生き残れる保険があるのはカルヴィンだけなのだ。
故に敢えて爆発させて、相打ちに持ち込むと言うのも手としてはありだ。己の敗北すらも想定の中に織り込んで、此処でカルヴィンは力を振るう。
思い付いた己の勝機。修羅に対する最適解と思われる行動。それらは最悪の展開には万が一にも繋がらないから、失敗したとしても何一つとして問題はない。ならば、最早選ばぬ理由もない。この女は此処で倒すのだ。
「第二顕彰――不滅なるは獅子の咆哮!」
そして、黄金の鎧が顕現する。故に、これにて劇終だ。この戦いも、終わりに向けて一歩を踏み出す。
「んだよ、逃げねぇのか?」
「逃げる、だと? この私が? お前如きを相手に? 笑わせる」
何故ならば、対する女が慢心の塊であるが故。無敵となったカルヴィンに対する最適解を、この公方姫乃と言う女は選ばないし選べない。
「炎王陛下は、今の貴様を一方的に打ち破った」
「……で?」
「忌々しい二席は、今の貴様でなくとも、同じ無敵を技術で屈服させた」
「……だから?」
「言われねば分からんか? 貴様のそれは、真実無敵と言う訳ではない。ならば、この私に制することが出来ぬ道理もないのだ!」
「……はぁ」
東国六武衆の二席と四席は、荒れ狂う獅子の法則による無敵を技量で破ってみせた。頂点足る炎王に至っては、全身を無敵とする理すらも容易く貫いてみせたのだ。
既に三人も、カルヴィンの無敵に対する解を出している。ならば彼の理は真実無敵と呼べるものではなく、ならばその不完全な無敵を姫乃が攻略出来ないと言う理屈もない。
そんな論理を、根拠もなく語り信じる女。彼女の言葉に裏はない。心の底から、世界が自分に都合良く出来ているのだとこの女は信じている。
「世の真理を教えてやる。私は正しい。私は素晴らしい。私は間違えない。もしも万が一、それでも上手くいかぬならば、それは私が悪いのではなく、詰まりは世界が悪いのだ」
女の口から語られるのは、酒に酔った場で口にされるような戯言と同じ類のものであろう。酒に酔ってはいなくとも、女は己に酔っている。
世の中全ては自分の為に存在しており、都合良くならない時は他人や世界が悪いのだと。無根拠な自信。行き過ぎた過信。極まった他責思考。これが公方姫乃である。
「故にだ。私は心の底より信じている。正しい私が、敗れる道理などはない。ならばこれより、屈するのは貴様であると!」
「……そうかい」
胸を張ってそう告げる姫乃に対し、深く深く息を吐いたカルヴィンが口に出来たのは呆れの籠った言葉だけであった。
獅子の仮面に隠された彼の表情は、見えていなくとも分かるものだろう。幻滅し興醒めし白けている。要はドン引きしていた訳である。
こんなにも関わりたくないと感じる女と出会ったのは人生で二度目。瀕死の重傷に追い込んだのに心からの感謝を返して来た一人目よりはマシではあるが、正直五十歩百歩だろう。
嫌な女のことを思い出した、と更に表情に苦みを増やしつつも仕方がないと割り切る。如何なる精神状態にあっても、全力で戦えるのが男の利点でもあるが故。さっさと終わらせようと、彼は大きく踏み出した。
「なら、その御託を信じたままに潰れろや」
「な――っ!?」
その直後、カルヴィンの姿は姫乃の目の前に。相手の動きを認識することすら出来なかった。その事実に驚愕しつつも振るわれる拳を咄嗟に躱そうとした姫乃は、そこで再び想定外の事象に相対する。
カルヴィンの技量が上がっていた。獣のように圧し潰す剛腕ではなく、流れる水のように無駄のない動き。
それは明らかに姫乃の技量を超えていて、回避も防御も受け流しも間に合わない。無拍子の一撃が、女の体を打ち抜いていた。
「何も無敵ってのはよぉ、物理的な意味だけじゃねぇんだ。概念的にも、今の俺は無敵なんだよ」
「が――っ!?」
無敵の拳に腹を打たれて、その大部分を抉り取られる。構造的に立っていることすら難しくなった女は、それでもよろよろとよろめくだけ。
その姿は、流石に修羅か。繋がる皮を中心に、肉が盛り上がって傷を塞ぐ。傷口を手で抑え、血反吐を漏らしつつも、敵を睨み付けたままに姫乃は倒れない。
されど、それだけ。満足に動くことすら出来ぬ姫乃に向けて、カルヴィンが放つは下段蹴り。その一撃は、まるで濡れた和紙のように女の足を砕いて潰した。
「く、あああああああああああああああああああっっ!」
「消費が大きいから普段はなるべく使わねぇんだが、やろうと思えばこういう変則的な使い方も出来る」
片足では立っていることも出来なくなって、血に染まった床に倒れる姫乃。その女の頭を踏み付けながら、カルヴィンは冷徹に冷淡に事実を告げる。
「敵が居るなら、無敵じゃねぇだろ? だが、俺は無敵じゃねぇといけねぇ。そういう理屈を第二顕彰の発動中は纏ってる。ならどうなるか、敵が敵にならなきゃ良い。敵を敵としている要素を改竄したり、叩き潰す為に必要な素養が俺にあると言う風に現実を書き換える。そういう力もあるんだよ」
荒れ狂う獅子の法則の第二顕彰。その真なる力は、彼の無敵を補強するもの。無敵である彼が負けることはあり得ぬのだから、ならば負ける可能性は彼から遠ざかるのだ。
誰にも負けない無敵の拳も、当たらなければ意味がない。ならば当たらない場合、必ず当てられるような技量をカルヴィンに後付けする。そうした能力も、彼は有しているのである。
「速さが足りねぇなら敵より速くなり、技量が足りねぇなら敵より巧くなる。その敵が敵にすらなれねぇくらいの大差を付けて、だ。ま、本来の俺から離れる程に消耗がデカくなるし、相手に干渉する場合は力量差に応じて消耗も増えるし、こうして鎧として纏っている間しか使えねぇから、ガチのマジで切り札だけどな」
規格外の能力ではある。だがその分だけ、信仰力を消費してしまうと言う欠点もあった。元々、鎧として纏うだけでも信仰力の消費は激しいのだ。
