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24.レンリッヒ、無双

皇城とは馬で2日以上離れた距離だ。そんな場所への連絡に何の意味があるのだろうか。

もしかして、遺言を残すため?


目の前で主を失う恐怖に駆られ、通信魔法を操る騎士は震えながら、それでも主の言葉に忠実に従い連絡を入れた。

「こちらサラーラ外交団。至急皇太子殿下に連絡を。ルイポルト殿下及び騎士2名がバジリスクの毒を浴びた。解毒剤なし」


その通信はすぐにレンリッヒに繋げられた。

「場所はどこ?正確に教えて!」


場所を聞いてレンリッヒはほっとした。よかった。以前通ったことのある街道だ。

「すぐ行く!」

すかさずマークが声をかけた。

「殿下、医務室に直接お戻り下さい。解毒剤を用意してスタンバイしておきます」


了解!そう言葉を残して、そのままレンリッヒは転移した。

さすがにピンポイントで場所は伝わらない。ちょっとずれたようだ。

もう少し先へ再び転移する。

その先に声が聞こえた、あそこだ!


突然現れた皇太子に側近達は唖然としている。連絡を入れてから3分と経っていない。しかし説明している暇はないのだ、許せ!

「とりあえずルイ兄連れてくよ!」


次の瞬間、視界が皇城の医務室に変わる。医療班がすでに待機していた。

「わりぃ、レン……。あと二人、毒を食らってる」

ルイポルトが毒にうめきながら伝えた。

「任せろ!ルイ兄を頼んだ!」


街道ではルイポルトの側近たちが、2分と間をあけずに戻ってきた皇太子に対して確信を深めていた。この方はファイス神様からの特別なギフトを授かったのだと。

「ほかに毒を受けちゃった人は誰?」


騎士二人を順番に皇城医務室へ連れて帰ると、その頃にはルイポルトの解毒が無事に終わっていた。医療班に後の二人も預け、レンリッヒは大きく息を吐いた。

「間に合った……」


解毒剤を施し治療にバタバタと走り回る医療班を見ながら、レンリッヒは達成感に浸っていた。今回俺、結構役に立ったんじゃね?


その隣で薬剤師チームがざわざわと騒ぎ出す。

「今のが最後か?」

「はい、今回はギリギリ間に合いましたが、次現れたらもう……」


どうしたんだろう?そうレンリッヒが考えていると、先にルイポルトが問いかけた。

「何があった?」

「バジリスクの解毒剤の在庫がつきました」

「新たな解毒剤は作れないのか?」

「作るには特殊な材料……、新鮮なバジリスクの血が必要でして」


あるね、新鮮なバジリスクの血。あるにはあるけど、馬で片道2日以上、往復4日以上、それじゃあ新鮮じゃなくなっちゃうね。


「皇太子殿下、非常に申し上げにくいのですが……」

「行こう!」

「よいのですか?」

「むしろこちらからお願いしたくらいだよ、俺には解毒剤は作れないから」


自分にできることは瞬時に送り届けることだけだ。その先に薬がなければ助かる命も助からない。解毒剤があることの安心感を改めて思い知らされたばかりだ。


「殿下に送っていただくなど心苦しいことです」

そういいながら薬剤師はガラス瓶を並べた木箱をすでに抱えていた。行く気満々じゃん!

しかも3名。おい、おい~。


ファイス神様、一度に3名くらい転移できる魔力が欲しかったです。一人ずつ往復するのって地味に大変なんだよ~。


一人目の薬剤師を連れて現場に戻ると、残っていた騎士たちが近くの町に連絡を入れ、後処理をしているところだった。

「ルイポルト殿下はご無事ですか??」

不安を押し殺して処理にあたっていたのだろう。騎士の一人が緊迫した表情で問いかけた。


「心配かけてごめん。ルイ兄もあとの二人も、解毒が間に合って無事だよ」

うおぉぉぉ!!歓声とともにその場が明るい空気に包まれた。


「でも解毒剤の在庫が尽きてね。新しい薬を作るために新鮮なバジリスクの血を採取しに来たんだ。あと二人連れてくる!」

そう言って皇城に戻り、残りの2名の薬剤師も連れてきた。


3名の薬剤師が血の採取を行っている間、レンリッヒは地面に座り込んでその様子を見ていた。


「殿下、この度は我が主と同胞をお救いいただき、誠にありがとうございました」

「俺にできるのはただ連れていくことだけだから。でも間に合ってよかった……。これから残りのみんなはどうするの?」

「我々はこの後、バジリスクの残りの素材収集を依頼して、殿下たちの馬を世話しながら帝都に戻ります。皇太子殿下は先にお戻りください」

「分かった。もうバジリスクはさすがに出ないと思うけど、気を付けてね」


1時間ほどして、採取を終えた薬剤師たちが重い木箱を抱えて戻ってきた。

「重ね重ね申し訳ありません。新鮮なうちに製薬作業に入りたいと思います」

「うん、一人ずつ順番に送るよ。つかまって」


そうして3名を皇城に送り届けると、医務室は新たな活気に包まれた。

「おおっ!こんなにたくさんの血が!これで十分な解毒剤が作れるぞ!」

「各拠点に配備するだけでなく、ルイポルト殿下にも常備してもらえますね!」


薬剤師チームの声を遠くに聞きながら、レンリッヒはルイポルトが横になっているベッドまでフラフラとやってきた。

「調子どう?ルイ兄が倒したバジリスク見たよ。やっぱルイ兄の魔法、すげーや。俺は運ぶしかできないし」

「いや、レンがいなかったら俺死んでたから。マジで助かった。レン、お前こそ大丈夫か?」

「うん。でも、ちょっと……、疲れたね」


ぱたり。

ルイポルトのベッドの上に倒れこんだレンリッヒ。

さすがに魔力を使いすぎた。

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