第49話
罠師VS第五席。
霧に包まれた町の中、顔に火傷痕を残す男が大地を駆ける。
何処からともなく飛来する矢や魔術に対し、身を軽く捻り僅か位置を変えるだけで容易く躱す。
仰け反りや半歩程度の移動では、掛かる時間は秒にも満たない。故に北の兵らが行う必死の抵抗は、僅かな時間稼ぎにしかなっていない。リアムの歩みは緩まないのだ。
それでも一秒。一人当たりで稼げるならば、六十人で一分だ。この場に立つ軍人たちはその一秒を僅かでも長引かせるために足掻いており、しかし然したる成果を得てはいないと言うのが現状だった。
「はぁっ、はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
高らかに誇るように、己は此処だと声を上げる。その音を目指して飛来して来た攻撃を容易く躱しながら、どこから来たのか探り当てる。
見過ごしはない。間違えることもなければ、追撃さえも許さない。次弾が飛んで来る前に、敵手の下へと跳躍し攻撃。振るわれる腕や足の一撃が、次から次へと兵士たちの意識を奪う。
一人一秒? そんな長さを稼げはしない。多目に見ても、小隊規模で一秒だ。その速度で撃滅されていく北の勢力。
止めを刺さずに駆け抜ける男は、倒れた者らを鼻で笑って見向きもしない。
「おらおらどうした! こんなもんかよっ! 討魔師団に、コートフォールの衛兵どもっ! 音に聞こえし精鋭部隊はっ! お遊戯会の言い間違いかぁっ!?」
挑発の言葉を叫びながら、リアムは霧中の商店街を駆け抜ける。
変わらず幾つもの武器や術が飛び交うが、結果は先の焼き直し。攻撃を加えたことで位置を悟られ、近付かれて瞬殺される。
北の兵が、弱いと言う訳ではない。精兵と語られているように、魔の討滅を役目とする討魔師団も、人類の最前線を守るコートフォールの所属兵も、どちらも世界有数の戦力。軍としては最上位のものである。
だから単純に相手が悪い。東国六武衆と言う質の頂点に、数の理で勝ろうと言うのが愚の骨頂。数字の大小で語れるのは、相手が常識内の存在である時だけのこと。
数を超える質の暴力。それを前にして、数の多さは無意味なのだ。
だとするならば、数を超える質に対するために、質を超えられない数には何か別の要因が必要だ。
それが分からぬ者に、Aランクと言う位置は重い。故に逆説、罠師は幾つもの細工を弄していた。
内の一つが、今正に牙を剥く。一体幾つの小隊を潰した後であったか、流れ作業のように次の集団を見付けて処理しようと踏み込んだ瞬間――リアムの足元、足の真下で巨大なエネルギーの爆発が起きたのだ。
その原因は、舗装された地面の下に埋め込まれていた爆薬と精霊石。浄化の力と物理的な破壊力を伴う爆弾が、踏み込みの重量変化に反応して大爆発を引き起こす。
常人ならば手足の一つ二つどころか、体の半分は吹き飛んでいるであろう火力。それが連鎖的に爆発するこの場所は、既に死地と言って良い地雷原と化していたのである。
「はっ、馬鹿がっ」
しかし、足を止めた亜人の体に大きな傷はない。常人ならば確実に死ぬ殺し間も、英雄級と言う規格外の存在にしてみれば多少痛いで済む程度。
衣服や髪が煤で汚れ、肌が軽く焦げ、僅かな痛みで表情が歪む。その程度の軽傷なのだ。それで何を脅威に思えと言うのか、嘲るように吐き捨てると気にせず地雷原へと踏み込んだ。
敢えて強く踏み込んで、大地を砕きながらに掛ける。当然一つや二つでは済まない量の地雷が連続して起爆するが、それでも男の疾走は緩まない。
その気になれば、闘気による物理干渉で地雷を起爆させないことすら容易であろうに。敢えて踏み続けたのは、唯単に相手を馬鹿にしているからではない。
周囲の霧は、魔道具によるもの。となれば内側で精霊石が爆発すれば、一時的に周囲の霧が浄化される。自身が受けるダメージを視野に入れても、コスパは良いと判断した。
故にリアムは敢えて地雷を発破し続け、結果として軍の騎士たちから霧の守りを奪い取った。
僅かながらも流石に出血を始めていた男は、しかし疲労一つ感じさせない狂的な笑みで晒された一団を見て告げる。
「半端な火力のもんなんざ、仕込んだのは失敗だったなぁ。俺を潰してぇんなら、この数百倍は持って来いやぁっ!」
口ではそんな風に言いながらも、その実は賢しいのがこの男。霧が晴れた以上は地雷を踏む意味もないと言わんばかりに、闘気による重量変化と刻印魔術を併用する。
ほぼゼロになった体重を、両の足に纏った風で宙に浮かべる。地雷原の真上を滑空するように飛翔して敵集団の眼前へと迫ったリアムは、亀裂が走ったような笑みを浮かべたままに拳を振るう。
