28.サラフィナ17歳
「晩餐の準備が整っております」
ヴォード公爵家執事フィリップに促され、一同は晩餐会用の小ホールに移動した。
ホールにはすでにサラフィナ17歳を祝う豪華な料理が並んでいた。
豪華な料理……って言ってよいのかしら?餃子やシュウマイ、カレーコロッケなどが並んでいるんだけど……?
と、突然サラフィナは左腕をつかまれた。
「サラ、ちょっとこれ、どういうことよ?」
「家族だけの気楽な誕生日パーティーって聞いてたけど?なぜ皇族の皆様が勢ぞろいされているのかしら?」
マギー、ごめん、私も想定外だったのよ。慌ててマーガレットに謝るサラフィナ。
「聞いてないわよ!この国の最高峰の顔ぶれじゃないの!」
「ま、まあ、これにはふか-い訳が。でもないか、単なる成り行きだわ。でも今日は来てくれてありがとう。春からずっと領地にいたのに、わざわざ帝都まで来てくれて嬉しい!」
「サラの誕生日なんだから来るに決まってるわ。それよりどういうこと?レンリッヒ殿下は分かるけど、両陛下に大公殿下、ルイポルト殿下まで……。しかも、あれ?リリーがルイポルト殿下の隣にいるんだけど」
そう!そうなのよ!それに関する女子トークがしたかったの!
今日の誕生日にはレンリッヒに加えて、リリアナとマーガレットも招待していた。
そうなのだ。
それ以外のメンツは招待していないのだ。なぜここにいる。
レンリッヒと付き合う以上、これからもイベントのたびに皇帝皇后(と書いて陽気なおじさんおばさんと読む)の乱入は避けられないんだろうなー、とあきらめの境地に達するサラフィナだった。
「本日は我が娘の誕生日のためにお集まりいただき、感謝する。今宵はサラフィナが考案した料理の数々を用意させてもらった。ゆっくりとお楽しみいただきたい」
家長であるアンドリューの挨拶でパーティーは始まった。
「さすがに皇帝陛下の挨拶をいただかないのはまずいんじゃ?」
そうささやくティモシーに、アンドリューはバッサリと言い切った。
「そもそも招待してないし」
そしてそんなことを気にする皇帝ではない。
「去年食べたカレーライスやカレーパンもおいしいと思ったが、このカレーコロッケはまた絶妙だな。芋との相性が抜群だ」
「サラの魔法付与は1年後なのに、すでに素敵な魔法を付与されているみたいだわ」
皇后キャサリンもおいしそうにシュウマイを口にしていた。
色々な料理を堪能した後、ユアンがアンドリューとサラフィナのほうを向いた。
「サラが編み出したこれらの料理を、ヴォード公爵家としてはどうしていくつもりだ?」
「公爵家としてはサラを前面に出すつもりはない」
「まあ、アンディはそう言うと思っていたが、サラはどうなんだ?」
ユアンの問いかけにサラはうーん、と考えた。前世に読んだ小説だと、日本食の知識を生かしてお金儲けをしたり、領地を活性化させたりしていたよねー。でもヴォード公爵家にはありあまる資産があり、領地の活気も十分にある。この料理は何かの役に立つのかしら?
「この料理で幸せを感じてくれる人が一人でもいれば十分で、お金儲けをするつもりはないんです」
サラフィナの言葉に今度は兄ティモシーが反応した。
「さすが我が妹!と言いたいところだが、何もしないのは悪手だと思うな。うちの厨房には情報を漏らすような輩は雇っていないが、情報なんてものはどこでどう漏れるかわからないからね。赤の他人がサラの料理を勝手に特許登録したら、さすがに面白くない」
そうか、それもそうよね。
サラフィナも最近知ったばかりだが、この国では料理にも特許がある。普通の特許とは異なり、期間は3年と短いがその内容にっては大きな収入を得ることができる。
「じゃあ、特許料はとらないで自由に利用してもらっていい登録方法ってないのかしら?」
「あるぞ。“公認”にすればよい」
そう答えたのは、父アンドリュー。さすが、腐っても宰相。腐ってはいないが。
そうね、サラの料理が埋もれるのも他人に横取りされるのも悔しいから、公認っていうのはいいかも!私も賛成よ!と母レティシアも乗ってきた。
公認にすることでヴォード公爵家とサラフィナが得られるのは名声だけだ。名声すら必要ないが、悪用されないためには最低限必要なことのようだった。
前世の記憶があるだけで全く自分の功績ではない。が、レンリッヒが転移魔法によってその活躍の場を広げているのに、自分だけ置いて行かれている気がしていたサラフィナは、ほんのちょっと彼に追いつけた気がして嬉しくなったのだった。




