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54.帰る場所

ちょっとしんみりしちゃいますが、二人は必ず幸せになります!

「お父さん、いつまでも新聞読んでないで。優華たち、来ちゃうわよ」

「引っ越し屋さんが全部やってくれるんだろ?俺が何かやることあるのか?」

ああ、ここ、東京の家だ。懐かしい……。

お父さんとお母さん、ちょっと歳取ったかな?


「ただいまー。引っ越し屋さん、もう来てるよ。このまま運び入れてもらうね」

「お父さん、お母さん、今日からお世話になります」

「いらっしゃい!じゃなくて今日からはお帰りなさいよね。優華も亮平くんも」


「お父さん、暇なら紗耶を抱っこしててくれる?私と亮平は荷物運ぶから」

ほら、やることあったじゃない。と母が小声で父に話している。


え?お姉ちゃん、結婚したの?

しかも赤ちゃん!かわいい~。紗耶って、私と一文字同じだ。


「亮平くん、ありがとね。義理の両親との同居じゃ気を遣うでしょう」

「いえ、お礼を言うのは僕の方です。優華の出産後も僕の帰りは遅いし出張は多いし。このまま彼女のワンオペ状態が続いたら間違いなく離婚届けを突きつけられていましたから。ほんっと助かりました」


ベビー用品は2階の手前の部屋に、姉が引っ越し屋さんにそう指示をしている。

あ、私の部屋だ。なんにもなくなってる。

「紗羅の荷物、段ボール二つだけになっちゃったね。でも許してね。紗羅の分までこの家をにぎやかで明るくするからね!紗耶が」

お姉ちゃん、自分が明るくするんじゃないんかい!赤ちゃん頼りとは……。


「紗羅、今頃何してるのかな~?」

「天国で?」

窓から空を見つめる姉。旦那さんがその横に立ち、背中にそっと手を添えている。

「うーん、なんかね、紗羅はどこかで元気に生きている気がしちゃうのよ。それは天国かもしれないし、全然別の世界かもしれないし」


お姉ちゃん、正解!私は異世界で元気に暮らしています!

いや、元気ではないか。今まさに瀕死、とまでは言わないけど大けがしたかも。


サラ!サラ!!

ああ、レンの声が聞こえる。行かなきゃ。


お姉ちゃん、お父さん、お母さん、またね。

私の部屋、自由に使っていいよ。


「紗羅?紗羅なの??そこにいるの?」

「優華、どうしたの?」亡くなった妹の名を呼んだ娘に、母が声をかけた。


「今、紗羅の声がしたの」

「あら、それはうらやましい。お母さんも聞きたかったわ」

「またひょっこり来るんじゃない?」

「そうね、楽しみにしてましょ」


もう泣かないなんて言えない。最愛の娘を、妹を失った悲しみは生涯消えることはないだろう。それでも、毎日に少しずつ笑いがこぼれていき、楽しみが増えていく。きっとそれをあの娘も望んでいるだろう。

紗羅、元気でね。



サラ、サラ。そう呼ぶ声に導かれ、サラフィナはゆっくりと目を開けた。

「気が付いた?おはよう、サラ」

あたたかい手がほほに優しく触れている。

ああ、そうだ。今私が帰るのはこの場所なんだ。

「ただいま、レン」


「ただいま?どこかへ行っていたの?」

「東京の自宅。みんな幸せそうだった」

そんな突拍子もない話にも、目の前の恋人は優しく笑ってくれる。


「そっか、じゃあ俺たちも幸せにならなきゃだね。サラ、結婚してください」

え?今?ここで?夜景の見える丘じゃなかったの??


「えーっと、嬉しいけどネグリジェだし髪はぼさぼさだし、背中は痛いし、仕切り直しでお願いします」

「うぅーっ、分かった。善処します」

そう言ってくすくすと笑いあう二人。


レンリッヒの顔が近づいてきて、二人のおでこがこつんとくっつく。レンリッヒの熱を帯びた目を見つめた後、サラフィナはそっと目を閉じた。そのまま重なる唇。


ファーストキスも夜景の見える丘がよかったな。

そう思ってしまったことは内緒である。

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