「おいおいおいおい、どうしたどうしたんなもんかぁぁぁぁぁぁっ!」
騎士達とて、抵抗をしていない訳ではない。剣を手に、槍や杖を手に、迫る男を迎撃せんと振り回す。
腰の引けている者の方が少ないのは、流石は精鋭と言われる討魔師団の生き残りたちと北の兵団か。
されど余りに質が違う。振り下ろされる剣の腹を拳で打ち砕き、貫かんとする槍の柄を肘と膝で挟んで叩き折る。
瞬きの間にそうした破壊を齎すリアムは、紛れもなく一騎当千の英雄級だ。千の数を超える兵が居たとしても、彼を止めるにはまるで足りない。そしてこの場には、千人も兵は居ないのだ。
「温い軽い柔い雑魚い! どいつもこいつも、取るに足りねぇぞ三下共ぉっ!」
気や術によって、人が容易く人の限界を超え得るこの世界。数の持つ理を、質と言う不条理は容易く塗りつぶす。一般の兵など幾ら集めようと、強者を前には足止め程度の役しか果たせない。
三桁をも超える騎士団の精鋭達は、数分の後に壊滅する。誰もが意識を奪われたまま、大地に転がるその姿。死者こそ居ないが、死屍累々と言う表現がこの上なく見合うだろう。
そんな光景を背に、リアムは声高らかに宣言した。
「次だぁっ! この霧の元凶、晒してやろうじゃねぇの!」
風に乗って吹き込んで、周囲を満たしていく濃霧。されど一度晴れた霧が、再び満ちるまでにはまだ時間が掛かる。この男の進撃は、それより遥かに早い。
気で探る。最も近くに居る生体反応を。鼻で嗅ぎ取る。最も近くにある生の気配を。
どちらも共に指し示す方向へと、リアムは突き進む。その先にあったのは、冒険者ギルドの北方支部。
「はぁっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その壁を軽々と砕いて飛び込んで来た男に対し、無数の罠が襲い来る。ワイヤートラップにくくり罠、濡れた地面は投げ捨てられた機械から漏れた電気で満ちている。
一歩を進む度に落ちて来る槍や、飛んでくる火矢。それら数々の罠を時に片手で、時には隆起させた地面を盾や足場にして容易く躱す。
そして一切の傷を負うことなく、リアムは彼の下へと辿り着いた。
「よう、湿気た面してやがんな。テメェ」
「……やれやれ、全く。今日は厄日かね」
ギルドに併設された飲食店の中央にある席。その椅子に腰を掛け、足を組んで待ち構えていたのは浅黒い肌をした、堀の深い顔立ちの男。
罠師コルテス・イルデフォンソ。オルチャタの入ったグラスを片手に持った男は、嘆息と共に目の前に立つ男の顔を見上げる。
相手は軽傷。罠は想定通りに機能していない。そんな状況に、コルテスは静かに嘆息した。
「全く、英雄と言う人種はつくづく厄介だな。此処に来るまで、幾つ罠があったと思ってる」
「取るに足りねぇよ。騎士共含めて、どれもこれも歯ごたえなかったぜ」
「これだから、君達のような人種は苦手なんだ。常識と言う物が通じない」
軽い言葉を交わし、拳を握り締めるリアム。対してコルテスはグラスをテーブルに置くだけで、立ち上がろうとする素振りも見せない。
その姿に僅か違和を感じながらも、リアムは嗤って口にする。
「は、無抵抗だって。随分とまあ素直じゃねぇの。手品の種も玉切れか?」
「生半可な罠じゃ、君には通じないだろう。だから、此処は損切りだ」
「あ?」
直後、コルテスの体が内から膨らみ爆発した。爆風に片手向けて闘気をぶつけ、咄嗟の爆風を防ぎ切る。
その代価に、焼け爛れた掌。それを見下ろし、リアムは舌打ち。闘気を回して治療した後、服から煤を払うような所作をしてから敵の逃げた場所を探る。
だが、爆発はそれだけでは止まらない。連鎖するように建物の各所で爆音が鳴り響き、ついには音を立ててギルド支部が崩落を始めた。
爆破解体。その専門知識を当然、コルテスは有している。どうすれば効率良く建物を壊せるのか、どうすればそこに他者を効率良く巻き込めるのか。その判断に陥穽がない以上、結果は明白。
内に居たリアムは当然、巻き込まれて瓦礫の下敷きにされた。
「けっ、人形使った自爆かよ。詰まらねぇことしやがるな」
されど、その規模の破壊であっても致命には程遠い。平然と瓦礫を押し退けながら立ち上がったリアムは、血を腕で拭ってから周囲を見回す。
既に霧は満ちていて、思わず口に出るのは再びの舌打ち。元の木阿弥となった状況で、逃げた獲物を探るために、男は闘気の探知と優れた嗅覚を使用した。
