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38.ようやく……

サロンに移動したのは皇帝皇后とレンリッヒ、ルイポルト、宰相アンドリューとサラフィナ。アズマ国側は団長のハヤトと副団長のギザブロー先生、そして通訳。


「レン、何か言いたいことがあるのであろう?話すがよい」

ユアンに促され、レンリッヒは覚悟を決めて言葉を発した。


「フジワラ殿、ナベシマ殿、遠路はるばる帝国へようこそ」

アズマ国語(日本語)での挨拶である。

「こちらはヴォード公爵家令嬢、サラフィナ。アズマ国の使節団に女性を代表して参加する予定だ」

「ヴォード公爵家サラフィナです。この度はお世話になります。よろしくお願いします」


参加者全員から驚きの声が上がった。帝国の人にはその内容は理解できないが、アズマ国語を話していることは分かる。

「レン!どこでアズマ国語を……?」

「サラまで!いつの間に?」


ハヤトとギザブロー先生は目が点になっている。人って驚くと本当に目が点になるのね、とどうでもいいことを考えるサラフィナだった。


「恐れながら、皇太子殿下とサラフィナ様はどこでアズマ国語を学ばれたのでしょうか?」

何とか冷静さを取り戻し、ハヤトが尋ねる。


サラフィナとレンリッヒは目を合わせる。ここまでくる間に打合せする時間なんてなかったわよ!レンリッヒの顔を見てノープランであることを悟ったサラフィナは、あきらめて話し始めた。「実は私たちも驚いているのです」


こういう時は真実を交えて話すのが一番だ、と前世の何かの本で読んだ気がする。

「私も、たぶんレンも、アズマ国の方とお会いするのもお話をするのも今日が初めてです。だからこそフジワラ長官が話し始めた時、私もレンも驚いたのです。お話されている内容が分かる!と。そしてまさかと思ったのですが、この通り教わってもいないのに話すこともできるのです」


震えながら話すサラフィナの隣にレンリッヒが座り直し、手を握る。そうじゃなくて、少しは助けなさいよ!とにらみたくなるサラフィナだった。

「あの……、気持ち悪いですよね?」


「我が娘が気持ち悪いなんてあるものか!たとえバジリスクに姿を変えたとしても目の中に入れても痛くないぞ」

ぶれないアンドリューの言葉にその場の空気が緩んでいくのを感じた。

でも、私はバジリスクはいやよ?


「皇太子殿下とサラフィナ様は大御神(おおみかみ)様に愛されたいとし子なのかもしれませぬな」

ギザブロー先生の言葉に、大御神(おおみかみ)様とは?と帝国側が問う。どうやら大御神様とはファイス神のアズマ国での呼び名らしい。神様に名前を付けるのは恐れ多いのだそうだ。


「アサムーン国に行った時も思ったけど、ファイス神様ってこの世界のすべての国に祝福を与えてるんだな。すごいな。俺なんてグランヴィル帝国一つで手に余ってるのに」

レンリッヒのつぶやきに、アンドリューも同意する。

「それを言うなら私はヴォード公爵領ですら父に押し付けている状況ですよ」


きっとこの瞬間、ファイス神様は天界でものすごいドヤ顔をしていることだろう。考えたくない。


「そのいとし子とはどのような人を指すのだ?帝国では聞いたことがないぞ」

皇帝の問いに先生が答える。

「詳しいことは分かっておりませんが、アズマ国では時々いとし子が現れると言い伝えられております。いとし子の能力は人により異なり、幼くして様々なものを発明したり、教わっていないことをそらんじたり、特別な祝福を受けていると言われています」


サラフィナとレンリッヒは目を合わせる。そうかー。アズマ国では過去にも転生者がいたんだな。どうやら帝国にはいなかったらしい。なんで私たちが?そっと首をかしげる二人だった。


「サラの作る料理も特別な祝福なのかしら?公爵令嬢として育ち、料理の経験なんてほとんどないはずなのに、サラはどんどん新しい料理を生み出すのよ。魔法みたいに」

皇后キャサリンが会話に加わってきた。

「そうそう、レンとサラはアズマ国の食材に興味があったわよね?聞いてみたら?使節団で持ってきていないか」


その言葉に、ハヤトは言いづらそうに言葉を返す。

「我々の保存食としていくらかは持ってきておりますが……、田舎料理です。洗練された帝国料理に慣れた皆様のお口には合わないかと……」


キター!!!ようやくキタわ!!!

前世の記憶が戻ってからちょうど一年。長かったー!のか?

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