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16.合同家族会議

その日の午後。

急きょ皇城に呼ばれたヴォード公爵夫妻。

何事かと駆け付けたアンドリューとレティシアは、サロンでくつろぐ皇帝一家と愛娘を見てほっと胸をなでおろした。悪い知らせではないらしい。

侍従長の顔色が幾分悪いように見えるが……。


「両陛下、レンリッヒ殿下、本日はおめでとうございます。無事に魔法付与式を終えられたことと推察いたします」

アンドリューが挨拶する。

「うむ、その件で話があってな。まあ、まずは座ってくれ」


サロンにいるのは皇帝夫妻、カイザー大公とその嫡男ルイポルト、レンリッヒとサラフィナ。

わきに控えているのは侍従長とマークのみ。それ以外は人払いされている。


「ここにはこのメンバーしかおらん。堅苦しいのは抜きにして、気軽に話をしよう」

皇帝ユアンの言葉にアンドリューが続いた。

「よろしいのですか?ではお言葉に甘えて……、サラは嫁にはやらんぞ?」

「いきなり本音すぎやしないか?」

「おまえが気軽にと言ったのではないか」


皇帝と宰相、他人の目があるところではお互いに威厳を保っている。

その反動で二人だけの時は気軽な関係である。そして毎度「サラはやらん」という会話になってしまうのだった。


「あなた、今日はその話ではないでしょう?殿下に付与された魔法の話ではなくて?」

レティシアがたしなめる。

「どのような魔法が付与されたのかお話いただけるのかしら」

「その件なのだが……」


皇帝から説明されたレンリッヒの魔法に、驚きを隠せないヴォード公爵夫妻。

「そのような魔法、初めて聞きましたわ」

「そ、それは、つまり……、サラを連れ出し放題ということじゃないか!!」

ここに至り、なぜ緊急に呼び出されたかを理解した二人だった。

そして侍従長の顔色が悪かった理由も……。


「改めて尋ねる。殿下は与えられたこの魔法をどのように利用するつもりかな?」

アンドリューの厳しい視線がレンリッヒに突き刺さる。

うわぁ、これってほぼ面接じゃねーか、と手に汗握るレンリッヒだった。


「この魔法を付与されてからまだ数時間しかたっていないため、心の整理もまだついていません。有事の際にはとてつもない力を発揮するものだとは理解しています。ただ……」

慎重に言葉を選びながら、正直な気持ちを伝えようとレンリッヒは思った。

「この力は国のため、国民のためだけでなく、やはり自分や家族、そしてサラのために使いたいと思っています」


要は「サラを連れて好き勝手転移するぞ」宣言をしたようなものである。

「あっら~、レンも言うようになったねー」ルイポルトが感心したように笑っている。


「サラ、あなたはどうしたいの?」

直球で質問してくる母の目をサラフィナは逃げることなく見つめ返した。

「私は、私は……、レンと一緒に色々な世界や景色が見られたら素敵だなって、そう思う」

その言葉に天を仰ぎ、両手でガッツポーズをするレンリッヒ。

いやいや、この二人、まだどちらもお互いに「好き」という言葉すら言ってないからね?


ふぅぅっ。アンドリューが大きく息を吐いた。

「殿下がこのような力を持った以上、我々がどれほど反対しようとも自由を求める気持ちは止められないでしょう。だからこそ、一つだけ約束してほしい」

レンリッヒも真剣な目で見返す。

「どこに行こうとも、そして殿下の命に代えても、娘のことを守っていただきたい」

「もとよりその覚悟です。サラのことは何があっても守ります」

おお!今回はビシッと決めたレンリッヒだった。


「ま、いざとなればサラを連れて皇城に転移して戻ってくればいいんだから余裕じゃね?」

ルイポルトよ、それを言っては元も子もないぞ。


「ところでアンドリュー殿、このような私的な場では俺のことを「殿下」ではなく「レン」と呼んでいただきたいのですが」

そういうレンリッヒの言葉に、アンドリューはものすごーく嫌そうな顔をした。

「サラとのことを認めたわけじゃないし、ヤダね」

アンドリュー・ヴォード公爵48歳。やはりお子ちゃまであった。

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