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50.第三回合同家族会議

「これって冒険者にとってはとんでもなく便利な魔法よね」


公爵邸に移り、少し冷静さを取り戻した一行。

第三回合同家族会議の始まりである。


「だよな。森の中でも大きなテントを出してベッドでふかふかの布団で眠るとか。いつでもどこでも焼きたてパンやほかほかのごはんが取り出せるとかさ」

「私、基本的にほぼ屋敷にいるからいつでも焼きたてパンは食べられるし、毎晩ふかふかのベッドで眠ってるけど?この魔法、役に立つ?」

「いっそ、俺ら冒険者になろうか。俺の転移魔法と組み合わせたら最強じゃね?」

「魔獣は倒せないけどね」

あ、そうだった。


サラフィナとレンリッヒのピントがずれた会話に、リリアナが業を煮やして加わる。

「何のんきなことを言っているのよ。サラとレンリッヒ殿下が組んだら、それこそ貿易の概念が覆るわよ」

確かに、ひょいっと外国へ行き、市場にあるすべての商品を買い占めて収納し、またひょいっと自国に戻ってこられるのだ。何隻も船を連ね、何日もかけて海外に買い付けに行く意味はなくなってしまう。

「価格破壊は起こるし、貿易に携わる人は職を失うわね」


そんなことはサラフィナもレンリッヒも求めてはいない。

「流通の仕組みを変えてしまうようなことをするつもりはないわ、安心して」

魔法とは本来、自分や誰かを幸せにするために付与されるものだ。


「食料をサラの収納に備蓄しておいて飢饉のときに放出するとか?」

「不作への備えは国も各領主も十分行っております」

レンリッヒの意見に瞬殺でダメ出しをするアンドリュー。なんか俺への当たりだけ厳しいよな~と思うレンリッヒだった。


「あ、でもその考えは悪くないんじゃないかしら」

サラフィナがフォローに入った。

「豊作すぎて野菜や果物の収穫が多すぎる時、輸送できなくて農家は泣く泣く捨てていることがあるわよね。そういう余剰農産物を適正価格で買い取って、供給が減った時に適正価格で放出すればみんなハッピーではないかしら?備蓄しているとはいっても腐りやすい野菜は保存できないわけだし」


「ねえ、サラ」

皇后キャサリンが声をかけた。


「それはとても良い考えだけど、国民のことばかり考える必要はないのよ。あなたが授かった魔法は、あなたとその周りの人のささやかな幸せのために使うことが一番だわ。私なんて治癒魔法と言えば聞こえはいいけど、ちょっとした止血や痛み止めくらいしかできないのよ。ほとんど家族のためにしか使っていないわ」


確かにそうだ。ほとんどの人が家族のために火を灯したり水を出したりしている。あまりにも規模の大きな魔法が付与され、ちょっと焦っていたのかもしれない。


「あなたの好きなことに活かせばいいのよ。これからもいろいろな料理を作って出来立てで収納して、いつでもみんなで楽しみましょう、くらいでいいんじゃないかしら」

えーっと、あれ?「みんな」にはもれなく皇后様も入っていますね。

この人もやはりレンリッヒの母親だったと痛感するサラフィナであった。


「それはいい!」

「サラの収納にいつでも揚げたてのから揚げが……!」

キャサリンの言葉にノリノリで賛同するのは兄ティモシーとレンリッヒだ。

どうやら皇族及びヴォード家の食糧庫になることが決定らしい。解せぬ。


「だけどやっぱりいざという時には助けてほしいな。今年アサムーン国は雨が少なくて収穫が減ってるらしいんだ。魔獣もあまり出てこないから肉の流通も減ってるみたいだし。すでにグランヴィル帝国として援助の手は打っているけど、サラの収納力を貸してもらえたらすごく助かるよ」

めずらしくまじめな発言をするのは、アサムーン国からようやく帰国したばかりのルイポルトだった。アサムーン国、不作なのね……、ちょっと心配。


「まあまあ、サラの魔法は今日始まったばかりなんだから、ゆっくり考えればいいわ。今日はサラの誕生日と成人のお祝いなのよ。初めてのお酒、みんなで楽しみましょう!」

母レティシアが手をたたき、合同家族会議の終了を告げた。


「サラのために最高級のウィスキーを用意したのだ」

「ユアン、うちの娘をいきなり潰す気か。最初の酒は父である私が用意したワインに決まっておろう」

いつかと同じような会話がにぎやかに繰り広げられ、そのまま晩餐へと移ろうとしたその時。


「申し上げます!バラクラム領主より至急の応援要請あり!山間部にあるホルズ村にてスタンピード発生。レンリッヒ殿下の協力を仰ぎたいとのことです!」

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