考えなしにこの能力を行使すれば、余力は直ぐに底を尽いて何も出来なくなるだろう。それが故に子龍との戦いでは使えず、炎王に対しては使う余裕すらもなかった。
だからこそ、秘されていた切り札の一つ。使っても通用しなそうな炎王や、使えば逃げに徹するであろう他の修羅が相手では意味を為さない役無し札。
そうと思っていたからこそ、公方姫乃が余りに愚か過ぎて呆れてしまう。カルヴィン自身、この戦場で、この札が使える機会が来るなんて思ってもいなかったのだから。
「だから逃げに徹されたらよぉ、確実に決められるか分かんねぇから使い辛ぇのよ。テメェが阿呆で助かったわ」
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
みしみしと響く頭蓋の音。骨が軋む音を聞きながら、このまま踏み潰せば殺せるか、と思考する。まあ、やってみれば分かるかとカルヴィンは体重を掛けた。
愚かであっても、相手は流石に修羅か。脳が踏み砕かれる前に、右手で大地を叩いて凹ませた女は身を捩る。頭蓋の形状が変わる程の被害を受けつつも、女は転がり回って何とか躱した。
だが、その動きには隙がある。そして今のカルヴィンには、その隙を突くに十分過ぎる能力がある。故に、その結果も当然だった。
「が――っ! き、貴様っ! わ、私の腕をっ!?」
「要らねぇだろ。敵を殺す為にしか使えねぇ腕なんて」
獅子の右手が振るわれる。咄嗟に身を守ろうと曲げた姫乃の両腕が、カルヴィンによって抉り取るように潰された。
痛みに叫び藻掻く姫乃。捥ぎ取った腕を掴んだまま、更にと踏み込んだカルヴィンは奪い取った腕を女の傷口に押し付ける。
「ああ、心配すんな。傷は俺が治してやる」
「な、にをっ!?」
「だって治さねぇと生えてくんだろ、お前ら。気持ち悪いんだよ」
「ぎぃ――っっっ!」
傷口同士を押し当てて、逆の向きで取り付ける。血管も神経も一切繋がないままに、治療の神聖術で肉と骨だけを繋いで治す。
右手に左手を、左手に右手を、反対向きで取り付けられた女の腕は当然動かない。そして、もう治らない。修羅に古傷は治せないのだから。
「腕だけじゃ済まさねぇ。足も要らねぇよな。腸も幾つか適当に壊して、滅茶苦茶な形で治しておくぜ。古傷はテメェら、治ってなかったもんなぁ」
修羅の生き汚さは、先の戦闘で良く分かっている。脳を潰しても心臓を潰しても、殺せただなんて安心は出来ない。そういう生き物こそ修羅だ。
だから、カルヴィンの出した対策こそがこれ。殺せず強くなり続ける修羅を無力化する為に、瀕死にせずに無力化することで修羅覚醒を回避すること。
「喜べよ。俺はこれでも、治療術の腕はデュランや糞女より上なんだぜ? 条件付きだが、死者の蘇生まで出来るのは、十三使徒の中でも俺だけだ」
その見た目に反して、カルヴィン・ベルタンは聖教でも屈指の治療術の使い手だ。誰かを治す技量に関しては、聖女や教皇や筆頭を差し置いて彼こそが頂点。
他者の治療に長けたと言うことは、人体の壊し方を誰よりも深く知ると言うことでもある。信仰力の温存の為に黄金の鎧を解除して、悪辣な嘲笑を晒した男は静かに告げた。
「愉快なオブジェに変えてやる。これで終わりだ、人間未満」
そして、解体は始まった。
その決着を告げる前に、女について少し語ろう。
公方姫乃は、東で最大と言える名家に産まれた。物心ついた頃から蝶よ花よと育てられ、しかし満たされたことがなかった。
修羅は執着した対象を壊してしまう。愛すれば殺さずにはいられない。故に歴史ある家は、子が何にも執着せぬように育てるのだ。当然、姫乃の家もそうした訳だ。
望めば何でも手に入る。故に何かを求めることもない。そんな生き方をしていた姫乃の家は、はっきり言って世の害悪。統治者に相応しい者ではなかった。
武家の棟梁だと言うのに、戯れに臣下の領地に攻め入る。戯れで臣下や領民の妻子を奪い、凌辱の限りを尽くした後に殺して捨てる。戯れで臣下同士の潰し合いを誘発して、それを見下し嘲笑う。
そんな一家だからこそ、炎王は不要と断じたのだ。東を統一する折に、極力人死にを王が殺さねばならぬと判断した。それこそが姫乃の親族達である。
ある意味で、彼女は親族と性根が似通っていたのであろう。血筋と言うべきか、少女の時分から女からは腐臭がした。
だがそれを見抜いてしかし、鳥籠に捕らわれた鳥でしかなかった当時の姫乃を、炎王は殺す必要はないと見逃した。
罪を犯すかもしれずとも、まだ犯していない者を裁く必要はないのだと。故に生き延びた女は、生まれて初めて執着したのだ。
姫乃の中に、父母に対する情はない。殺されたと聞いても、ああだから? としか思わない。兄弟姉妹や親戚筋にも抱く感情は似たようなもの。
そうなるように育てられたのだとしても、余りにも薄情に過ぎる反応。そうなったのは、彼女自身の気質が故と言う他あるまい。
情も薄く、欲求も薄く、満たされたが故に渇いていた女。そんな姫乃が得た初めての執着とは、炎王と言う男が欲しいと言うものだ。
あれが欲しい。あれが欲しい。あれを己の思うままにしたい。慕情と言うには浅ましく、恋情と語るには見苦しく、執着と呼ぶしかない感情。
それを女は、王に対してのみ抱いている。そして、何時か必ず報われると信じているのだ。
欲しいと思ったものは、全て手に入れてきた人生であったが故に。失ってきたのは、失くしても問題ないものだったが故に。
だから、そう。女には今の現実を、受け止めることが出来なかったのだ。
(私は、終わるのか? こんな所で? あの人の、影さえ踏めてはいないのに?)
壊される。壊される。壊され壊され壊され、治る。出血は少ない。故に修羅覚醒は発動しない。
多くの臓器が出鱈目に繋がれて、しかし生存に必要な機能は残っているが故に。肉体は瀕死を自覚しない。しかし、体には動く機能が残っていなかった。
(間違っている。こんな世界は、間違っている。だって、だって、だって、だって――私が間違えるなんて、ある筈がないんだから!)
