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45.バカ殿との対面

アズマ国編、思ったより長くなってしまいました。もう少々お付き合いください。

夜の街道を数十騎の馬が駆けていく。

サラフィナはレンリッヒの馬に乗せてもらっていた。


「この後どうするの?現王を退位させてハヤトの親父さんを即位させる?」

ハヤトの隣を走りながらレンリッヒが尋ねた。


「いや、それはあり得ません。一度臣下に下ったものを再度王位に戻すのは混乱のもととなります」

「んじゃぁ、他の王族で使えそうなやつはいるの?」

「他に少しでもマシなのがいればとっくに王の首をすげ変えていますよ」

涼しげな顔をしてやばい発言を平然と放つハヤトだった。


「うーん、じゃあお飾りでも今の王にはいてもらう必要があるってことか」

「そういうことになります。ただし、ご病気などで当面表舞台に出てこられないことはあり得ますね」

「なるほど。んじゃ、しばらく病気療養してもらいますかねー、我がグランヴィル帝国の精鋭騎士団の寮あたりで」

「ぜひお願いしたいところです。ついでにヒステリー女も引き取っていただけるとありがたいです」



首都ヒガシノミヤ。

夜の街は静かだが、赤ちょうちんが灯り、にぎやかな声が漏れている店もあちこちにある。城内で起こっている政変など、庶民には関係のない話なのだ。


「ハヤト、レン、終わったらこの辺の店に飲みにこよーぜ」

ルイポルトの誘いに、気を張っているハヤトの肩の力が抜けていくのが分かった。

「まったく、ルイには敵いませんね。あなたといると何でもできてしまう気がしますよ」

「何でもはできねーけど、バジリスクやクラーケンに比べたら世間知らずの王様なんて怖いうちには入んないよな」



ほどなく一行は城の第一の門に到着。

そこには十数名の歩兵が立っており、到着したハヤトとその一行に向かって槍を構えた。


「お、お、恐れながらハヤト・フジワラ長官と、て、て、帝国の使節団と見受けられる。こ、こ、国王陛下の命により、この門を通すことはならず、ほ、ほ、捕縛せよとの通達がでております!」

…………。いや無理だろ?そのへっぴり腰で。しかも噛み噛みじゃん。


「おまえたちが敵う相手ではない。槍を下ろせ。無用な血を流すつもりはない」

ハヤトの言葉で一瞬ひるむ歩兵達。

「し、し、しかし、我々は命に代えても命令に従うのみ……」


「あのさ、アホな命令に命を懸けてまで従う必要ないよ。君たちには君たちの帰りを待っている大事な家族がいるんだろ?」

身分の高そうな異国の貴人に自国語で話しかけられて、歩兵達は戸惑いを隠せない。


レンリッヒの言葉にハヤトも続いた。

「おまえたちを後々咎めるようなことはしない。取り急ぎ、アホな為政者を懲らしめる必要があるのだ。おまえたちが怪我をせぬよう黙ってここを通してくれないか」

アホ、アホ、って…………。貴人と長官が連発する発言に茫然としたまま、構えた槍を下げる歩兵達。


「じゃあまたね!後で飲みに行くときにまたここ通るから」

ルイポルトが陽気に声をかける。その言葉を忠実に訳すレンリッヒ。更に呆然とする歩兵達であった。


第二の門も同様にすぐに通り抜ける。

第三の門にあたる城の正門では、複数の閣僚がハヤト達を待っていた。

「お待ちしておりました。この行動の速さはさすがでございますね。ご案内いたします」


ここで馬を降り、城内へと入ることになる。サラフィナもレンリッヒに手を握られ、一緒に城内へと入った。

「帝国の方々も一緒にご案内してよろしいので?」

閣僚の問いに、ハヤトはきっぱりと答える。

「この方たちは十分信頼に値する。少なくともうちのバカ殿よりは千倍頼りになる方々だ」

承知、と軽く頭を下げ、急ぎ足で奥へと歩を進める。


あれ?バカ殿には反応しない?これはどうやらいつも言ってる感じだなー、と思うレンリッヒとサラフィナであった。


そうしてたどり着いた奥宮。

一瞬のためらいもなく、ハヤトはふすまをどーん!と開け放った。


奥には若い女性を侍らすバカ殿、もとい現アズマ国王ノブハル・トヨカワがくつろいでいた。あれ?意外と若い。と言っても20代後半か。

「ハ、ハヤトではないか!何をしておる!皆の者、捕らえよー!!」


しかし壁際に控える従者たちはピクリとも動こうとしない。皆が一人の男性のほうをそっと見る。あの人がモチヅキ様かな?モチヅキ様らしき人がそっと首を横に振る。今は動くなということだろうか?


「そやつらがわが国の乗っ取りをたくらむグランヴィル帝国の者どもか。そのような少人数でのこのこやってくるとは愚かな。生きて帰れると思うなよ」

いや、従者たちが誰もあなたの命令に従っていないことに気づいていないの?


しかし残念なバカ殿は安定の残念っぷりを発揮する。部屋に入ってきた一行の中からすぐにサラフィナに目をとめた。

「ほおぉ。帝国の女はそのような衣装をまとっておるのか。下品ではあるが悪くない。その女、そこにひれ伏し、命乞いをせよ。そうすれば命だけは助けてやるし、奉仕次第では側室に加えてやるぞ」


「こいつ、俺の大事な……」

反論しかけたレンリッヒを、サラフィナが手で制した。

気のせいかまだ魔力を得ていなはずのサラフィナから炎が出ているように見える。

そのまま、つかつかとサラフィナは前に出た。

「だ、誰が近づくことを許可した。そこにひれ伏せと申しておる!」


バッシーン!


サラフィナの平手打ちがさく裂した瞬間だった。

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