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Re, DS  作者: SIOYAKI
第三章 同じ轍を踏まない
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第45話


 崩れた遺跡の向こう側、僅かに明るみ始めた夜空を背に手を差し伸べる吸血鬼。微笑む女を前にして、ミュシャとアンジュは言葉を詰まらせる。


 応じるのが正解なのか、拒むのが正解なのか。余りにも衝撃的な事実の判明が次から次へと続いて、既に許容量は一杯一杯。未熟な少女らに、この場で答えは返せなかった。


「さぁ、答えは……と、聞きたい所だけど。もう時間はないようね」


 故に、其処で此度は時間切れ。女は伸ばしていた手を下ろし、ゆっくりとその身を翻す。夜闇の中に白いケープが躍り、まるで氷が溶けていくかのように、彼女の姿は消えていく。


「先生」


「貴女たちが正しい道を選ぶこと、期待してるわよ」


 その背に思わず声を掛けたのは、きっとまだ情があったから。怒りはある。恨みもある。それでも、それだけではなかったから。


 複雑そうな表情で、手を伸ばしかけた猫娘。僅か振り向いて微笑んだディアナは、そう言い残し姿を消した。後には何も残らない。


 そんな場に、響くは轟音。ディアナが消えた夜闇の反対側、壁が崩れて姿を見せるは異形の少年。黒き尾を生やし、全身を斑に鱗で彩る悪竜王が辿り着く。


「ミュシャ。アンジュ」


『ヒビキっ!』


「……良かっ、た」


 二人の顔を確認して、近付くとそのまま倒れ込む。コマ落ちしたフィルムのように一瞬で、鱗は消えて尾も消えた。白髪の人形を思わせる、美しい人の型。


 そんな人間の形に戻った少年を、慌てて二人は抱き支える。一体どうしたのかと案じてみれば、聞こえて来るのは等間隔の寝息である。疲れて眠ってしまったのだと、察するのには十分だった。


「お、おい。ヒビキ」


「寝ちゃった、みたいね」


 ミュシャやアンジュが知る由もないが、既にヒビキは限界だった。第三魔王と覇を競い、その影の罠に嵌められ追い詰められて、その後に発露し掛けた凶暴性を無理矢理抑えた。


 まだ真面に産まれることさえ出来ていない悪竜王にとって、これは多分に無理があること。それでもこの瞬間に至るまで、貫き通せてみせた理由はきっと――――敢えて語るまでもないことだろう。


「こうして見てると本当に、唯の子供だよな」


「うん、そうね。でも、それだけじゃないのも事実よ」


「嫌な話だな、それ……」


 魔物は悪だ。人類の悪意より零れ落ちた彼らは、人を苦しめることを好み愉しむ。されど殺さねば生きられぬ修羅と異なり、その悪逆への衝動は自身の生存に必須な物ではない。ならば、意志で抑えることも叶う筈。


 ならばこそ、魔物の王たる悪竜王は単純な悪とは言えぬのだろう。未来は分からずとも、今はまだ。そう、彼は小さな子供である。その純粋な在り様は、善にも悪にも転び得るモノ。なまじ力があるからこそ、彼は唯の子供では居られない。


「これから、どうするよ」


「先生の誘いに、乗るか否かってことよね」


 抱き留めた眠る少年を、起こさぬように横たえる。どちらが膝枕をするかと対立して、数度のじゃんけんの後に雷速の反射で白百合が勝ち取る。


 闘気を使った技は卑怯だと訴えるミュシャと静かにいがみ合い、時間で交代なと和解した後に暫くしてから語り出す。今後、自分達はどう動くかと言う悩みについて。


「敵の敵は味方って、単純に考えることが出来れば良かったのだけど」


「あの邪教の教主だ。味方にしても、信頼なんて出来ねぇよ」


「そう、なのよね。けど、こうして疑心暗鬼にさせることが、目的なのかもしれないし」


 師の性格を良く知るミュシャ・ルシャをして、ディアナ・プロセルピナの真の狙いは掴めない。一先ず分かるのは、態々ヒビキを遠ざけてミュシャとアンジュだけに真実を語ったのは、恐らく余裕を奪う為だろうと言う程度。