それでも、そんな領域に至って尚、この女は何も変わらない。他責思考の小悪党。それこそがこの女の本質で、だが故に女は強い。
神威法において最も重要となる心の強さ。揺らがぬ芯の強靭さ。歪んでいようと見っともなくとも、この女のそれは非常に強固で強力なのだから。
「あは、ははははははははははははははっ!?」
「あ? 気でも触れた……な――っ!?」
闘気が爆発するように増幅される。それは明らかな修羅覚醒。だがしかし、あり得ぬと。その思考が僅か一瞬、カルヴィンの動きを止めてしまう。
何故に今、修羅覚醒が起きるのか。心臓も脳も、重要な臓器は壊していない。だと言うのに、何故と。その問いに対する答えは簡単なことだ。
修羅とは、戦う為に存在する者。古の時代に作られた戦闘用の生命なのだ。故に彼・彼女らにとって戦えなくなると言うことは、死ぬことと同義なのである。
「ああ、そうだ。やはり私は正しい。今に成って、掴んだぞ。ああ、私は今、一歩を進める!」
「ち――っ! 死に掛けなくとも、戦えなくなれば成立すんのか!? 覚醒を警戒して、逆に追い詰め過ぎたって訳かよっ!!」
爆発する闘気を推進力に、動かぬ体で飛翔する。前にではなく、後ろへと。それは先の姫乃の発言を考えれば、幾らでも揚げ足の取れる逃走行為。
だが実際にそのことを罵れば、倍以上の罵倒が返って来ることだろう。私にそうさせたお前が悪いと。その全てが他者に責任転嫁する言葉となって。
――内外実行・以って我は真を偽る――
「なら、テメェが至る前に殺せば良い!」
振り返らずに前を見たまま、後方に向かって闘気で飛翔する姫乃。距離を取られ過ぎるのは不味いと、肉体を強化したカルヴィンが追い掛ける。
速度はほぼ同等。五体が動かぬ分だけ、カルヴィンの方が僅かに早いか。崩れ掛けているとは言え、未だに屋内。逃げ場にも限りがあれば、このままでは詠唱が完了する前に追い付ける。
それが分かった姫乃は、闘気の刃を生み出すと逃走しながら自身に突き刺す。女は狂気に満ちた笑みを浮かべたままに、何の躊躇いもなく自裁した。
――唵、炎摩曳達羅磨羅闍耶薩縛賀――
「なっ!? テメェっ!?」
闘気の一部を鋭い刃に変えて、歪な形で繋がった手足を切り落とす。動かぬならば要らぬと捨てたそれを投石のように扱って、カルヴィンの進路を塞ぎ妨害する。
一つ一つは一瞬でも、幾つも重なれば多少の時間稼ぎには成る。それに女が捨てたのは、四肢だけではない。適当に繋げられた内臓を、飛翔しながら一つ一つと投げ捨てるのだ。
――一切衆生修羅妄執。一切皆空五濁悪世。所詮世は苦界也――
「腸の中身を捨てて軽くなると同時に、自分で瀕死になって闘気の量が増えるだとぉっ!? ふざけるなよ、インチキがっ!!」
血と臓物を投げ付けられて、視界を封じられながらも追い掛けるカルヴィンが舌打ちする。肌に刺す闘気。その総量が、明らかに増えているからだ。
本来、修羅は自傷では修羅覚醒を起こせない。それは修羅覚醒と言う機能自体が、瀕死になっても戦い続ける為に存在する機能だからである。
故に敵が居ない状況で、自傷しても起こらない。敵を前にした状態でも、必要のない自傷では起こらない。だがしかし、この今この状況では例外だ。
自傷をせねば、戦い続けることも出来ない。そう修羅の本能が認識しているが故に、戦う為に必要なのだと肉体が進化を始めているのだ。
――悪因報有善因報有。いざや知れ、我こそ十王。汝ら衆生を裁くモノ――
「ぐっ! んだよ、この、馬鹿げた闘気の奔流はっっ! 近付け、ねぇっっっ!?」
遂には家屋が崩壊し、四肢のない女の体は中空へと。粘り付くような闘気が発する圧力だけで吹き飛ばされたカルヴィンは、嵐の如くに吹き付けるそれを前に目を開けていることさえも困難となる。
今も刻一刻と死に近付き続ける朧の闘気は、その度に出力を上げるのだ。目を開けていることも難しければ、近付くことなど不可能に等しい。それ程の密度と量に至った闘気によって、姫乃は此処に新たな力を行使する。
――我が判決に双童要らず。我が裁決に業鏡要らず。一切有情を無情に裁こう――
「くっそ、がっ! 近付けねぇなら、仕方ねぇっ!」
その力の本質が理解出来ている訳ではない。だが、明確に危険だとは感じている。恐らくはあの猫人が言っていた、この女こそ最大の地雷だと言う理由がこれにあるのだろう。
そう察したが故にカルヴィンは、胸元に手を当てて聖なる書物を片手に取り出す。残る信仰力を考慮すれば、そう長くは展開出来ない。しかし他に手はないと、黄金の書物を鎧と纏った。
――地獄餓鬼畜生の三悪道を此処に決する。衆生に正機の救いは要らぬと、定めし我に平伏し従え――
「第二顕彰――不滅なるは獅子の咆哮っ!!」
鎧を纏い防御姿勢を取ったカルヴィンの前に、空からゆっくりと嘲笑を浮かべる姫乃が降りて来る。達磨となって血を流す傷跡の先に、まるで四肢を思わせる形状の光が集った。
闘気の物質化。溢れんばかりの出力でそれを為して、光り輝く義手と義足を得る。失ってもう戻らぬ手足の代わりはそれで充分。同じく治せぬ臓物は、もう要らぬと捨てたまま。
修羅の笑み。壮絶な表情を貼り付けた女は、此処にその真偽を発動した。
――真偽・解放――
「十王断罪・夜摩判決!」
女の背に、黒い情念を思わせる闘気が溢れる。泥のように、或いはコールタールのように、粘着質な気が形作ったのは凄まじい形相の巨人だ。
目は鋭く、怒りに満ちた威圧するような表情。手には裁かれるべき者の全てが記載された書物と、悪を象徴とする頭が付いた杖。閻魔大王。そう評するに相応しい姿の巨人であった。
「……なんだ、こりゃ? 巨人、か?」
「夜摩の判決は下った。どうやら、誰が死するか決まったらしい」
闘気で出来た黒い巨人。その手にした書が開かれて、その手にした杖が向けられる。怒れる瞳が睨むのは、黄金の鎧に守られている男。
真偽解放とは偽りの真威を解放する技。己の寿命と言う大きな代償と引き換えに、本来使えぬ真威を一時的に発動する技術。
神威法は第四階梯の裏。六武衆においてすら、禁術とされるもの。その本質は真威の前借りであり、故に発動する真偽の性質もまた真威と何も変わらない。