「気配は、こっちか。……だが、臭いはこっちか? まあ、良い。どっちが本体でも大差はねぇ」
だが、この霧には探知阻害の効果もあるのか。嗅覚と気の探知が出した答えは別の位置。さてどちらが本物か、と考えて直ぐにどちらでも良いかと切り捨てる。
そして、再び大地を駆ける。目指すはより近い方。走り出した男の足元で、次から次に爆発する地雷群。今度は踏んでいないのに、起爆するのは敵が監視しているからか。
爆発と共に一部が晴れる霧。ふと頭上を見上げてみれば、空から雨のように降ってくるのもまた爆発物だ。
地面に触れた物から順に、次から次へと破裂していく。数百倍と言う言葉を間に受けたのか、その数は数え切れない程に膨大なもの。
商店街に居並ぶ家屋が形を変えて、轟音と共に崩れ落ちていく中。それでもリアムの歩みは緩まない。
高く笑って大地を蹴って、爆風さえも利用して、傷を負いながらも、町を駆け抜け疾走する。
こりゃ千倍でも足りなかったかと嘯く彼にとって、無数の罠で受ける傷など取るに足りない。致命傷には届かない。ならば良いと、無視してしまえるものだ。
傷付き、血を流し、それでも嗤いながら駆け抜ける。その姿は、正しく狂狼。バーサーカーと呼ぶに相応しいものであった。
「はぁっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 追い付いたぜぇっ! 漸くよぉっ!」
そうして見付けた、気配の潜んでいる建物。確実に仕込みがあるであろう扉を無視して、跳躍と共に二階の窓を打ち破りリアムは中へと侵入する。
表の扉や裏口ではなく、二階にある窓からの侵入。流石にこれは読めないだろうと言うリアムの判断は、しかし罠師の臆病さを侮ったものだと言えた。
「あ゛? んだ、こりゃぁ?」
突入した瞬間に、感じたのは何かの干渉。罠が作動し、リアムが纏う闘気の守りを貫いたのだと。理解した直後に、彼が体感するのは、酩酊にも似た認識異常だ。
「意識の異常を引き起こす、仕込みかよ。こっすい手を使いやがるが、俺の守りを貫いたことは褒めるべきか?」
揺らめく視界に頭痛を感じて、頭を軽く片手で抑えながらに呟く。天井を仰ぐ男の守りは、同胞である六武の者らの中では最も弱いものである。
戦闘生命として作られた修羅と、そうではない亜人とでは闘気の量に差が出るのだ。故に防御面で比すれば、他の者らに比べてリアムは脆い。いや、修羅が異常と言うべきか。
内臓が全て潰れても、闘気があれば生きていられるのが修羅だ。多少の欠損ならその内に新たな手足や臓器が生えてくるし、無くても生きられる形に変わる。そういう理不尽な生物なのだ。
それらと比すれば、欠損を闘気では治せぬリアムは酷く脆いと言えるだろう。死を意識するとその間際に爆発的に闘気が増すと言う性質を有する修羅と違って、リアムが使える闘気の量には限界もある。
総じて、六武衆では最弱の疑いさえもある。そんな自覚を有するリアムではあるが、それでも英雄級の実力者ではあるのだ。
そんな相手に異常を通すなど、一体どれ程の量を仕込んでいたのか。その精神性を貶しながらも、何処か関心するように呟く。
そうしてリアムは目を閉じ、一つ二つと息を整えると目を見開く。認識異常はこれで治る。そう思ったが、そこまで簡単な話ではなかったらしいと。
「闘気による治癒で、酔いは治まった。だが、こいつは……」
意識が眩む酩酊のような感覚。それは呼吸一つで治せてしまう程度の物で、実際に既に治癒出来ている。しかし、敵の仕込みはそれだけではなかったのだ。
治ったと感じて意気揚々と体を動かしてみれば、右足を踏み出した筈なのに左足が下がっている。右手を動かそうとしてみれば、変わりに左手が意図しない方向に動いていた。
「感覚の誤認、か。左右上下前後、全部逆だな。しかも、酩酊より強く掛けてやがる。治療のためには、数分は足を止める必要があるときた。んで、治そうとすりゃ、その内に逃げる気だな。あの臆病者」
酩酊と言う分かりやすい異常と共に、誤認と言う分かりにくい罠を念入りに仕込んだ。異常は治したと思って気付かず進んでいれば、恐らくは罠師の掌の上で盛大に踊らされていた所であろう。
気付けた所で、治療に専念するために足を止めていればその間に逃げられる。端から勝てないと分かっているが故に、徹底的に逃げ回って時間稼ぎに徹する心算なのだろう。
小賢しいやり口だと、リアムは嗤って一歩踏み出す。
「面倒だ。ああ、面倒だ。面倒だからよぉ。敢えてこのまま受けてやる。規則性があるなら、後は慣れるだけ。次があるなら、不規則に変わり続けるような毒を仕込むんだなぁ!」