 いざとなれば力尽くでひっくり返せる。そんな手札を封じられ、切り札たる目も初手で封じる。となれば冷静になろうとしても成り切れず、良いように踊らされるのも妥当な話だ。


 与えられた情報に、恐らく嘘はない。されど言っていない事実は山程にあるだろうし、あれだけ敵対を煽っていたのにも違和感もある。となれば少女達だけで、判断し切れないのも道理であった。


「一先ず、親父達に相談するか」


「……そう、ね。私達だけで考えていても結論は出なそうだし、この遺跡のことも報告しないといけないし、ね」


 判断に迷うのならば、先ず相談を。頼れる誰かが居るのは幸運だ。最後に決めるのは自分達だとしても、英雄と呼ばれた男の意見を聞くのはためになる。


 それにそもそも、依頼として受けた以上は依頼場所に関する報告を上げる義務もある。この遺跡について語るのならば、ディアナの語った事を話す必要もまた出て来る訳だ。


「これから、どうなるんだろうな」


「分からないわ。唯、一つ言えるのは――激動の時代が来る、と言うことくらいでしょうね」


 話した結果がどうなるとしても、その果てに起こるであろう流れは変わらない。世界の終わりは遠くない。その直前、激動の時代が訪れようとしている。それだけは、確かと言える事だった。






◇聖王歴1339年風ノ月19ノ日


 一晩が明けて、臨海都市コートフォール。中央にある白亜の庁舎の一室で、顔を合わせているのは少年少女と大人達。


 悩ましいと顔を顰めて黙り込んでいるクリスに対し、聞いた話を頭の中で咀嚼し終えたシャルロットは信じ難いと言う表情を隠さずに告げた。


「その少年が、五大魔王の一角、悪竜王。それに、修羅の首魁はそれさえ超える実力者、と……俄かには、信じられませんね」


「だけどよ、シャル姉。嘘は言ってないぜ。少なくとも、私やミュシャはな」


「ええ、まあ、貴女達は信用出来ます。ですが、それを貴女達に伝えた人物が信用出来るかと言うと」


「まー、当然の反応よね。私だって、逆の立場なら信じないし」


 伝えたのは、知った真実の全て。伝えて相談するのだと決めた以上は、中途半端に隠す事に意味などない。


 ヒビキが悪竜王であること。粛清装置が動き出す日が近いと言うこと。間もなく攻めて来る修羅の王は、それらさえも超えると言う真実を。


「けど、先生は下手な嘘を吐いたり、意味のないことをするような女じゃない。となれば――」


「語り自体は、真実である可能性が高い、ですか。確かに全てが嘘と楽観視するより、最悪を想定して行動するべきではありますね」


 全てを聞いて、信じられないと思いながらもシャルロットは判断する。もしも真実だった時、信じずに動いた方が不味いと。ならば信じて動いてみて、後で杞憂だったと笑えた方が遥かにマシだ。


「んでもよ、シャル姉。最悪を想定って言ったって、結局どう動けば良いんだよ。腹の探り合いで、勝てる気しねぇよ。アイツ」


「……それは」


 だが真実と仮定するとして、ならばどう動けば良いのかと。アンジュに問われたシャルロットは、何と答えた物かと言葉に悩む。


 人生経験と言う点で、ディアナと言う怪物は圧倒的だ。億年単位で生きている腹黒策士に、裏の読み合いで勝ち目が薄いのは妥当な話。


 そうでなくとも、シャルロットも頭脳派と言う訳ではない。武力ならば六団長でも二位に付けるが、頭脳労働の分野では北守や王守の団長に大きく劣る。


 ユルリッシュやガティネがこの場に居ればとシャルロットが無い者強請りをしていた所で、それまで沈黙していたクリスが静かに息を吐いてから言葉を紡いだ。


「君達は、逃げなさい」


「親父? 逃げろって、何で?」


「あの吸血鬼の語りは、信じるにも疑うにも値しない。なら一先ずは横に置いて、何をするべきか、何をしたいかを考えるべきだ」


 静かに、迷いなく告げる言葉。裏の読み合いで、吸血鬼に対し勝ち目がない事は分かっている。故に端から、彼は割り切っている。考えるだけ時間の無駄だ。


 故に思考するべきは、何をすべきか何をしたいか。知った情報全てを踏まえて、しかし与えられた選択肢は全て無視して、己達がどう動きたいかを心で定める。それこそが、今に必要な事なのだと。