内外実行。その性質は自他に法則を強要するもの。夜摩の判決は、発動者も含めた一定範囲内で最も条件に合致した者に対して振るわれるのだ。
「俺、だと? だが、俺は無敵だ。テメェのそれが、どんな技であろうと、俺には効かねぇ!」
「そうか? なら、試してみると良い」
標的を定めた巨人に睨まれて、悪寒を感じながらもカルヴィンは返す。言葉にしたのは、紛れもない事実。
神が生み出した聖なる秘宝の法則が、如何に命を捨てたからと言って修羅に破れる筈もない。無敵の守りは、貫けない筈なのだ。
「――っ! んだ、こりゃっ!? 何時の間に、俺はっ!?」
「十王の判決は絶対だ。回避も防御も、その全てが意味を為さない」
だが、十王の裁きとて脆弱な異能と言う訳ではない。発動者すら対象に成り得るこの能力は、故に極めて強力な力を有している。
鎧を纏って防御姿勢を取っていたカルヴィンが、一瞬後には巨人の眼前に。宙に強制転移させられて、身動き一つ取れない状況と成っていた。
そして、裁きが下る。人頭杖を巨人が振るうと共に、裁かれるべき者の内から、黒き炎が燃え上がる。それがカルヴィンの体を焼き尽くし、消し飛ばそうと猛威を振るうのだ。
「が、ぐ、おぉぉぉぉぉっ!?」
「しかし成程、法則の矛盾か。絶対に下らねばならぬ裁きと、絶対に干渉を受けぬ無敵。ぶつかり合えば、彼我の力は相殺する」
体内から燃え上がるその炎は、付加効果でしかない。姫乃の下す裁きの真なる脅威は、同時に押し寄せる形なき死の呪詛だ。
防御を貫き、体内から発現するが故に回避も出来ない。即死の呪詛と肉を焼く炎。二つの力にその身を穢され、それでも如何にか耐えるカルヴィン。
本来ならば決して耐えられない即死の呪詛と黒炎は、しかしどちらも無敵の理に阻まれて男の命に届かない。
その光景を見詰めながら、静かに推察する姫乃にも己の能力の全貌は分かっていない。通常の心威や真威は習得時に己の能力詳細を理解するが、真偽は疑似習得が故に大まかにしか分からぬのだ。
「結果、より強い方が削られた状態で残る。まあ、当然の流れか」
「はぁ、はぁ、くそっ! だが、俺の無敵が勝った!」
数分か、十数分か。長く続いた黒炎が消え去った後で、どうにか生き延びたカルヴィンが立つ。
その身は痛みこそあれど、未だ傷一つない。無敵の理は破られなかったのだ。故に俺の勝ちだと笑ってみせた男に、女は平然と笑みを返す。
「そうだな。だが、残念。夜摩の判決は、成立するまで終わらない」
「な――っ!?」
そして、その背には再び黒い巨人の姿が。これぞ十王断罪・夜摩判決の真なる脅威。一度夜摩が下した裁定は、成立するまで繰り返されるのだ。
巨人の眼前に再び転移させられたカルヴィンは悟る。既に勝機は無くなったのだと。
判決を覆す手段は一つ。無関係な第三者が、顕現した巨人を消すこと。裁かれるべき罪人が、例え何をしようと巨人は消えない。故に一対一で判決が成立した時点で、男の敗北は避けられなかった。
「死ぬまで死ね。それが私の決定だ」
行って姫乃は背を向ける。最早、カルヴィンの死は時間の問題。見届ける価値すらないと興味を失い、そしてそれ以上に重要なことへと意識を向けた。
「しかし、真偽、か。成程、偽りでしかない力の代償は、私自身、か」
崩れた家屋の残骸に紛れた、砕けた姿見に目を向ける。割れた鏡の破片に映った光景は、急速に老い衰えていく自分の姿。
美しい黒髪は白髪混じりに。瑞々しい肌は皺まみれに。これが真偽の代償だ。使えば必ず死に至る。それは修羅とて、避けようのない事実である。
それを使ったことに、後悔はない。分かっていて使った訳ではないが、己が間違えることはないのだから、使わねば勝てない程に手強い敵が悪いだけなのだ。
そんな敵手の気配ももうない。三度目の裁きは成立せず、二度目で黒炎は止まった。
呼吸も心音も止まる。焼け焦げて死ぬ前に、呪詛で即死した殆ど傷のない死体。それが瓦礫の山に転がるが、目を向けることすらせずに姫乃は行く。
「急がねば、な」
時間はもう、余りない。まだ年若い姫乃が使ったからこそ、まだ生きてはいられる。だがそれでも、残る命は一時間とせずに消えてしまうだろう。
だから、最期に己の想いを果たすのだ。この命が尽きる前に、欲しいものを手に入れる。
手に入らぬとは思いもしない。だって世界は、自分に都合良く出来ていると信じているのだから。
闘気の義足で歩を進める。辿り着いたその場所で、姫乃は雄々しく愛しい男を見詰めた。
荒れ果てた公園の中心。崩れそうな塔を背に、少年の抗いを見据えている焔の王。その背はあの日から、何一つとして変わっていない。
「ああ、やはり貴方は」
「姫乃か、何をしに来た」
振り返りもせずに問い掛ける炎王。彼には答えが分かっていて、それでも問い掛けるしかなかったのだろう。不器用な人だと、女は小さく苦笑する。
「想いを告げに。私は貴方を、愛しています」
「すまんな。その想いには、答えられん」
身動ぎもせず、迷いもせず、返した言葉は即断即決。如何に想われようと、王の心は変わらない。女の想いに、答えられるような男じゃないのだ。
「女を愛するなんてことはな。生涯に一度で十分なのだ。己の想いは、今も昔も変わらんよ」
「ええ、分かっていました。貴方が、そういう人だとは。けど、だからこそ、私は――貴方の傷に、成りたいのだっ!!」
けれどそんな男だからこそ、女は欲しいと想うのだ。その泥のような執着を象徴するような、泥のように濁った黒い闘気が姫乃の体から放たれる。
――内外実行・以って我は真を偽る――
そして、二度目の詠唱。二回目の真偽解放。この時点で既に、女の末路は決まっている。勝とうが負けようが、この後に何が起きようが、公方姫乃は此処で終わる。
――唵、炎摩曳達羅磨羅闍耶薩縛賀――
それで良い。それが良い。最期に貴方の傷となる為に、此処に全力を使い果たす。唯一人の男を得る為に、捨てるものが己の全てと言うだけならば十分過ぎる対価であろう。
――一切衆生修羅妄執。一切皆空五濁悪世。所詮世は苦界也――
濁った泥のように重い感情。老い衰えた女の悍ましい闘気を一身に浴びながら、それでも炎王は動じない。唯、受け止める為に彼は振り返る。