体の動きがおかしくなるなら、意図しない方向に動作することを前提として動かせば良い。右足で踏み込みたいのなら、左足を下げれば良いだけなのだ。
不規則に変化し続けるのならばともかく、規則性を持っているのならば治さなくとも対処は可能。ならばこの不利も楽しんでやろう。
そう断じたリアムは、当たり前のように自然な動きをしてみせる。停滞は数秒で、十秒後には先までと遜色ない速度で走り始めていた。
罠だらけの階段を下りて、襲い来る様々な罠を軽々と躱して、嘲笑を張り付けた亜人の男は此処に罠師を追い詰める。
愕然とした罠師の表情は、直ぐに呆れの色へ変わっていた。
「本当、嫌になるよ。人生で初って言えるくらいに、大盤振る舞いしているんだが、それでも追い付かれるなんて」
「随分とまあ、余裕そうだな。ああ、成程。また人形かよ。それも」
「そうさ。なら、次の手も当然分かるだろう」
冒険者向けの武器屋であったのだろう。店中にある刃物をブービートラップに変えて、それで尚も倒せないリアムを前にコルテスは語る。
内から膨らみ始めた人形。元より彼の役目は時間稼ぎだ。こうして端末を幾つも自壊させながら、時間を稼ぐのが罠師の想定。故に過程が想定外でも、策に問題などはない。
確かにそれは、並の相手には十分な策であっただろう。準英雄級、A級冒険者や六師団長が相手でも十分に通じた筈である。
だが、彼は真に理解してはいない。英雄と言う名の、理不尽を。
「ああ、だから――させねぇよ」
「が――っ!? な、何がっ!?」
破裂寸前の人形に、リアムが拳を叩き込む。本来ならば、無意味な行為。だと言うのに、コルテスの人形は驚愕と苦悶の表情を浮かべて蹲る。
あり得ない。一体何が、とコルテスの表情が強張っているのは当然のこと。彼は痛みを感じていたのだ。
自分の肉体ではない、遠隔操作の人形が殴られた。唯それだけなのに、彼の本体が痛みを感じていたのである。
「は、それが人型の魔道具でも、操ってんのはテメェ本人だろうがっ! なら、その繰糸でテメェとその人形は繋がってる! その繋がりに闘気を流せば、人形越しにテメェを殴り飛ばすなんざ朝飯前なんだよぉっ!!」
「ふっざっ!? 何だ、その理屈にもなってない屁理屈はっ!?」
「知らねぇなぁ、そんなこすっからい考え方なんざよぉっ!」
高らかに語りながら、リアムは拳を振るう。蹲った人形の体を持ち上げるようにボディブロー。宙に浮いた相手に向かって、逆の腕を使った掌底打ちを顔面へと叩き込む。
衝撃で壁に向かって飛ぶコルテスの人形に追い付いて、そのまま胴へと回し蹴り。壁を打ち抜いて苦悶の声を漏らした男に向かって、前宙しながら踵落とし。
後頭部を強打したコルテスが倒れた所で、うつ伏せの男を蹴り上げ、回転させると腹の上に馬乗りになって跨った。
「はぁっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ご、がっ! がはっ!?」
ラッシュラッシュラッシュラッシュ。右と左の拳を交互に、コルテスの顔に叩き込む。死なない程度に闘気の量を加減しながら、振るう拳は止まる気配が一切ない。
与えた痛みで、コルテスの意識を奪い取る心算なのだろう。そこまで分かって、しかし罠師に現状を覆す術はない。逆転の目はないのだ。
ならば被害を最小限にと、彼は何とか意識を繋ぎ留めながらも傀儡を操る糸を切断しようとした。
(痛、い。糸を、切らねば、早く、このまま潰され――)
「させねぇよ。言っただろうがっ!」
「――っっっ!?」
「テメェが切った糸を、俺が結び直した。人形越しだろうがよぉ、安全圏に居ると思ったのが間違いだったなぁ。此処はもう、戦場のど真ん中なんだぜぇっ!」
されど、それさえもリアムは許さない。人形を切り捨てようとしたコルテスは、その糸を逆に絡め捕られて身動きを封じられた。
そして再び始まる拳の雨。絶え間ないラッシュを前に、意識を保っていることこそが一流の証か。されど既に、罠師に対処の術は残っていなかった。
「はぁっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! このままぁ、ぶっ潰れろぉぉぉぉぉっ!!」
「が――はっ」
最早結果は定まった。コルテス・イルデフォンソ=マエストロは、リアム・ファミーユを前に敗れ去る。何一つとして有効打を与えられないまま。無様に負けてしまうのだ。
(痛みで、意識が……だがっ、このままでは――終われんっ!)