「私は君に、君達に生きていて欲しい。勝算の薄い戦いに、君達が関わる義務なんてないんだから」


「親父……」


 真実を知った、雷将クリスと言う男の選ぶ道は決まっている。あの日、救えなかった友の忘れ形見。血の繋がりのない愛娘を生かし、幸福な生涯を送らせること。


 最も優先するべき事はそれであり、次いで彼女の周りにある幸福を守ること。新たに得た仲間達の幸せをこそ、願っている。だからこそ、クリスは逃げて欲しいと言う私情を口にした。


「でも、先生の語りが本当なら。ここで逃げても、未来なんてない。今、戦うのが一番可能性が高いんじゃ」


「かもしれないね。でも、そうじゃないかもしれない。……それに」


 そんな男の言葉に慌てて、ミュシャが口を挟む。逃走が性に合わないと言う訳ではないが、今は逃げるべきではないのではとも感じていたのだ。


 確かに彼女の物言いにも一理ある。立ち向かうと決めるのならば、クリス達が手を貸せる今にするべきだと。だがしかし、男はそれを望んでいない。だからこそ、彼は卑怯なことを言う。


「ズルい言い方だけどさ。君はその子に、命を賭けろと言えるかい?」


「っ。それ、は……」


 クリスは眠そうに瞼を擦っている少年を見詰めてから、ミュシャへと向き直り問い掛けた。悪なる竜、ヒビキ・タツミヤ=アジ・ダハーカは特別な存在だ。


 だが、同時にその内面は幼い子供とまるで変わらない。そんな子供に世界の命運を押し付けて、傷付いてでも戦って欲しいと口にする事が出来るのかと。


「あの吸血鬼の語りを真だと仮定した時、確かにその子の助力はありがたい話だろう。彼がいなければ、敗北は必至。でもね、あの女の語りが真ならば、その子が居ても敗北は濃厚。負ける可能性の方が高いんだよ」


 ましてや、この先に訪れる修羅の王はヒビキをして敗北必至と言われる存在。これまでの繰り返しの中で、唯の一度も勝利出来なかった人の極点。


 一度は必ず負けると、二度目でさえも勝ち目の方が薄いと、あの吸血鬼が断言した程の怪物だ。立ち向かうのだとすれば、痛いや苦しいなんて言葉では済まない苦難を経験することになるだろう。


 それを分かっていて、そうしてくれと頼めるのか。クリスの問い掛けを前に、ミュシャは言葉を返せない。傷付いて欲しい訳がない。苦しんで欲しい訳がなかった。


「僕、強、い、よ?」


「うん、分かってる。君は確かに、私より強いんだろう」


「え、へん」


 何を話しているのか、よく分かっていない少年は少し自慢気に主張する。そんなヒビキの姿に微笑んで、頭をくしゃりと撫でたクリス。嘗ての英雄は、膝を付いて目線を合わせると、少年に向かって真摯に告げた。


「でも、ね。忘れないで欲しい。力を振るう時、其処には責任が生じる物だ。けどね、力を有するだけならば、其処には義務がある訳じゃない。強いからって、戦わなくても良いんだよ」