――悪因報有善因報有。いざや知れ、我こそ十王。汝ら衆生を裁くモノ――
腕を組んで、目は伏せず。静かにその時を待つ焔の王。歓喜と狂気の混じった笑みで、詠唱を続ける姫乃。内にある熱量は、きっと相反するものであろう。
――我が判決に双童要らず。我が裁決に業鏡要らず。一切有情を無情に裁こう――
女としては愛せずとも、臣下としては認めている。故にこれから失うと言う事実を、喜べる筈もない。それが王の、偽りのない心中だ。
それでも、炎王は逃げようとは思わない。己の愛する臣が、全霊を費やしてみせるのだ。受け止めてやらずして、一体何が主君だと。男の想いは即ちそれだ。
――地獄餓鬼畜生の三悪道を此処に決する。衆生に正機の救いは要らぬと、定めし我に平伏し従え――
対する女は狂笑を深める。絶対に殺せると確信をしているから、と言う訳ではない。防御も回避も無視した即死技を、相手が死ぬまで続ける夜摩の真偽。
それを以ってしても、本当に殺せるのか怪しい程の強者が炎王だ。だが、そんな男だからこそ良いのだ。届かないかもしれないと、そう思えるからこそ欲しいのだ。
――真偽・解放――
「十王断罪・夜摩判決!」
故に三度、黒き閻魔が顕現する。閻魔帳が開かれて、綴られた名を夜摩が示す。裁かれるべきだと選ばれた罪人が、その巨人の前に連れられた。
此処で一つ、真実を告げよう。公方姫乃すら知らない、彼女の真偽。十王断罪・夜摩判決の能力詳細だ。
夜摩の裁きは、一定範囲内に居る全ての人間を対象とする。その中で最も罪深い人物に、逃れられない死を齎すと言う物だ。
対象を姫乃は選べない。夜摩が選ぶ最も罪深い者とは、一体如何なる基準で選ばれるのか。単純だ。己の行為に対する、罪悪感の多寡で判定される。
悪と知らず悪を為すよりも、悪と知りながら悪を為す方が罪深い。真実はどうあれ、姫乃の呼び出す夜摩はそう裁定する。故にこの場で、最も罪深いのは彼である。
「え?」
迦楼羅の理によって、消耗していた黒髪黒目の少年。顔を上げる余裕もなくて、女の出現にも今になって気付いた者。
ヒビキ・タツミヤ=アジ・ダハーカ。彼こそが、この場においては最も罪深い者だ。
「な――っ!? 何故、貴様にっ!? 何で其処に居るんだ、貴様はぁぁぁっ!!」
夜摩の前に強制転移させられた少年を見て、理不尽な言葉を宣う姫乃。炎王のことしか見ていなかった女にとっても、この状況は予想外。
その場に居るお前が悪いと、いつもの責任転嫁をしつつふざけるなと叫んでいる。そうとも冗談ではない。命を賭けた切り札が、これでは無駄に終わってしまう。
「成程。その場において、最も強い罪悪感を抱いている者を、強制的に即死させる真偽、か」
臣下の無様に目を伏せて、息を吐いた炎王は姫乃の真偽の詳細を悟る。逃れられない死を与えると言う夜摩の真偽は、対象を選べないと言う欠点に目を塞げば極めて強力な力であろう。
夜摩が選ぶ判決基準において、使用者である姫乃が選ばれることはない。女は罪を罪と思わず、悪いのは他人だと開き直る類の屑だ。
己が悪いとは、絶対に認めない。己の行いを、罪と認識することもない。故にこそ、罪悪感が判断基準となる夜摩は彼女を裁かない。
炎王は裁きの対象として、確かに該当するだろう。世を救い人を救う徳王とは言え、その進む道は余りに血生臭い。
他でもない彼自身が己の行いを罪深いと思うが故に、此処にヒビキが居なければ確かに彼が裁きの対象と成り得た筈だ。
ヒビキについては、語るまでもないだろう。彼は己が悪と分かって、自らの意志で悪事を為している。炎王と違って、その悪を以って世を救おうと言う大義もないのだ。
何処までも自分の為の身勝手な行い。そんな行為だと分かっていて、それでも王に勝ちたいからと悪になることを決めた少年。その内心に、罪悪感が存在しない筈もない。
だから、この場で夜摩を顕現させれば、裁きの対象として選ばれるのはヒビキ以外に居ないのだ。
「だが、不完全だな。闘気の、いや、寿命の不足か。それに恐らくはこの真、外圧には弱い」
そんな夜摩が黒炎の裁きを下す前に、一歩を踏み込んだ炎王が透き通った赤色の炎を放つ。燃え上がる浄化の火は、濁った泥で出来た巨人をいとも簡単に消し去っていた。
「このように外からならば、容易く崩れる。己の能力の全貌を、理解していないのは問題だな。未熟が過ぎるぞ、姫乃」
焼き払われた夜摩から解放されて、ヒビキが地に落ち転がっている。か弱い少年の体には、その程度の落下でさえ或いは致命傷に成り兼ねないもの。
痛みにのたうち回りながらも、歯を食い縛って叫び声だけは上げていない。それを横目に見てから、炎王は視線を臣下に移した。
「だが、己に当たっていれば、或いは……状況把握は未熟だが、よくぞ至ったものだ」
闘気の義足を作ることすら出来なくなって、少年と同じように大地に転がっている姫乃。
起き上がることさえ出来ない彼女の下へ、炎王は一息で近付くと女を抱き上げ言葉を掛けた。
「お前の結実。お前の真。確かに見届けたぞ、我が誇るべき臣下の一人。公方姫乃よ」
「ああ、本当に――ずるい人だ」
最期の想いすら届かず、人生で初めて絶望していた。そんな姫乃の表情が、炎王の言葉一つで和らぎ揺らぐ。
本当に欲しい言葉はくれないのに、愛することを止めさせてもくれない男。ずるい人だと、彼を見上げて女は微笑む。
これ以上に、言葉を発する力はなかった。既に老婆のような女は、骨と皮だけに成って死ぬのだろう。
そしてそんな果ての姿を、惚れた相手に見せたくはない。女の機微とはそういうものだと、王は確かに知るが故。
「己の技の反動で命終える前に、己の腕にて燃えよ。それが己の決定だ」
抱き抱えたまま、炎王はその命を終わらせた。燃え上がる炎は一瞬で沈下し、後にはもう人が居たと言う名残は何も残らない。
唯、寂しげに王は目を伏せる。また喪ってしまったと。情に厚い修羅が強いと言うのなら、誰よりも強い彼は誰よりも情に厚いから。
「な、何だったの、今の」
「……もう終わらせろ、と言う催促のようなものだろう」
一体何が起きたのか、何も分からぬ内に始まり終わった。部外者でしかなかった少年の呟きに、立ち上がった王が返す。
