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18. カイザー大公妃

アンドリューと侍従長にこってり叱られた二人。

しかし叱られている間もずっと、二人の手は握られたままだった。

その様子を見て大きなため息をつくアンドリュー。ああ、私のかわいいサラが、どこの馬の骨ともわからぬ男に!!(いやいや、馬の骨って。この国の皇太子ですよ?)


「とにかく、次からはそんな目立つ服装じゃなくてちゃんと町民の服装にすること。それと暖かくして出かけなさい。そんな恰好じゃ風邪ひくでしょう」

冷静なレティシアの指摘に黙ってうなずくしかないサラフィナとレンリッヒだった。


次からは行先を事前に報告して、先方に連絡して、警備体制を固めてから、とぶつぶつ言っている侍従長は完全スルーである。それじゃ転移の意味ないし!


「それじゃ、ソフィー叔母さんを迎えに行くね!」

「ちょっと待て、どこに転移するつもりだ」

ハルバートの問いかけに、さも当然のように答えるレンリッヒ。

「どこって、カイザー城の中庭のつもりだけど?建物内には自宅以外、転移できないから」


カイザー城とは、大公一家が暮らす城だ。

城に連絡するから待て、突然お前が現れたら警備は大混乱だぞ、とハルバートが引き留め、その意見に誰もが同意する。


「回数制限ないんだったら俺を連れていってよ。おふくろには俺から説明したほうがいいだろ?いきなりレンが現れたらおふくろびっくりするよ」

ノリノリでルイポルトが提案してくるが、ルイポルトが突然現れても驚かれること間違いなし。ただ単に自分も転移してみたいだけでないだろうか?


取り急ぎ通信魔法にて、ルイポルトとレンリッヒがそちらに行くことだけ告げられる。

通信を受け取ったカイザー城の担当者は「???」だらけだったことだろう。


「じゃ、ルイ兄、行こう!」


次の瞬間、カイザー城の中庭にいた。

「すっげー、ほんとに一瞬だ。カイザー城だ。やっぱずりーな、この能力」

ルイポルトが隣でつぶやいている。

「その代わり魔獣に襲われても逃げるだけだよ。ルイ兄みたいに倒せないし。雷一撃で倒すルイ兄は男の俺から見てもかっこいいもん」

「まあ、魔法は一人一つだからね。だいたいみんな他人がうらやましいもんだ」

「だね!」


そう言いながら城の中に入っていく二人。

伝達がいきわたっていない城内では、使用人たちが突然現れたこの城の主とこの国の皇太子に仰天しつつも、ギリギリ冷静を保っていた。

「お、お、お帰りなさいませ」


カイザー大公妃ソフィーは暖かい部屋でゆっくりくつろいでいた。

「あら、ルイ、お帰りなさい。レン、久しぶりね。大きくなったこと。今日はお誕生日おめでとう」

伝達は来ていたものの、二人が突然現れた理由も手段もわからないソフィーだが、努めて冷静に話かけた。


「おふくろ、今夜のレンの誕生日パーティー、今から一緒に行こう!」

……ルイポルトよ、それは説明というのか?

「ルイ兄、ちゃんと説明しようよ」


そうしてソフィーに、レンリッヒが授かった魔法の説明をする。

「まあ、そんな素敵な力が?私が皇城まで行くのは無理だと思っていたのに。レンの魔法は周りの人を幸せにする魔法ね」

周りを幸せにする魔法かぁ。この魔法は自分を自由にしてくれる魔法だと思っていたけど、そんな風に思ってくれる人もいるんだな、とレンリッヒは心が温かくなるのを感じた。


「疲れたらいつでも送り届けるし、そのまましばらく皇城に滞在してくれたら母はきっと喜ぶし」

「私もキャシーに会いたいわ。せっかくだから連れて行ってもらおうかしら?」


そんな短い会話の間に、ソフィー付きの侍女は彼女の身の回りの荷物をまとめていた。優秀すぎるぞ!

「足りないものがあったらいつでも俺が取りに来るから」とフットワーク軽すぎな発言をする皇太子。


「じゃあ行くよ、叔母さん、つかまって」


その直後。

「ソフィー!久しぶり!会えて本当に嬉しいわ!顔色もすごくいいじゃない?」

「ソフィー、大丈夫か?体に負担はないか?」

にぎやかな声に包まれた皇城サロン。その中心にはソフィー。

みんな笑顔にあふれている。目を細めてその様子を見ていたレンリッヒは立ち上がった。


「んじゃ俺、ルイ兄、迎えに行ってくるわ」

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