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31.悪役令嬢、登場?

せっかくの異世界転生なので悪役令嬢を登場させてみましたが、難しいです……。

レンリッヒとは2曲踊って終わりにした。なぜなら次が続いていたのだ。

父、兄、ハルバート、ルイポルト、そしてユアンまでサラフィナとのダンスを予約済みだった。ええぃ、めんどくさい!いつでも踊れるでしょう!


1時間近く踊り続けてさすがに疲れたサラフィナは、飲み物をもらってマーガレットと合流した。

「お疲れ様、目立ってたわよ」

「やめてよー」

サラフィナとしては親兄弟や近所のおじ様と踊った、くらいの感覚なのだ。


「そのドレスが殿下からのプレゼントね、素敵〜。そのネックレスとイヤリングは?」

「これは父と母からなの。皇后陛下と結託して、あらかじめドレスに合うものを選んでくれていたみたい」

「それって昨年発掘されて話題になったサファイヤよね?さすがヴォード公爵家」

「やっぱり?私もそうじゃないかと気づいていたけど、値段を想像するとくらくらするからあまり考えないようにしてるの」


リリアナはルイポルトと一緒に貴族の主要メンバーに捕まっている。その様子を見ながら、マーガレットがボソリとつぶやいた。

「来年はサラもあちら側ね」


「さあ……、来年の今頃はどうなっているのか、分からないわ」

「これだけ派手にパートナーアピールしておいて、それはないでしょう?」

「だってレンだから」

「うーん、確かに恋愛に関しては不安だらけね。誠実な方だと思うけど抜けているというかなんというか……。でも外野がしっかりしてるから大丈夫じゃない?」

あのー、マギーさん?外野って皇帝皇后のことかしら?



のんびりとおしゃべりを楽しんでいる二人に、ゴードン伯爵とその令嬢ブリジッタが近づいてきた。サラフィナとマーガレットは思わず目をあわせる。苦手なのよね〜、この親子。


「これはこれは、ヴォード公爵令嬢にウースター侯爵令嬢、ごきげんうるわしゅう」

「ゴードン伯爵、ブリジッタ様、ごきげんよう」

「お久しぶりですわね、ゴードン伯爵、ブリジッタ様」

顔を引きつらせながらも挨拶を返すサラフィナとマーガレット。


「サラフィナ様、マーガレット様、ごきげんよう」

ゴードン伯爵令嬢ブリジッタもそれに答えた。

「それにしてもサラフィナ様のドレスとネックレスは豪華ですわね。そのドレスは最高級のレインボーシルクでは?ネックレスは最近採取されて話題になったサファイアですよね。さすが公爵家、お金の使い方がすごいですわ!」

褒めているようでいてその実、落としているブリジッタに、伯爵もここぞとばかりに言葉をかぶせる。


「帝国トップクラスの公爵家といえど、そのように贅沢三昧する令嬢が皇太子殿下のパートナーとあれば、帝国の先行きに不安しかありませんな」


会場中に響き渡るような大きな声でわざとらしく肩をすくめるゴードン伯爵。

キタキタ~!

だからこの親子は苦手なのよ~。


少し離れた場所にいたレンリッヒがその言葉を聞き近づこうとするのを、サラフィナは目で制した。自分で何とかするから!


「レンリッヒ殿下から贈られたドレスをそのようにおっしゃるとは。しかもこれは皇后陛下も一緒に選んでいただいた逸品。伯爵のお言葉は皇族の皆様への発言ととらえてよろしいのかしら?」


サラフィナの言葉に、焦りを見せるゴードン伯爵。

「い、いや、皇太子殿下からの贈り物でしたか。道理で気品あふれるドレスだと思っておりました」

やーなーかんじー。


「そのネックレスは?まさかそちらも皇太子殿下からの贈り物とは言わないでしょうな。その品にいくらかかっているのか想像しただけでヴォード公爵領の領民の苦労がしのばれますな」


もう一度言おう、やーなーかんじ。


「我がヴォード公爵家では嗜好品に領民の税金を一切使っておりませんことよ。直営地や交易などの収益で賄っております。まさかゴードン伯爵家では領民の税金でドレスやアクセサリーを買っていらっしゃるのかしら?」


サラフィナからの的確な反撃に、ゴードン伯爵は旗色の悪さを感じ取っていた。

「そ、そういうわけでは……」


「それに数年ぶりに産出された最高級のサファイア。私共貴族が購入しなければ、発掘した鉱夫の皆様にお給料も支払えないのではありませんこと?適切にお金を使い経済を回す、これも貴族の使命と心得ておりますが、ゴードン伯爵はいかがお考えでしょうか?」


これは前世の記憶を取り戻してからずっと、サラフィナが自分に言い聞かせていた言葉だ。元庶民としてはこのような贅沢品はもったいない以外の何物でもない。しかし、高位貴族には芸術や文化、技術を守る義務がある。そのためにはその分野にお金を落とす必要があるのだ。


追い込まれた父親を助けるようにゴードン伯爵令嬢ブリジッタが答えた。

「まあ、ヴォード公爵令嬢は理屈っぽい方だったんですね。レンリッヒ殿下がおかわいそうだわ。きっと地位をかさに無理やりパートナーの座に収まったのでしょう。おいたわしい殿下」


ぷっちーん。なんだそれ。

「レンが可哀そうかどうかは他人のあなたが決めることではないわ」

ここは、ここだけは譲れない。


「レン、ですって?!恐れ多くも皇太子殿下を呼び捨てになさるなど、公爵令嬢としても、殿下のパートナーとしてもふさわしくありませんわ。ねえ、皆さまもそう思いませんこと?」


サラフィナとゴードン伯爵親子の会話に聞き耳を立てていた会場は静まり返った。

大半、いやほとんど全員が呆れているのだが、ゴードン伯爵親子だけは気づかない。

「謙虚でつつましい我が娘、ブリジッタこそ皇太子殿下のお相手にふさわしい、皆さまもそう思いませんか!」

両手を広げ、自分の言葉に酔いしれているゴードン伯爵。イタイ。


「そこまでにせよ」

皇帝ユアンの言葉が響いた。

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