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20.気持ちを伝えよう

パーティーの後3日ほど皇城に滞在したソフィーは、レンリッヒに送ってもらいカイザー城に戻った。

ハルバートは来た時と同じように従者達を連れて馬車で時間をかけて帰る。皇族が集団で移動し途中の街にお金を落とすことは、この国の経済に必要なことなのだ。


「サラを連れていつでも遊びにいらっしゃい。待っているわ」

そうソフィーがレンリッヒに声をかけた。

サラフィナを連れていきたいところはいろいろあるが、カイザー城もその一つだ。

特に雪のカイザー城は幻想的だと聞いているが、雪の中を皇太子ご一行が馬車を連ねて移動するのは大変なため、レンリッヒも雪のカイザー城はまだ見たことがない。

「雪が降ったらサラと一緒にまた来るね!」



そのころ、サラフィナは帝都公爵邸の料理長と試作を重ねていた。

目指すは日本式のカレーライスだ。


前世の両親は料理好きで、週末には姉と自分も手伝い、本格的な料理を作ってはちょっとしたパーティーを楽しんでいた。餃子だけでなくシュウマイや肉まんもお手製の飲茶パーティーだったり、スパイスから仕込んだカレーライスだったり。


前世の家族を思い出し、サラフィナの胸がチクリと痛んだ。仲の良い家族だった。

私がいなくなった後も笑って過ごしてくれているといいな、と心から願う。

そしてなぜだか無性にレンリッヒに会いたいと思った。


前世の料理経験が今に生きているのだが、なにぶん子供だったから記憶もあいまいだ。

おぼろげな記憶をたどりながら、なんとかカレーライスは形になりつつあった。



その日。

レンリッヒはヴォード公爵邸の中庭に転移でやってきた。


「馬車できちんと正面から訪問すべきだ」と周りはうるさかったがスルーした。

結局転移は、サラフィナとの10分だけのカンティラ旅行とソフィーの送り迎えにしか使っていないのだ。使いたくもなるよ!


「メリークリスマス、サラ!」

「メリークリスマス、レン!」

周りにいた公爵家の使用人達は何の暗号かと首をかしげている。


レンリッヒが案内されたのは、暖炉の火がぱちぱちとはじける暖かい部屋。

ソファーに二人は隣り合って座った。

アンドリューが見ていたら「近すぎだろう!」と割って入りそうだが、レティシアの指示で人払いされており、この場には二人だけだ。

お茶とケーキと軽食をサーブすると侍女も退出した。


紅茶を一口飲んで気持ちを落ち着けると、レンリッヒはサラフィナに向き直って小さな箱を手渡した。サラフィナもレンリッヒに小さな包みを渡す。

「開けていい?」

「私も、開けていい?」


サラフィナからはマーブル模様が美しい万年筆。

「ありがとう!すごく持ちやすいね、これ。大切にするよ」

「いいの、気軽に普段使いにしてくれたほうが嬉しい」


レンリッヒからは細い金のチェーンに小さなピンクダイヤモンドがついたシンプルなネックレス。

「まあ、可愛い!毎日身に着けるわ!ありがとう」

サラフィナの言葉に、ほっと息を吐くレンリッヒだった。よかった~。


そんな様子を見てサラフィナはクスリと笑った。

「レンが選んでくれたの?」

「一応自分で選んだんだけどね、両親とルイ兄と侍従長、侍女長、みんなのチェックが入った」

苦笑いで答えるレンリッヒ。信用されてないなー、俺、と頭をかいている。


ニコニコと笑っているサラフィナを見て、レンリッヒは首を傾げた。

「サラ、なんかあった?」

少し意外だった。こういうことには鈍感な人だと思っていたから。

「何かあったわけじゃないんだけど。カレーライス作ってたら前世の家族を思い出しちゃって、ちょっと……ね」


「そっか、うん…………。そうだ、ネックレス、つけてあげるね」

そう言ってレンリッヒは立ち上がり、サラフィナの背後に回った。

ネックレスをつけやすいようサラフィナが髪をかき上げると、細いうなじが現れてレンリッヒはドキリとする。そっとネックレスを付け、後ろから覗き込んだ。

「どう?かわいい?」

「うん、似合ってる」


そのまま背後からそっと抱き寄せた。

「俺がいるよ」


「うん。私ね、今幸せなの。死んじゃったのは残念だけど、こんなわくわくする世界に転生できて、優しい家族や友人に恵まれて、レンもいてくれて。でも残された家族は辛いよね」


「それは俺も同じだよ。親不孝しちゃった。でもどの世界でも悲しい別れは避けて通れないよ。その時、隣に誰かいてくれるだけで乗り越えられることもあるかなって思う。サラの前世の家族も悲しい中で幸せを見つけていると信じよう」


そう言って前にまわり、サラフィナの手を取った。

「だからさ、サラ。ずっと俺の隣にいてくれないかな?お、俺、サラのことが、す、す、すきでしゅ………」

噛んだぁ!最後の最後が決まらないレンリッヒ。


突然の告白に目を丸くしながらも、サラフィナはクスクスと笑った。

「ありがとう、レン。私も。私もレンのことが好き……、だと思う………」

最後は小声になってしまった。今のところお互いこれが精いっぱいだが、大きな前進だ。


「やったぁ!」

そういってサラフィナを抱きしめたレンリッヒ。

「そうと決まれば、カレーライスだ!」

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