「?」


「そうするしか出来ない。それはね、余りに不幸なことなんだ」


 力を持つ者は、それを振るう時に自覚せねばならない。良くも悪くも、大きな力は周囲に影響を及ぼしてしまう物だから。


 それはきっと、悪竜王も変わらない。彼は息をするように簡単に、世界を変えてしまえるだろう。多くの意志を、踏み躙ってしまえるのだ。


 だが、それは彼が望んで得た力ではない。だとするのならば、振るわぬ限り、その義務も責任も彼にはない。少なくとも、クリスはそう思う。


「義務があるとするならば、責任があるとするならば、それは私だ。今の時代を作った大人達にこそ、果たさねばならない義務と責務が存在している」


 そして真実、責任と義務を有しているのはこの世界の人間だ。中でも特に、長く生きた者達。この時代に、問題を残してしまった大人達が背負うべき物だ。


 原初の魔王アカ・マナフを打ち倒し、其処で立ち止まってしまった勇者の仲間。変えよう変えようと努力して、結局友を殺して心が折れた。そんな男にこそ、果たさねばならぬ義務がある。


「唯でさえ、駄目なおじさんなんだ。これ以上、情けない大人にはさせないでおくれ」


 穏やかな微笑を情けない苦笑に変えて、少年の頭をぽんと軽く叩くとクリスはゆっくり立ち上がる。机の引き出しより白い封筒を取り出すと、それをリーダー格と見做した猫娘に手渡した。


「これは今回の報酬だよ。西方行きの乗船券。希望通り、要人向けのを用意した」


「期限の表記が、ない。何時、出航する奴なの?」


 受け取って、ミュシャは中身を確認する。入っていたのは、紙のチケットが三枚。西へと向かう客船の乗船券である。


 それを様々な角度から眺めて、ミュシャは疑問を抱いて問い掛ける。本来ならばある筈の、日付の表記がなかったのだから。


「何時でも、君達が望んだ時に。要人向けだからね。その辺は自由が効くようにしてあるよ」


「……チャーター船ってことっ!? 転売したら金貨何枚っ!?」


「転売すんなっ!? でも、貸し切りってマジかよ。資金とか、きつくなかったのか」


 冗談半分に言った要人向けの豪華客船と言う要望を完全に満たされて、即座に脳裏でチケット転売した上で通常の乗船券を購入すれば差額は幾らか計算し始めるミュシャ。


 試算した金額の大きさ故に割と本気で魔が差し始めていた少女に、アンジュは軽く頭を叩く形で突っ込みを入れると養父に向き直る。先の六武衆の宣戦布告に、第三魔王の大暴れと続いている現状、資金が惜しくはなかったのかと。


「子どもがそんなこと気にしないの。……おじさんのポケットマネーだけで、ギリギリどうにかなったさ」


「懐具合を考えると、暫くは断酒ですけどね」


「そこだけはちょっと痛いかなー。おじさんの決意、さっそく揺らぎそうかも」


 笑って気にするなと言った男は、立場に見合った分の給金をさして使わず死蔵するタイプである。故に多少無理をすれば、私財だけでも用意出来たと言う訳だ。


 もう素寒貧だよと苦笑するクリスに、これを機に酒離れさせようと動くシャルロット。味も分からぬからと安酒を泥酔するまで煽る悪癖は、なるべく早めに改善するべきなのだと。


 そんな風に語らって、少し空気は軽くなる。されど根本的には、何も解決してはいない。故に暖かな空気も僅かな言葉だけで消え去って、重く苦しい現実から目を逸らせなくなってしまう。


「……なぁ、親父達も、逃げられねぇのか」


「うーん。そうだね。逃げたいのは山々だけどさ。背負うモノが、少し多過ぎるんだよねぇ」


「将として、師団の長として、仕える国への忠誠も、尊敬に値する先達への恩も、従える部下への義理も、余りに多くありますから」


 逃げるのならばせめて、今の家族も一緒にと。そう続けようとしたアンジュの言葉は、否定を以って止められる。クリスもシャルロットも、共に立場と言う物があったから。


 一つ一つは折れかけている。その内のどれか一つだけならば、命を掛けるには足りていなかったであろう。それでも、幾つも重なれば話は別だ。クリスは軍の将軍として、シャルロットは師団の団長として、どちらも何もせずには逃げられない。