「あん? ……また自爆かよ。しかもこいつは、直接制御じゃねぇのか。防げねぇが、ま、良いか」
そう理解した時に、コルテスは最後の意地を示す。魔道具の糸を切っても繋ぎ直され、人形を自爆させようとしても気付かれれば防がれる。
ならば人形以外を爆発させる。保険の保険として備えていた、人形の懐に隠された機械式の爆弾。相手に存在を気付かれてもそれならば、起爆自体は防げない。まだ状況を打破出来る。
爆弾の起爆スイッチを、朦朧とする意識の中で、どうにか操作する。
生じる爆音に、巻き込まれたのは二人の男。意識の糸を切る前に爆発させてしまえば、使い手であるコルテスも被害を受ける。
それでも、最早そうするしか彼には出来ることがなかったから、甘んじて彼も痛みを受ける。その方がまだ、殴られ続けるよりマシだと。
至近距離にて起きた爆発。人形がその形状を保てなくなる程の破壊を受けて、しかし煙が晴れた先に居た男の笑みは消えていない。
全身に少なくはない火傷を負いながら、立ち上がった男は笑みを絶やさない。
「傷は十分。次はもうねぇ。んじゃ、狩りの続きだ。俺に見付かったら最後、精々足掻けよぉ、罠師ぉっ!!」
リアムは闘気を操って、自身の異常を治療しながらに追い詰められた男を探す。
そうして見付け出したリアムは、笑みを深めて霧の中へと身を躍らせた。
◇
路地裏の壁に背を預けて、男は深い息を吐く。自爆による痛みは、リアムが受けたそれより遥かに重い。既に立って歩くのが、困難になっている程だ。
そして、それだけではない。人形越しに与えられたダメージは、既に罠師の限界に程近い。今にも遠のきそうな意識の中、コルテスは静かに口を開いた。
「くっ、体が、痛む。人形越しに殴るなんて、全く、英雄級は、これだから、非常識が過ぎる」
直接殴られた訳ではない。なのに殴られた場所が痛むのは、魂そのものが傷付けられたからである。存在の根幹に傷があるのだから、肉の器が無傷でも痛むのだ。
規格外にも程がある敵の持つ、想定外の攻撃手段。それによって追い詰められたコルテスは、そのまま静かに息を整えるとゆっくりと壁を支えに歩き出す。
いつまでも、この場所に居る訳にはいかなかった。
「人形との繋がりで、場所は割れていると見るべきだ。気配や臭いで正確な位置もばれる以上、動き回らないと追い付かれる。俺と同等の性能を持つ傀儡で、あの様だ。次に接近されたら、終わりだな」
立ち止まったら、追い付かれる。追い付かれたのならば、次は確実にないだろう。コルテスの傀儡は、コルテス本人と全く同じ能力を有するのだから。
そんな傀儡をあっさりと下すリアムに対し、本体で向き合った状況となれば抵抗さえも出来ないだろう。故に足を止めていられる暇はなく、逃げ続けるしか術がない。
「全く、これでも、準英雄級、と呼ばれるだけの、自負はあったんだが、ね。はは、A級冒険者と称されながら、これとは、他の面子が、聞いたら呆れるだろうな」
ふらふらと歩く。よろよろと進む。その在り様、何と無様か。そう自嘲しながら、コルテスは道を違えた友らを思う。
A級冒険者。冒険者ギルドの頂点であり、聖王国の六師団長とも対等とされる、英雄に準ずる力を持つ実力者達。
されど彼らは、英雄ではない。聖王国の三将軍や、西方商業者連合の猟犬。南の風守や東の六武衆など、各国の最高戦力には届かない。
「此処に居たのが、俺じゃなく、美麗や闘王、義人なら、きっと違ったんだろうな」
中でもコルテス・イルデフォンソ=マエストロは、罠師の異名が示す通り直接戦闘には秀でていない人物だ。
直接戦闘能力は闘王に劣り、総合力でも美麗や義人に劣る。A級冒険者として、最弱であると言う自覚があった。
同期の中では才気に恵まれるも、世界全体として見れば微妙な立ち位置。それを補う為に様々な道具に手を出して、気付けば至っていた冒険者の頂点。
それでもやはり、内心では鬱屈した物が溜まっていたのだろう。小細工など通じない純粋な強さ。それに憧れないと言えば嘘になる。羨まないと言えば、それこそ嘘だ。
だからこそ、こんなにも足掻いているのだろう。
「我ながら、なんて無様。時間稼ぎすら、真面に出来ないなんて。……けど、仕方がない。ああ、仕方がない。俺にも、意地がある。なら、もう少しは、抗ってやるさ」
勝ち目はない。コルテスの手札は一切通じず、一方的に追い詰められているだけの現状。これをひっくり返す札など、彼の手元にはない。