臣下を既に、二人喪った。己が自由に動けていれば、死ぬ必要のなかった配下らだ。その事実を、この男が背負わぬ訳がない。
故に、もう終わらせるのだ。小さな子だから生かして返すと、その判断こそ増長慢。救世の道を阻むのならば、敵と捉えて殺すのだ。
――外功想実・以って我は心の底の真を示す――
「え?」
殺意によって、闘気の質が変わる。呼吸さえも満足に出来なくなる中で、黒髪の少年は自失する。それは余りにも、あり得ないと願いたい光景だったから。
――前鴻後麟頷燕喙鶏頸蛇尾魚額鸛顋鴛竜文背亀羽翼五采――
「なん、で? 二つ目の、詠唱?」
迦楼羅の真威は今も続いている。ヒビキは悪竜王の力を行使することが出来ずに、人として挑むことを強要されている。
だと言うのに、此処から更に増えるのだ。乗り越えなくてはならない壁が。恐ろしい程に険しい障害が。余りに遠い断絶が。
――五鸞鵷鶵朱雀雲作。雲雀叶律郎火離五霊。仁智禽丹山隠者長離朋明丘居士――
「己は今まで、貴様を生かす心算で居た。その慢心が、二人も臣を失うと言う結果を生んだのだ」
炎王にはこれまで、幾度もヒビキを殺す機会があった。しかしその身には殺意がなかったが故に、殺さぬ程度にと手加減し続けたが故に今に至る。
殺さずに心を折ろうとするならば、今のヒビキは極めて厄介な相手である。どれ程に痛めつけても、それでもと立ち上がって来る相手。そんな相手と認めたからこそ、王は此処で殺すと決めた。
――鳳兮、鳳兮、何徳之衰。往者不可諫、來者猶可追。已而已而、今之從政者殆而――
「ならば、最早そのような余分は捨てねばなるまい。そうでなくばどうして、こんな己に付いて来てくれた者らに、一体何が返せると言う」
そうとも、殺そうと思えば何時でも殺せた。今だって、殺そうと思えば何時でも殺せる。そんな王は、しかしこの状況でも慢心しない。
一度殺すと決めたのならば、生き残れる余地など作らない。確実に、絶対に、どうしようもない状況を作り上げて叩き潰す。その為に、此処に二つの真威を重ねるのだ。
――不聞、鳳皇鳴。政に仁は無く、国に義は無く、王に礼は無く、民に智は無く、人に信無し――
「これは、朧が心威でやってたのと、同じ? より上位の真威を、貴方は二つも、同時に使えると言うの!?」
神威法第六階梯、真威併用。人の極点たる炎王は、既に其処まで至っている。彼は二つの真威を同時に、発動することが出来る。
この状況は、誰の目にも明らかな程に絶望的だ。ヒビキは現在発動されている迦楼羅の真威一つすら、攻略出来てはいないのだから。
――世に五常無くば、美しき翼は羽搏かぬ。ならば、我こそ慶賀を告げる鳥となろう――
(不味い! 不味い不味い不味い! 世界全部を燃やす炎が展開されたら、人のままだと即死するっ! なのに、迦楼羅の法則は続いたまま! 竜に戻っても、無防備で殺され続けるしか道がないっ!!)
回避不可の浄化の炎。世界全てを満たす鳳凰の羽搏きに、人のヒビキは対抗出来ない。一秒どころかコンマ以下の時間すら持たずに、文字通り瞬殺されてしまう。
悪竜調伏の迦楼羅天。竜と認識された存在からあらゆる自由を奪う法則を前にして、魔物のヒビキは抵抗出来ない。息をすることすら王の許しが必要な以上、戻った所で末路は死だ。
詰んでいる。どちらを選んでもどうしようもない。何をしようと覆しようがない。炎王が殺すと決めた時点で、ヒビキの敗北は確定したのだ。
――真威・解放――
「天威瑞兆・鳳凰天翔」
モノクロに染まる世界。直後に燃え上がる炎。鳳凰の羽搏きに飲み込まれる少年は、歯を噛み締めて選択する。考えている時間はない。ならば終わりを、僅か数秒でも遠ざけようと。
「くぅ、うぁああああああああああああああああああああああああああああっっっ!?」
「竜に戻った、か。先までに得た耐性で、即死を免れたのは見事。だが、既に詰みよ。お前はもう終わっている」
燃え上がる炎は消えない。焼かれ続ける体は、如何に耐性があろうと耐え切れない。最早、時間の問題だ。
数秒後には、ヒビキの体は鳳凰の火に耐えられなくなる。いいや、その前に炎王がヒビキから生きる自由を奪うだろうか。
(動け、ない。治せ、ない。何も、出来ない)
どうあれ既にお終いだ。事此処に至り、既に少年に出来るようなことはない。
(ああ、そうか。僕は……負けた、のか)
ヒビキ・タツミヤ=アジ・ダハーカは敗北したのだ。
――然り。だが、それは困るな。
「な――っ!?」
故に、此処から先は蛇足となる。今にも焼き付くされんとしていたヒビキの胸元から、悪しき光が放たれる。周囲に響いたその声は、輝かぬ黄金の魔王のもの。
復活に助力した。その時に、闇の魔王は仕込んでいたのだ。手助けは要らぬと言われたから、敗北した後で効果を発揮するように。ヒビキの内に寄生していた、その悪しき獣が翼を広げた。
「この気配っ! 成程、原初の魔王っ! そして、その眷属かっ!」
――傲慢の獣よ。空を穢す翼よ。現れ、その身を捧げよ。
【Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!】
小さな少年の内側に隠れていたとは思えぬ程に、巨大な魔物が姿を現す。天を覆うのではないかと思える程に、大きな翼を持つ怪鳥。
その名をジズ。あらゆる風を狂わせて、周囲に病毒を撒き散らす悪しき空の大魔獣。ヒビキの体から飛び出た鳥が、炎の中を切り裂いて空を舞った。
(これは、アカ・マナフの奴! 僕の中に、大魔獣を仕込んでたのか!? けど、今更にジズなんかが出て来たって……いや、何だ? ジズの力が、増している? それに、迦楼羅の法則が消えた?)
ジズが羽搏く度に巻き起こる大嵐が、ヒビキと炎王の体を吹き飛ばす。その光景に一瞬、ヒビキは驚愕して硬直する。
一体どういうことだと。如何に三大魔獣の一角とは言え、悪竜王より力の総量は下の筈。ならば当然、炎王にも勝てる道理はない筈なのだ。
それなのに、今のジズはヒビキよりも強い。或いは、炎王ですら圧し負けるのではないかと言う程の存在規模を誇っていたのだ。
(そうか! さっきの姫乃って奴と同じだ! より鳥らしいのが出て来たら、捕食者が入れ替わる! 自滅を避ける為にもあの人は、迦楼羅の力を解除しなくちゃいけない!)