「最悪でも、向こうの王様に伝えるぐらいはしておくよ。悪竜王は、良い子だから。倒す必要はないってね」


 逃げられないのならば、前のめりに進むだけ。勝てないと最初から諦めるのではなく、勝つ心算で当然挑む。それでも敗北の可能性が高いことは、彼らにももう分かっていた。


 それでいて、己の意志を曲げる心算が二人にはない。ターニングポイントは、既に過ぎていたのである。


「後は、そうですね。最悪、あの女の言が真であり、東の武王の死後に粛清装置が動き出すのだとしても――悪竜王が残っていれば、勝てるかもしれません」


「まあ、そうだね。同じ勝てるか分からない相手なら、少しでも勝算が高い相手と戦うべきだ。六武の王より、粛清装置は弱いんだろう? なら、逃げた先でそいつが出て来るのを待つと言うのも選択肢の一つだよ」


 そんな彼らは、安心させるように、或いは罪悪感を和らげる為に、そんな言葉を口にする。勝てるか分からぬ武の頂点に挑むより、それよりは確実に弱いとされる滅びに対処した方が賢い選択だと。だから今は逃げることにこそ、理があるのだと彼らは説いた。


「だからま、任せときなさい。これでもおじさん、強いんだからさ」


 情けない苦笑を漏らす男は、それでも魔王を倒した勇者の仲間。最強の騎士とも呼ばれた英雄。何も為せずに死ぬ気はなくとも、何かを為して死ぬ気であった。


 それが分かって、口を噤んだ少女が居る。何と言葉を紡げば良いか悩み、何も言えなくなった少女が居る。何も分かっていないけど、ぼんやりとするのは止めた少年が居た。


「悩むな、とは言いません。寧ろ、悩んでくれるのは嬉しい。ですが、だからこそ、貴方達はいきなさい」


 逃げて欲しいと望まれて、逃げて良いのかと悩んでいて、小さな少年に押し付けることも出来ずに居る。そんな少女達を見詰めて、シャルロットはそう言った。


 悩み、迷うのはそれだけ大切だと思っているから。そう思われていることが嬉しいと、微笑みつつもだからこそと女は続ける。誰かを大切に想える貴女達だからこそ、幸せに生きるべきなのだと。


「親父。シャル姉」


「……考えるわ。私も、アンジュも、考えるだけ、考えてみる」


「そっか」


「ええ。納得がいくまで、考えるのも良いでしょう。そのくらいの時間は、作ってみせます」


 少女達の答えはまだ出ない。戦うのか、逃げるのか。動乱の時代を前にして、何を為すのが正しいのか。己達は、一体何がしたいのか。


 だからまだ考えようと結論付けた二人の姿に大人達はどこか残念そうで、しかし彼らは己の意志を無理に押し付けようとはしなかった。若き者らが選ぶ道を、否定したくはなかったから。


「ヒビキ君」


「? な、に?」


 故に、後に告げるは一つだけ。もう一度、ヒビキと目線を合わせたクリスは言う。情けない大人から、小さな子供へ、たった一つの頼み事。


「二人を、頼むよ」


「ん。分か、った」


「ああ、安心した。ありがとう、ヒビキ君」


 そんな口約束を交わした後で、ヒビキがぴんと小指を立てる。ふと思い出したのは、果たしてどちらであったのか。


 そう言えば、勇者もそんなことをしていたなとクリスは苦笑し同じく小指を立てる。絡めて振るうは指切りげんまん。


 此処で確かに、その約束は交わされたのであった。






【ディアナの企みについて】

今回のディアナは、真実を伝えることだけが目的。

自身の生死にも関わる緊急事態とミュシャに伝えることで、彼女の滲威が暴発する(或いは任意で滲威を使用する)ことを狙っていた。


信じる、信じないはどちらでも良い。どちらにも取れるように話せば、勝手に深読みしてくれるから。なので最低条件を果たした後、ディアナは趣味に走っていました。


因みに此処に悪竜王が居ると趣味に走ったタイミングで切れられて殴り飛ばされた結果、割とシャレにならないレベルの被害を受けます。(一敗)

なのでアリスやアダムや遺跡機構を使って、遠ざける必要があったんですね。

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