だが、他の二人ならば或いは。英雄級の雷将や、それに迫る討魔師団長ならば、逆転出来るかもしれない。ならば、その結果を見る前に、諦めてしまうのは彼の流儀に合わぬのだ。
コルテスは、体を引き摺りながら足掻き続ける。A級と称された矜持が故に、積み重ねて来た流儀が故に――彼はその末路を迎えたのであった。
――内功実行・以って我は心威を示す――
唐突に、声が響いた。霧で日の光も届かぬ薄暗い路地裏に、聞き覚えのない男の声が響いたのだ。
――菩薩未成仏時、以菩提為煩悩。或有解脱与煩悩以為因縁。生執着故――
左右を見る。前後を見る。上下を見る。声の主は、一体どこだと。しかし見付からない。一体何処でこの詠唱をしているのか。
――仏法を一向名利のために学し、妄執の薄らぐこともなく、おだやかなることもなし僧――
疑問は、直ぐに解決した。気付けば前方、3メートル程先の位置に男が立っている。
鷹のように鋭い目を持ち、しかしへらへらと笑っているが故に鋭いと言う印象を受けない肩衣袴を着た男。
その存在に気付いて、コルテスは驚愕する。前方は最初に見た。その時には居なかったのだ。
霧で見えなかった訳ではない。魔道具の持ち主であるコルテスには、霧を見通すことが出来たのだから。
――一人他界し、夢に告げて曰く。我は野槌といふものに生まれたり――
ならば何故、と問う余裕はないだろう。もう間もなく、男の詠唱は終わる。
遮二無二逃げる他に術はなく、しかし体は満足に動かない。故に歯噛みをしたコルテスは、壁から手を離して構えを取る。
――化外と成った愚かな僧よ。化外と産まれた愚かな我よ。無様な生しか得られぬならば、せめて涅槃を夢に見よ――
迷彩色に変わった色変わりの衣。その衣嚢に両手を入れた、独特な構え。
最後の最後まで抗ってみせると言う男の意地に、相対する男は笑みの質を僅かに変える。
そして、詠唱が終わる。その心威が牙を剥いた。
――心威・解放――
「深山で人喰え――徳無僧」
直後、男の姿が消える。まるでフィルムのコマ落とし。流れる映像の中で、登場人物が突然消えると言う現象。製作者のミスにさえ思えてくる唐突さに、コルテスの思考は一瞬止まった。
「高速移動!? 瞬間転移の類か!? どこだ! どこに行った!?」
慌てて周囲を探るが、何処にも居ない。左右前後上下全てを見回しても、そこにあるのは霧だけだ。鷹のような瞳を持つ男の姿は、その何処にも存在しなくて。
(いや、待て? 霧? なぜ、俺の目にも霧が映る?)
何かがおかしいと、気付けた理由は一つ。魔道具の霧が、所有者の目に映る訳がないのだと。その事実に思い至った瞬間、コルテスは胸に熱を感じて視線を落とした。
聞こえた音は、さくりとまるで柔らかな肉を裂くような音。感じたのは、胸の辺りにある熱さ。ふとその元凶を見てみれば、そこには背後から心臓を貫いている銀の刀身。
ゆっくりとブリキの人形を思わせる動作で、コルテスが振り返った先に居たのは探していた男。
顔を含めた体の右半分が霧と成っている彼が、その手に持つ大太刀でコルテスの体を貫いていた。
「えらい気張ったんどすなぁ。せやけど、まだまだ足りんわ。おきばりやす」
「が、は――っ」
刺された事を理解して、思い出したかのように吐血する。溢れ出す血は、潰された臓器は、最早助かる見込みがないことを彼に伝えてくる。
そう自覚して、目に映る光景はニヤリと笑う男の顔が最後なのかと。最後の最後で思ったことがそんな内容だと言うことに、コルテスは自嘲して空を見上げた。
「ああ、本当に、今日は厄日だ」
霧の晴れた空に浮かんだ満月は、腹立たしいくらいに美しかった。
斯くして、北の防衛網。その一角は、崩れ落ちる。町を守る迷いの霧は晴れ、六武衆の分断はもう叶わない。
「ほな、ばいばーい」
命を終えて、倒れたコルテス。その死骸から剣を引き抜いた男は、場に不釣り合いな態度で手を振り嗤った。
そして路地裏に残る命は彼一人。しかし直ぐに、それは二人分と変わる。
本来、コルテスを獲物と追っていた青年。リアム・ファミーユがこの場に辿り着いたのだ。
「おいこら、子龍! 人の獲物横取りした上、仕留めるたぁどういう了見だぁっ!」
幾つもの罠を回避して、気配を辿ったリアム。彼が苦労して路地裏に辿り着いてみれば、そこには既に事切れて動かなくなったコルテスと下手人の姿。
顔の火傷痕が特徴的な強面の獣人は、いつも以上に顔を顰め青筋を立てながら子龍に詰め寄る。獲物を取られた。それだけではない。それと同等以上の、怒りの理由があったから。