同時に感じる、己を縛る法則が消えたと言う感覚。その事実を前に、ヒビキは現状を理解する。あれ程に今のジズが強いのは、炎王の力で強化されているからだと。
迦楼羅の法則は、法則影響化の中で最も鳥の役割に合致する存在を強化する。この法則下において鳥と認定された存在は、同じ法下の誰にも勝てるようになるのだ。
そして今のこの場において、最も鳥と呼ぶに相応しい存在は何か。問うまでもない。種族としてはあくまでも人である炎王よりも、如何にも鳥の見た目をしたジズの方が相応しい。
故に炎王は、咄嗟に迦楼羅の法則を解除したのだろう。それでも十分過ぎる程の力がジズには既に流れ込んでおり、結果が今のこの状況だ。
(でも、幾ら強化された空の大魔獣でも、あの人の相手を何時までもは出来ない。有する力の総量で勝っても、だから勝てるなんて言えないのがあの人だ。多分、以って数分。それで、ジズは消滅する)
――不足かね? 敗者に対する助けとしては、数分でも十分だと思うが?
「過剰だよ、くそったれっ! 忌々しい奴! ありがとう!」
炎を切って羽搏くジズが、炎王に向かって攻撃を仕掛ける。遠ざかるその光景を見詰めながら、態々語り掛けて来たアカ・マナフには悪態混じりの感謝を返す。
助かったのは事実であるが、余計なことをしやがってと言う感情も確かにあったから。それだけを闇の魔王に告げてから、ヒビキは此処から先を思考する。
(さあ、どうする。敗北後の延長戦。ジズが死ぬまでの数分が、僕に与えられた最後のチャンスだ)
暴風を纏い病毒を振り撒く怪鳥に、炎王が梃子摺るのも今だけだ。あの男ならば直ぐに獣の動きなんて読み切るし、そうでなくともジズの強化は少しずつ解除されていく。
ならば彼の怪物が倒されるまでの数分。その間に出来ることを探さなければならない。この最後のチャンスを逃してしまえば、再び迦楼羅の法則が発現する。そうなれば、今度こそ終わりだ。
(今のままじゃ、勝てない。今までの僕じゃ、勝てない。なら、今此処で、僕も一歩前に進もうっ!)
この今に、何かをしなくてはならない。しかし、今ある手札を全て使ったとしても、炎王に対して通用するとは思えない。
ならば、此処で新しい何かを得る他にない。彼の王の予想を超える成長を以って、己の強さを示す他に道はない。そうとも、きっと出来る筈なのだ。
(出来る筈だ。散々に見てきただろう! 分かってる筈だ。どうすれば良いのか! 答えは、僕自身の中にある!)
あの日、暴走する悪竜王を前に、リアムが見せた狼面狂者。きっとあれは、修羅と言う仲間に、偉大な王に、焦がれる情が生み出したもの。
あの日、怯え戸惑う子供を前に、ミュシャが見せた天空王の瞳。きっとあれは、大切な人達が幸せになる結末を知りたいと、そんな願いが生み出したもの。
あの日、真に目覚めた悪竜王を前に、朧が見せた絡新婦。きっとあれは、自分ではどうしようもない願いを諦めて、それでもと求めてしまう想いが生み出したもの。
そして、あの日に見た、今も見ているこの光景。モノクロの世界で、苦痛しか感じられない世界で、それでもと強く雄々しく進み続ける王様が生み出したもの。
そんな心を、多く見たのだ。如何にすれば、その心を形にすることが出来るのか。そんな理屈だって、ヒビキにはもう分かっているのだ。ならばどうして、届かない理由があるか。
――ヒビキ、頑張って。無理はしないで、良いんだからね。
――ヒビキ、負けんなよ。私だって、出来たんだからさ。大丈夫、君にも出来るよ。
「声が、聞こえる。これは、ミュシャ? アンジュ? ああ、そうだ。これは、僕の心に在った芯の一つ」
答えに至ったその時に、闘気を糧に想いが膨れ上がる。制御されていないこれは、滲威と呼ばれる前段階。暴走するこの力を正しい形に納めれば、それで心威は解放される。
「声を聴かせて、声を聴いて。愛されることなく育った僕が求めた想いは、届かぬ想いを届けること」
自覚した心の芯は、きっとずっと抱いていたもの。龍宮響希は唯、寂しかったのだ。愛することを、愛されることを、心の底から求めていた。
だから、その芯は想いを届かせると言うものになる。だから、その芯は想いを受け止めると言うものになる。相互理解。愛し愛されること。それこそが、龍宮響希の心威の形。
「でも、違う」
でも、それは龍宮響希の色である。ヒビキ・タツミヤ=アジ・ダハーカの色ではない。
「これは今の僕の芯じゃない。これは龍宮響希の芯だから、今の僕には相応しくない。だから、これは捨てよう」
愛されることを求めていた。でも、愛されているとはもう知っている。愛することを望んでいた。でも、もう愛せているのだと分かっている。だから、これは要らない。求めているのは、これじゃない。
「心の芯を捨て去って、それでも心の中に在るもの。それこそが、己の揺るがぬ真である。それを僕は、もう知っている筈だから!」
そうとも、愛し愛されると言う芯。想いの伝達と言う力を捨てても、それでも残るものが確かにある。それをもう、ヒビキ・タツミヤ=アジ・ダハーカは知っている。
そうとも、既に内側には存在しているのだ。それは他者との相互理解と言う本来の彼の形とは真逆の、他者への憧れを原動力とする力。そう成りたいと、願う形の芯である。
(至った。でも、其処までは届かない。心に技量が付いていかない。成程、これが朧が言ってた、一歩手前の段階か)
真威に至る条件とは、心の芯を失って尚も残る真を知ること。その条件は既に満たした。だがしかし、それでヒビキが真威を発動出来ると言う訳ではない。
技量が先ず足りていない。二つの心威を混ぜ合わせることは愚か、同時発現さえも今のヒビキには行えない。だからまだ、前提となる条件を満たせただけ。だが、それで今は十二分。
(なら、今はそれで良い。真の形を示すことは出来なくても、心の形を示すことなら出来るからっ!)
