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35.南国

ルイポルト達が滞在する領主別館の中庭に転移した二人。

南国特有のねっとりとした空気が体にまといつく。


グランヴィル帝国の夏も暑いが、からりとした気候で比較的過ごしやすい。

それに比べて、南の大陸は前世でいう東南アジアのような熱帯気候だ。


船で10日かけて移動する距離を一瞬で移動してしまうのだ。やっぱりこの魔力はずるいわ、と思うサラフィナだった。


「ルイ兄~、サラの作った春巻き持ってきた。揚げたてだよ~」

「おお!サラいらっしゃい!そのまま入って~」


側近たちと一緒にちょうど昼食をとっていたルイポルト。食べていたのはココナッツのきいたグリーンカレーだった。うん、まさに東南アジアだわ。

「サラにはちょっと刺激が強いかもしれないけどうまいぞ。食べてみるか?」

「ぜひ!辛いものは好きなんです」


サラフィナとレンリッヒはスパイシーなグリーンカレーの後、デザートに南国フルーツを楽しんだ。


「あ、そうだ。ルイ兄、宰相から伝言。アサムーン国の滞在、早めに切り上げて戻ってきてほしいって。アズマ国の使節団の訪問予定が正式に決まったそうだよ」

「そうか、決まったのか。で、いつだ?」

「アズマ国の首都ヒガシノミヤを3日後に出立するらしい。7日ほどで西の港イチノコウに到着して、そこから5日かけて船でカンティラ。で、カンティラから帝都まで馬車で5日だから、帝都に到着するのはだいたい20日後かな」


アズマ国の使節団は2週間ほど帝都に滞在した後、今度は帝国の使節団を連れて帰国することになっている。レンリッヒは帝国使節団の代表として正式にアズマ国を訪問することが決まっていた。ただ、外交の責任者としてルイポルトははずせない存在である。


また、この使節団にサラフィナを帯同させるよう現在画策中だ。皇太子のパートナーとしてではなく、皇族に次ぐ地位にある公爵家の息女として、帝国の女性を代表して参加する方向で調整している。宰相である父アンドリューを説得できるかどうかにかかっているが。


うーん、そうなると5日以内にアサムーン国を出立したほうがいいな、と唸るルイポルト。

「ティプナンの領主ヌラックとは飲み友達でさ。少なくとも10日はのんびり滞在して酒を酌み交わせると思っていたのに」

外交とはなんぞや?首をかしげるサラフィナとレンリッヒだった。


「今夜さっそくヌラックと飲むんだ。レンも参加するか?気持ちのいい男だぞ」

「え?俺は外交団に入っていないことになってるよね?」

「レンの魔力は必要に応じて伝えていいと言われてるし、実際もうかなりバレてるだろ?ヌラックとはこれからもいい付き合いをしていくことになるから、話しておいてもいいかと思うんだよね。サラも参加してみないか?」


サラフィナとレンリッヒは顔を見合わせた。

遅くなる前に帰ると兄と約束している。しかし好奇心には勝てない。どうする?


「この後、ティプナンの町へ買い物に行くよね?そのお土産を持って一度公爵邸に戻り、遅くなるって伝えてみようか」

「うーん、お兄様が許可するとは思えないから、執事のフィリップに伝言だけして戻ってきちゃうとか?」

「いいね、それ!」

作戦決定である。


午後、ルイポルトやその側近たちと一緒にティプナンの町へ繰り出した。


町を行き交う人は、バティック生地で作られた涼しげなシャツやパンツ、スカートをはいている。一方ルイポルト達はシンプルながらも帝国の服装だ。肌の色も南の大陸の人とは異なり、ぞろぞろと歩くと目立つ。しかし貿易港なだけあって異国の衣装を身にまとった人は他にもおり、町の人たちの反応は好意的だった。


サラフィナは左右に立ち並ぶお店をきょろきょろと見ながら落ち着きなく歩いていた。南国特有のスパイスやフルーツが並び、わくわくが止まらない。


「重くなるフルーツは最後だよ。先にこの国の布で織った洋服とかを見る?」

そう言って入ったお店には、草花や果物などカラフルな柄のワンピースやシャツ、パンツなどが所狭しと並んでいた。


「うわぁ、可愛い!しかも肌触りさらさら~。お風呂上りにこんなワンピースで過ごしたら気持ちよさそうだわ!」

テンション爆上がりで品定めを始めるサラフィナだったが、レンリッヒやルイポルトは入り口で立ったままである。

「え?レンは買わないの?ほら、このシャツとか可愛いじゃない」

「えーっと、そんな派手なの、どこで着ればいいんだろう?」


家の中なら派手でもいいじゃない、夏なんだから!というサラフィナに「夏なんだから、の意味が分からない」と首をひねる男性陣だった。


「ルイ兄様はリリーに買っていきますわよね?」

「いやぁ、リリーはこういうのを着るタイプじゃぁ……」

「タイプかどうかの問題じゃないんです!可愛いものは無条件に可愛いんです!」


サラフィナに押し切られる形でリリアナへのお土産を選ぶルイポルトだった。まあ実際はサラフィナが選んでいたのだが。サラフィナは家族全員分のワンピースやシャツを購入し満足顔だ。「宰相があの派手なシャツを着てる姿は想像したくないな」レンリッヒがぽつりとつぶやいた。


「よし!次はフルーツだね。バスケットを買って入るだけ買おうよ」

「大きなバスケットを二つ買いましょう!」

「持てるの?」「持ってみせるわ!」


買い物をしている間はルイポルトの側近たちが手伝ってくれる。転移の一瞬だけ持てればいいんだからなんとかなるわ、そう言って鼻息も荒く果物を買いあさるサラフィナだった。


マンゴーやパパイヤ、ドラゴンフルーツ、マンゴスチンまであるのね!あ、ドリアンはパス。

「帝国では流通していないフルーツがほとんどなのに、サラは詳しいね」

とルイポルトが驚いているが、お構いなしにどんどん買い続ける。


そろそろバスケットも一杯になる頃、後ろから突然話しかけられた。

「ルイ、そんなに果物を買ってどうするんだ?」

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