26. ルイとリリー
「よう!レン。起きたのか。サラがずいぶん心配してたぞ」
ルイポルトの言葉にサラフィナは真っ赤になってうつむいた。
うう、やっぱかわいいな、俺のカノジョ。レンリッヒがつぶやき、更に赤くなるサラフィナ。
「おかげで完全復活。ってかルイ兄、リリーとのこと聞いてないんだけど。なになに?二人は恋人同士なの?」
レンリッヒの直球ドストレートな質問に、今度はリリアナが赤くなってうつむく番だ。
おお!クールビューティーが恥じらう姿、萌える!とこぶしを握るサラフィナだった。
サラフィナとてリリアナからは何も聞かされておらず、今朝大急ぎで登城してきたリリアナを見て驚いたのだ。今度マーガレットと一緒にじっくり聞きださなければ。
「ま、それはあれだ。プライバシーにつきお答えできませんってやつだ」
「ずっりー。プライバシーってなんだよー。俺なんて今月のサラの誕生日プレゼントすら家族会議で決められてるのに」
「それはお前のセンスが壊滅的だからだろ?あの耳がやたらでかいネズミのぬいぐるみを選んだ時には、侍従長が泣いてたぞ」
それは俺たちにしかわからない世界なんだよ、と隣を見ると、頼みの綱であるサラフィナは冷たい目で見返してきた。
「レン、まさか……、いやいや、それはないわ」
どうやら彼女の琴線には触れなかったようだ。
とはいえ、外交を担うルイポルトと貿易に携わるリリアナの接点は想像にたやすい。
「最初は仕事だけの関係だったんだけどなー。レンの恋愛偏差値があまりにも低くてさ、リリーと心配してたらいつの間にか、ね」
そういって目を合わせ、ほほ笑むルイポルトとリリアナ。
きっかけは俺か!ちっともうれしくないぞ!と叫ぶレンリッヒだった。
「ねえ、リリー。今度詳しい話聞かせてね」
そう声をかけたサラフィナに、リリアナははにかんで答えた。
「私たちのことは聞かせられるような面白い話じゃないのよ、全然。でも……、今回はルイが無事で本当によかった……」
おお!すでにルイって呼んでいるのね。それが聞けただけでも今日は大収穫だわ!
「ところでルイ兄、ルイ兄も魔力切れを起こしたことあるの?」
魔力切れ自体、めったにない現象だろ?今回はサラにすげー心配かけちゃったからさ、とレンリッヒは頭をかいた。
そもそも魔力切れになるほど大きな魔法を使える人がほとんどいない。小さな火を出したり水を出すくらいでは、どれだけやっても魔力切れにはならないのだ。
レンリッヒの質問に何でもないようにルイポルトが答えた。
「俺はあるぞ、魔力切れ。もう何十回も」
ちょっと待て。何十回も?そのたびにこうやって倒れてるのか?
「魔力って正確に測る方法がないし、個人差が大きすぎてわかってないことも多いけど、魔力切れになるまで使うとその後魔力が増えるって言われてるんだ。レンも昨日より魔力は増えてると思うよ」
ルイポルトもその性質を利用して魔力切れになるまで雷魔法を打ちまくり、倒れては運ばれ、それを繰り返して今の魔力になったのだとか。
「俺はもう一日中雷打ちまくっても魔力切れは起こさないかもな」
だからレンもこれを繰り返せばどんなに転移をしても魔力切れ起こさなくなるよ、とルイポルトは説明した。
「まあ、見知らぬ場所で倒れられたら困るから、カイザー領やヴォード公爵領をひたすら往復して訓練してみたら?」
「俺が限度なく転移できたら、災害などの有事の際にはとてつもない力になるよね。国のためにも訓練はしておくべきだな」
おお!レンリッヒが珍しく皇太子らしい発言をしているぞ。
「でも、どうせ倒れるならサラのそばがいいからヴォード公爵領がいいなー」あらら。
やっぱり残念なレンリッヒにサラフィナは冷たく言った。
「眠れば大丈夫って分かった以上、もう看病しないわよ?」
あ、やっぱり?
「ま、まあ、ご飯くらいは用意してあげてもいいけど」
サラフィナのツンデレがかわいい。
レンリッヒが再びルイポルトに向き直った。
「それともう一つルイ兄に頼みがあって……。国外への外交に俺も同行させてほしい」
「それは……、さすがに難しいな。レンに何かあったら、俺なんかの比じゃなくやばいことになる」
いやいや、本来ならルイ兄もそんな自由な身分じゃないからね?
レンリッヒだって分かっている。国内の視察でも自分が移動する度に、どれだけ多くの人が準備を重ね、下見をし、その当日を迎えているか。国外ともなるとどれほど大騒ぎとなるのか。
それでも自分が転移できるのは、過去に一度でも行ったことのある場所だけなのだ。
まだ国外に出たことがないレンリッヒが行ける場所は、今のところ国内だけ。
外交先でルイポルトの身に何かあっても、今回のように駆けつけることはできない。
「いざという時のことを考えたら、転移できる先は少しでも増やしておきたい」
「分かるよ、分かるけどさー。まあ、これはユアン叔父さんや親父たちと相談だな」