――内功実行・以って我は心威を示す――
紡ぐべき詠唱は、既に己の内にある。何時しか湧き上がる想いは此処に、後は唱えて形と残せば良い。それだけならば、もう出来るから。
――pater. |heliodromus. perses. leo. miles. nymphus. corax. Sacerdos, jurare mithras――
性質は内功。求めたのは世界を満たす外の功ではなく、己の内にて完結する内の功。
法則は実行。願うのは理想の結実ではなくて、今ある現実を理想へと近付けること。
己の胸に手を当てて、ヒビキは願いを口にする。瞳を閉じて口にする、目指した果てへと至る道筋を。
――日の出前に現れて、夜が来ても尚地上を照らすもの。四の白馬に引かれし戦車に乗りて、天空を踏破する光の精よ――
悪なる竜として生まれた。悪徳と分かって、為すと決めた。それでも、それだけではない。それだけでは、ないのだ。
生まれたことを、祝福された。望まれたのだ。他でもない、自分自身に。ならばそう、せめて胸を張って貫き通そう。
――その在り様に我は背く。常に目覚め、常に見守るものよ。どうか汝に慈悲があるなら、瞬く一時、この傲慢を許し給え――
光の神がもし居るならば、これが自分だと言い放とう。誰に憚ることもなく、これが自分だと満天下に言い放つのだ。
悪辣で、傲慢で、見っともない所もだらしがない所も一杯あって、それでもだからどうしたと。それでも僕は目指すのだと。
――我は光に選ばれず、されど栄光に焦がれる者。愚かな我は穢れを偽り、無始光天へと連なる希望を此処に振るおう――
そうとも、本当は綺麗なものに焦がれている。そんな風に成りたいと、心の底から想っている。それが許されないことだとしても、だからどうしたと今は開き直ることが出来るから。
――心威・解放――
「千耳万眼塞ぎて許せ――契約神の福音」
ヒビキの詠唱が完了すると全く同時、空から巨体が落ちて来る。遂には敗れ去った空の大魔獣が、消滅しようとしていたのだ。
故に、其処にはもう王が居る。消滅していく魔獣を背に、雄々しく立つ焔の王。見据えるその瞳を真っ直ぐに見返して、ヒビキは此処に剣を抜いた。
「さあ、行こう。聖剣、抜刀っ!」
「契約神の否定? 前提条件の無視が、お前の心威かっ!」
悪竜の力を宿したまま、光輝く剣を取る。聖なる剣を構えた少年の姿を見て、炎王は即座にその真を暴いた。前提条件の無視、それこそがヒビキの心威であると。
「だが、それを以って、何とする!」
「決まってる。僕一人では、貴方には届かないから! 繋げ――星の聖剣よっ!」
闇の力は、光の力とは並び立たない。瘴気と精霊力は相反する。聖なる剣は、選ばれた者にしか使えない。
そうした前提となる条件を、全て無視して力と振るう。そんなヒビキは此処に、聖剣の力を解放して心を繋いだ。
「接続、ミュシャ・ルシャ。真実を暴け、知恵の瞳っ!」
「そうかっ! 貴様のそれは、仲間の芯さえも騙り、その身に宿すのかっ!?」
そして、そんな少年の背にウジャトの瞳が浮かび上がる。そうとも、前提の無視とは使用者の限定された異能の条件すらも無視するものだ。
ミュシャ・ルシャにしか使えない、天空王の瞳と言う心威。そのミュシャ・ルシャにしか使えないと言う前提を、契約神の祝福は踏み倒す。
(虚飾を暴いて、望んだ答えの是非を問う。この能力を、僕はミュシャと違って使い熟せない。過去現在の知識を基に、優れた策を立てる知性なんて持ってはいないから)
前提を踏み倒して使えるようになった所で、元は他人の心威である。己の為に作られている一点物とは異なるのだから、容易く使い熟せるようなものではない。
だが、その前提をもう一つの要素で踏み躙る。月の色に輝く左目とは対照的に、右の瞳が暗く輝く。魔王の権能を、此処にヒビキは重ねたのだ。
(思考の加速。脳内を魔術で変革して、30秒と言う発動時間を延長する。後は、トライアンドエラーだ。無限に加速した時間の中で、絶対に通さない攻撃を探し続ける。分からないと言う解答を、この瞳が下すまでっ!)
踏み込みの速度。剣を振る方向。息をするタイミングから、瞬きの差異まで含めて思い付く限りの全てを脳内で試行する。
0.013秒の間に億を超える可能性を試行して、辿り着いたのはたった一つ。届くかどうか分からない。その解答こそ、見つけた僅かな可能性。
(見付けた。遠く儚い可能性。その、たった一つに、今の僕の全てを賭けるっ!)
無論、消耗は大きい。本来自分に出来ないことを、強引に行うと言う力だ。ヒビキ自身の有する闘気では、まるで量が足りていない。
だが、それを覆すのが聖なる剣だ。この繋ぐ力が、必要な闘気の譲渡すらも可能としている。ヒビキとミュシャとアンジュの三人が、この今に一つと成っているのだ。
「接続、アンジュ・イベール。道を照らせ、最も素晴らしき騎士っ!」
答えが出せないと言う答えに向けて、踏み込むと同時に重ねた新たな心威。己に理想を体現させると言うその異能が、ヒビキの動作を修正する。
踏み込みの速度は無拍子に。振り被る剣を軌跡は美しく。確かにヒビキは、その零にも等しい可能性を踏破する。
「な――」
三つの心威を此処に重ねた。望んだ未来に至る道を視て、その未来に辿り着く為の理想の動きを体に宿して、故にヒビキの一撃は遂に王の予想を上回る。
一人では届かなかった。一人では駄目だった。けれど今の彼は、もう一人ではないのだから。二人の想いを此処に背負って、悪なる竜は剣を振るう。
「これでぇ、どうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
光輝く剣が振り降ろされる。唯一つだけ存在した隙に、世界で最も美しい斬撃が、流れるように打ち込まれた。そして、鮮血が舞う。
こうして、戦いが始まって初めて、ヒビキの剣は炎王に届いたのだった。
【ヒビキの心威、契約神の祝福について】
旧版の拝火経典からは大きく効果の変わった心威。効果は本文中にもある通り、前提条件の無視です。
ゲームとかに良くある、主人公専用の装備とかヒロイン専用の技とか、そういったものを前提なんて知ったことかと無視して装備したり使用出来たりするようになる能力。単独でもそこそこ強力ですが、発動している時点で所有していないと効果がないので少し微妙。聖剣の特性と合わせると無法になります。
実は無視する内容によってコストが増減すると言うこともないので、コスパもかなり良かったり。
要はそれぞれの技の発動に必要なコスト自体も前提条件の一つとして踏み倒しており、契約神の祝福発動に必要なコスト以外発生していない訳です。
それでも聖剣なしの今のヒビキでは純粋な闘気量が少ないので、発動回数も少なければ維持時間も短いんですけどね。
余談ですが、当初は繋がる対象にリアム君を混ぜようか悩んでいたSIOYAKI。流石に此処でリアム君が力貸しちゃうのは戦犯過ぎるだろ、となったのでヒロイン二人との合体技に留まりました。
アンジュちゃん消耗してたけど、ミュシャだけで闘気足りるの? と言う疑問には先に挙げたコスパの良さが解答。
本来の天空王の瞳や無垢なる聖者の消費量ではなく、契約神の祝福の消費を全員の闘気量の合計値から発動回数分だけ支払えば良いので、実は同時に三つの心威を使うよりコストが少なかったりします。