「陛下が言ってたろうが、人類統べたら次は魔物相手だと! 戦力になる奴は、なるべく生かして無力化しろってよぉ!」
彼ら東国六武衆には、炎王より一つの命が下されている。強者はなるべく殺すな、と。王の敵はあくまで魔であり、その討伐を阻む愚者達であるのだと。
立場や柵故に戦わざるを得ない実力者達は、生きて残したいと言うのが彼の思考。自身に仕える臣下の命には変えられぬから、強制している訳ではない。だが、それでも王は望んでいるのだ。
ならば忠臣を自負するリアムにとっては、なるべくではなく絶対に守るべき指針。故にそれに反した男に対し、獲物を取られた事実以上に、リアムは腹を立てているのである。
「堪忍やって、リアム君。そら、僕だって陛下の命には従いたいんよ。そやけど、こんなんで死ぬんが悪いやん。腸失くしてからが、本番やろ」
「普通の人間はなぁ、心臓一突きされりゃ死ぬんだよ! 英雄級でも、瀕死になるわ! 内臓全部無くなっても平然と動くのは、テメェら東の修羅だけだって理解しろやボケっ!」
「なんや、脆いんやね。難儀なもんや」
怒りを告げるリアムに対し、子龍が返したのはそんな言葉。へらへらと笑い続ける男に対し、リアムは青筋を立てる。が、暖簾に腕押しと言う子龍の態度は変わらない。
六武衆同士での争いは、他でもない王に禁じられている。それは努力目標である不殺より、遥かに重い命令だ。
故に子龍が韜晦する限り、踏み込めぬのはリアムの側。彼は大きく嘆息すると、その怒りをどうにか収める。
「ったく、テメェはよ。まぁ、今回は仕方がねぇ。俺が引いてやる。さっさと潰せなかった、俺の不手際でもある訳だからな」
「そやで。リアム君も、精進しやな」
「んの野郎。……ともあれ、陛下の命には背いてんだ。弁解はテメェ自身でやれよ」
軽い態度を崩さぬ子龍の物言いに、一瞬熱を再燃させそうになりながらも抑えて返す。リアムが己の情を抑えたとしても、子龍が命を破ったのは確かな事実。
ならばそちらへの対応は自分で行えよ、と。それが現状での、リアムに出来る最大限の譲歩であった。
「えー、リアム君は口添えしてくれへんの?」
「誰がそこまでするか」
王への弁明と言う行為は、六武の者らにとっては軽くはない。大抵は叱責程度で終わり、厳罰が下ることは滅多にない。だがそれでも、失望されると言うのは重いのだ。
よよよと泣き真似をし始める子龍の姿に、リアムは白い視線を向ける。こいつは何を言い出す気なのかと、今後がある程度読めてしまうのは付き合いの長さが故であろうか。
「いけずやなぁ。罠師に生かす価値ない言うと、それに苦戦しとったリアム君の陰口言うみたいで、とてもとても」
「おいこら、誰が苦戦してたってぇ?」
「リアム君」
「ふっざけんなよ、楽勝だったわ! お前が見てねぇだけで余裕だったわ! 陛下の前で断言しても良いぜ、俺はよぉっ!」
予想は出来ても、回避は出来ない。互いに気心の知れた相手であればこそ、四席の方が数字の通りに一枚上手だ。
は、とリアムが気付いた時にはもう遅い。その言葉こそを待っていたと言わんばかりの満面な笑みで、子龍はリアムの揚げ足を取る。
「ほな、陛下への弁明よろしゅうな」
「は?」
「いやー、助かるわ。持つべきものは友達やね」
「おま、おっま」
そういう意味じゃねぇと言う反論が口から出掛かって、しかし何と言おうと「陛下を引き合いに出したのに嘘だったの?」と返される未来が浮かび閉口する。
子龍が求めていたのは、罠師が弱かったと言う証言だった。いつの間にかそれを陛下の前で証言する。詰まりは子龍の行いを庇うと言う流れになり、どうしたものかとリアムは頭を抱える。
性根の部分で生真面目なリアムと、一部を除いて不真面目な子龍。両者のやり取りは、偶にやり返すこともあるが、大抵の場合でリアムが割を食う。今回もそうだったのだろうと、男は深く深く深く息を吐いて諦めた。
「はぁ。テメェは何時も、そういう奴だよな」
「そやね。そやさかい、僕はこれでも感謝しとるんよ」
自分の発言くらい、あっさりと翻してしまえば良かろうに。こんな真面目な男だからこそ、修羅の友人などが出来るのだろう。
へらへらとした表情のまま口を開いた子龍の言葉は、紛れもなく彼自身の本心だ。心の底から、彼はこの友人を好んでいる。だが、しかし、男の性根は修羅そのものだ。
