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29.建国記念日

7月4日。グランヴィル帝国の建国記念日。

この日は国を挙げてのお祭りとなる。


街のいたるところに屋台が出て、大道芸が練り歩き、老いも若きも町へ繰り出す。

クライマックスは帝都で打ちあがる花火だ。

毎年、皇帝と大公によって提供される花火は、帝都民の一番の楽しみだった。


屋台にも行きたいし大道芸も見たいし花火も見たい!とわくわくするサラフィナだったが、ぐっと我慢である。

なぜなら、この日は夕方から皇城で舞踏会が開催されるのだ。

伯爵家以上が参加できる建国記念の舞踏会は皇室が開催する一大イベントであり、貴族の男女はこの日のために最高に着飾る。


去年のこの日はまだ前世の記憶を取り戻す前で、皇太子妃の最有力候補と言われるのが嫌で仕方がなかったのよね、と感慨にふけるサラフィナ。

レンリッヒには挨拶だけしたら、その後は逃げるように避けてたなー。


今年の自分はというと、誕生日に彼からプレゼントされたドレスを身にまとい、彼のエスコートで舞踏会に臨もうとしているのだ。人って変わるものよねー、としみじみしていた。


レンリッヒから贈られたドレスは、ジャイアントスパイダーという魔虫が紡ぎだしたレインボーシルク。虹色に輝く逸品である。希少価値の高い超高級品で、母のレティシアは持っているが自分にとっては初めての一着だった。レンリッヒに至っては名前も知らなかったし、違いも分からない。きれいだなーという程度だ(そりゃ家族は口を出すよね。トホホ)。


そして、夕方からの舞踏会なのに昼前から侍女たちに磨き上げられている。

自分で言うのもなんだけど、お肌は透き通る白さでぴちぴち、そんなに気合い入れて磨かなくてもいいでしょう、と思ったのだが侍女たちは手加減を知らない。ささやかな反論は軽くスルーされ、侍女たちが納得するまで手入れされるのだった。


最近はレンリッヒと転移で抜け出して街中を散策したり、厨房で料理の開発をしていたりと、およそ公爵令嬢らしくない生活を送っていたため、久しぶりに「ザ!異世界転生、令嬢物語」っぽい、などと考えるサラフィナだった。


しっかりと磨き上げられ、完璧に飾り付けられたサラフィナは、夕刻、家族とともに馬車で皇城に乗りつけた。しつこいようだが徒歩10分。馬車で行く意味が分からない。


他の参加者とは異なり、皇族専用のポーチで馬車を降りた公爵家一同をレンリッヒと皇帝皇后が迎えた。


「サラ!すごくきれいだよ、そのドレ」「まあ!サラ、素敵だわ!妖精が舞い降りたかと思ったわよ。さすが私が見立てただけあるわ!!」

……うん、まあ母さんが選んだんだけどね、実際。サラへの誉め言葉も皇后キャサリンに奪われたレンリッヒだった。



今年の建国記念舞踏会は、グランヴィル皇帝一族にとっても特別な意味を持っていた。


まず、カイザー大公妃ソフィーの参加。開宴から数十分だけの参加だが、病で臥せってから初めての参加であり、10年ぶりの公の場である。


そして皇太子レンリッヒと大公嫡男ルイポルトが、それぞれパートナーを連れて参加するのだ。皇太子のパートナーであるサラフィナは未成年のため正式な婚約発表はまだだが、今日この場でルイポルトの婚約が発表される。


グランヴィル家が安泰であることを国内外に知らしめる絶好の機会でもあるのだった。


えーっと、私はこのままなし崩し的に婚約者になるのかしら?ちゃんとプロポーズしてもらえるのかなぁ?と少し、いやかなり不安になるサラフィナだった。


それにしてもルイポルトとリリアナの交際から婚約発表までが早い。ハートフィールド侯爵令嬢という好物件に対して「逃がすものか」という帝国首脳陣の気合いが感じられる。

怖い。


舞踏会の始まりを告げる音楽が流れる。


ルイポルトとリリアナ、レンリッヒとサラフィナ、カイザー大公とソフィー大公妃、皇帝皇后両陛下の順に入場していく。久々に緊張マックスだわ、と冷や汗をかきながらレンリッヒにエスコートされて入場するサラフィナだった。


彼らに向けられる視線は十人十色である。

皇太子殿下よくやった!そのまま公爵令嬢を逃がすなよ!という視線は主に高位貴族から注がれる。対して伯爵家からは、一発逆転で皇后の座を狙っているのか、値踏みをするような厳しい視線が向けられている。


ううっ、がんばれ私。

サラフィナが自分を鼓舞し、そうして舞踏会は始まった。

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