19.誕生日パーティー
ソフィーを迎え、久しぶりに親族が揃った皇城には笑い声が満ちていた。主賓であるはずのレンリッヒが若干運び屋状態となっていたが、本人も楽しそうなので問題なし。
久しぶりに遠出をした(一瞬の移動だったが)妻ソフィーを気遣い、ハルバートは無駄に世話を焼いていた。厨房まで自ら出向き、「体に優しいものを」と注文を付けたくらいだ。
皇城厨房メンバーズ、健闘を祈る。今度お土産でも買ってこようとひそかに誓ったレンリッヒだった。
そうして迎えるパーティー直前。サロンでは白熱した議論が繰り広げられていた。
「最初の酒は最高級のウィスキーだろう。本物から入るべきだ」
ユアンの言葉にキャサリンが反論する。
「最初からウィスキーは飛ばしすぎよ。まずはワインが定番だと思うわ」
「いやいや「とりあえずビール!」まずはこの言葉から入るんじゃね?」日本人の記憶を持っていないはずのルイポルトが参戦する。
この国で18歳は魔法付与と同時にお酒解禁の年齢でもある。
「いいなぁ」その様子をサラフィナはうらやましそうに見ていた。
20歳で他界した前世だが、お酒を飲んだ記憶はほぼない。押し活が忙しすぎたのだ。
「サラの18歳、楽しみだね。絶対一緒に過ごそうね」
「うん!」
しつこいようだがこの二人、いまだお互いに「好き」という言葉すら言っていない関係だ。
その後の誕生日の晩餐は、皇城厨房メンバーズの涙なくしては語れない努力の甲斐があり、華やかでおいしい料理が並んだ。
「ソフィー、無理するなよ。食べられそうか?」
「ハルったら、いつもこうなのよ、心配性なんだから。でもすごいわね。急に来た私のために、体に優しくて見た目も美しいこんな料理を用意してくれるなんて。さすが皇城料理人ね」
その言葉を裏方で聞き、感涙に咽ぶ皇城厨房メンバーズ。
「今日は主賓なんだから、誕生日ケーキは食べるでしょ?レン」
「主賓だからこそ、特別にハムとソーセージのケーキ風を用意してもらった」
相変わらず食べ物の話しかしていないサラフィナとレンリッヒ。そもそもそれをケーキと呼ぶのか。
「レンの付与魔法がみんなを幸せにする魔法でよかったわね、まさかこの場にソフィーがいるなんて。奇跡だわ」
「自分の食欲のためだけに活用しないことを祈るしかないがな」
一人息子の成人をしみじみとかみしめる皇帝皇后両陛下。
「もう!あなたったら、せっかくのお祝いにそんな苦虫かみつぶした顔しないの!」
「だって、だって。サラは大きくなったらパパのお嫁さんになるって言ってたんだぞぉぉ!」
無駄に落ち込むアンドリューと慰めるレティシア。
あれ?もしかして俺だけ一人……?今頃気づくルイポルトだった。哀れなり。
そうして、パーティーも終盤に差し掛かった頃。
「サラ、来週12月24日、あけておいてくれる?」
「あ!そうか、そうよね。うん、大丈夫」
若い二人の会話に、首をかしげる一同。12月24日って何の日?
レンリッヒとサラフィナにとっては、お互いさえ理解していればいいのだ。今度こそリベンジ!そう誓うレンリッヒだった。
「もしよかったらその日はうちに来て!それまでにカレーライスを完成させるわ」
「やったー!って、あれ?もしかしてカレーライスがプレゼント?」
「まさか。さすがにもう、そんなイジワルしないわ。プレゼントはまだ決めてないけど」
おい、レンも何かプレゼントするのか?よし、今度は俺がアドバイスしてやろう。
そう口を出すルイポルトに不信な目を向けるレンリッヒ。
「彼女いないルイ兄にアドバイスもらってもなー」
「お前、調子に乗りすぎだぞ!」
和やかな会話が交わされる横で侍従長とマークだけは、レンリッヒが選ぶであろうプレゼントを想像し、本気で心配するのだった。