軽い態度で感謝を示し、気安く肩を組んで来る子龍。それを邪魔だとリアムが片手で跳ね除ければ、ノリが悪いと笑いながら――子龍は目にも止まらぬ速さで抜刀した刃を、リアムの首に目掛けて振るうのだ。
「うぉっ!? 突然切り掛かって来んじゃねぇよ、糞がっ!?」
「……ああ、やってもた。堪忍やで、リアム君」
一筋の線が、リアムの首に刻まれる。紙一重での回避を証明するかのように、薄皮が切られた肌の上に浮かぶは赤い糸。
己の刃に流れる僅かな返り血を僅か茫然と見詰めてから、刀を収めた子龍はにこやかな表情を浮かべて相変わらずの態度で謝罪を告げた。
「ったく。テメェと言い、朧の奴と言い、隙あらば本気で首取りに来るの本気でやめろよ。その内、マジで死ぬぞ」
命の危機を前にして、下手人に対しこの態度。狂狼と呼ばれる青年もまた、中々に乾いた死生観の持ち主だ。
殺されそうになった事実よりも、それに対処し損ねた事実に憤るタイプであるが故。
更に言えば、六武衆の面々と行動を共にしていれば、この程度は日常茶飯事だ。特に筆頭は日に一度は殺しに来る朧と子龍の二人であるが、姫乃なども極稀に殺意の籠った一撃を唐突に放って来る。
隙があっても殺しに来ないのは、王と武鋼くらいのもの。詰まりはそう、慣れてはいるのだ。
「そやから、ごめんやしておくれやす。僕ら、君が大好きなんよ」
「……訳分かんねぇし、意味分かんねぇよ。その返し。つーか、野郎に言われてもきめぇだけだわ」
いつになく本気の謝罪を向けて来た子龍が続ける言葉に、リアムは視線に多分な呆れを混ぜる。
慣れたくはなかった日常に、仕方がないと嘆息一つで納得してしまうのは器の広さか壊れているのか。
どうあれこれ以上に怒りを向ける気のないリアムは、今日何度目になるか分からぬ嘆息を行った後に表情を僅か変える。子龍の行い、それに対し感じる違和感があった故に。
「はぁ。仕方ねぇから色々と目を瞑ってはやるがよ。一つだけ、聞かせろ。意図してやったか?」
罠師の殺害。それを意図して行ったのか。だとすれば、どんな思惑があったのか。
鋭い視線で問う狼の亜人に、修羅は何時もの笑みで返す。仮面のように、張り付いたその表情のままで。
「そんな訳ないやん。僕が訳もなしに、陛下の命、軽んじる訳ないやろ」
「訳がなければ、な」
回答は、是とも否とも取れる曖昧なもの。理由もまた、幾つかは思い付く。
例えば打ち勝ち捕らえた後、閉じ込めておくのが一番面倒だと感じた相手だから処分したとか。
或いは自身の衝動を満たすために、一番殺しても問題がない相手を処理したとか。
大穴で、本当に力加減を間違えたという可能性もなくはない。
だが真がどうあれ、伏せたと言うことは問うなと言うことであろう。
この男が、六武に不利益を齎すことはない。その程度の信頼はあるが故に、リアムはそれ以上には踏み込まない。
人には互いの流儀がある。自身のそれに踏み込まない限り、他人のそれを否定はしない。リアムはそうと決めているが故に、子龍の行いもまだ許容範囲ではあったのだ。
「ま、お前の場合、軽んじるのは人命くらいか」
「さぶ。上手いこと言った心算なん? 詰まらんで、リアム君」
「こいつは、マジでよぉ」
とは言え、へらへらとした態度の同僚に、こいつ一回痛い目を見た方が良いんじゃないかと本気で悩む。しかし売り言葉に買い言葉だとしても、一度口にした言葉を撤回する心算はない。
だから、そう。死後に名誉をも穢してしまうことになる死体を、何をするでもなく唯、見やる。
既に子龍は興味を失くしているし、恐らく他の同胞達も唯の死骸だとしか思わぬであろうそれを。
失われた命に何かを思うのは、己を除けば王だけであろう。しかし世界を背負うべき王に、これ以上の荷は負わせたくはない。だから、きっと己が為すべきなのだ。
(踏み躙るんだ。弔い程度は、してやるかね)
全てが終わった後で、墓くらいは作ってやろう。そう結論付けて、リアムは深く息を吐く。
見上げれば、確かに嫌になる程に、月は美しく輝いていた。
【六武衆の皆に聞いてみました。貴方は彼・彼女をどう思いますか? ~by五席編~】
第一席「誇るべき臣の一人だ。こいつが居れば、未来は明るいと確かに思える」
第二席「揶揄うと反応が面白い子よね。大切な仲間の一人よ」
第三席「心身ともに良い逸材です。修羅の生まれでないことだけが残念ですね。75点」
第四席「僕らにとっての、救いみたいな存在や。あと、大切な友達やね」
第六席「便利な奴だな。私があるべき立場に成った後、忠臣として取り立ててやっても良い」




