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53.サラフィナの収納

残り3話で完結します。本日3話連続投稿させていただきます。

村の入り口から山の方に向けて、ワイルドボアの死体が累々と転がっている。深窓の令嬢にはなかなか堪える、血なまぐさい現場だ。これが命のやり取りなのだと否が応でも実感するサラフィナだった。


村の中心部ではルイポルトと騎士団、村の人たちが集まっていた。戦った男たちは井戸水で手や顔を洗い、浴びた血を洗い流している。


「お食事を用意してきました。皆さんでどうぞ」

収納から長机を出し、その上に寸胴鍋いっぱいのスープや焼き立てパン、ほかほかの揚げ物、食器などを並べていく。

何もない空間から続々と料理が出てくる光景に、全員が唖然としていた。


「あ、これは本日ファイス神様から授かったばかりの力なんです。皆さんのお役に立ててファイス神様も喜んでいらっしゃると思います」

おお!そうでしたか、それはおめでとうございます。と、村の人たちからお祝いの言葉がかけられた。


「目の当たりにするとすげーな、サラの収納力。だけど本当にあのボアを全部収納できるのか?」

ルイポルトがつぶやき、周りの人たちは更に驚いている。

「え?あの量のボアを収納するのですか?」


「あ、もちろん皆さんが食べる分は残しておきますからご心配なく」

サラフィナの言葉に、顔を見合わせる村人たち。

「それはありがたいことですが、我が村では保存食にしたとしても数頭が限界。近隣の町や村に配るとしてもそんなに何頭も運べません。腐らせるしかないと思っていたのですが……」


「それを帝国でもらい受けてもよいか?不作で苦しむ近隣の国への援助にしたいと考えているんだが」ルイポルトの問いに、村長が姿勢を正して答える。

「もちろんです」


「皆様が倒した魔獣です。皆様のご自由になさってください。それになにより、人を襲う魔獣ではありますがそれでも一つ一つが大切な命。無駄にすることなく誰かの血となり肉となるのなら、魔獣たちも浮かばれることでしょう」


そんなやり取りに、あっさりしびれを切らしたレンリッヒ。

「なあなあ、せっかくのサラの手料理、早く食べようぜ!」


まさか、これらは公爵令嬢の手料理なのですか?村人たちの間でどよめきが広がり、サラフィナはいたたまれない。

「もう、レン!こんなにたくさん、私一人で作れるわけないでしょ。ほとんどがうちの料理人たちに作ってもらったんだから!」


ということは、サラフィナ様が作られたものもあるということですね?それはありがたくいただかねば……、そう言って男性たちが長机の前に並ぶその奥で、女性たちが隠れるように立っていた。


「どうしたの?」

「あの……、私たちはただ家の中にじっと隠れていただけで何もお役に立てておりませんので……」

うつむき、もじもじとする女性の手をサラフィナが優しく握った。

「それはとても怖い思いをしましたね。でももう大丈夫ですよ。皆さんもおなかがすいたのではありませんか?たくさん用意しましたから、遠慮しないでいっぱい食べてくださいね」


そうしてようやく、ホルズ村に穏やかな空気が流れはじめた。数時間前までは全滅も覚悟していたのだ。きつく握りしめていた手がほどかれ、大人にも子供にも笑顔が広がる。

「これ、食べていいの?」

「おう!熱いから気をつけろよ」

無邪気に尋ねる子供にやさしくに答えるレンリッヒ。その様子をほっこりした気持ちでサラフィナは眺めていた。


「サラ、急がせて悪いけど、暗くなる前にボアを回収しよう」

「そうね、これを回収するのにどれほど時間がかかるのか想像もできないわ」

なんせ今日付与されたばかりの魔法なんだから、そういいながらサラフィナ達は行動を開始した。


村人たちや騎士団の面々も手伝い始めた。とはいえ200kgを超える巨体だ。数人がかりで少し動かせる程度である。それでもサラフィナが回収しやすいよう、みんなで協力してボアを集めていった。


サラフィナはそれを一頭ずつ収納に収めていく。持ち上げる必要はないとはいえ、一頭一頭に触れ、少し持つようにして収納にしまうのだ。血なまぐさいし、地味に腰にくる作業だ。今日18歳になったばかりだというのに今夜は腰痛かもしれない、などと年寄り臭いことを考えながら、無心に収納していくサラフィナだった。


「終わったー!!」まわりがだんだん暗くなってきたころ、ようやく最後の一頭を収納し、ミッション終了となった。

「サラ、疲れたでしょ。お水もらってくるね」

そう言ってレンリッヒが背を向けたほんの一瞬。


どーん!という激しい音がして、サラフィナが宙を舞った。

遅れてきた一頭が夕闇から突然姿を現し、サラフィナに突撃したのだ。

「サラ!!!」レンリッヒから血の気が引いていく。


そのまま地面にたたきつけられるサラフィナ。一頭でこの威力……、これが1500頭ってやばすぎでしょう。薄れゆく意識の中でぼんやりとそんなことを考えていた。

そして「あばら2、3本、やられたかも……」と。

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