13.魔法付与式
「俺の魔法付与式にサラにも出席してほしい」
18歳の誕生日、正午きっかりに魔法は付与される。
だから18歳の誕生日は特別だ。親族も集まって教会に行き、魔法付与を見守るのだ。
付与される魔法は皇族も平民も平等に、一つだけ。
それがどのような魔法であってもそれぞれが特別であり、周りのみんなから祝福され、ファイス神に感謝を捧げる。
もちろん教会に行かなくても魔法は付与される。自分の誕生日を知らない孤児が町の食堂でお昼ご飯を食べている最中に突然身体が光り、魔法が付与されたなんてこともある。
そんな時は食堂が突如セレモニー会場と化し、居合わせたみんなから祝福されるのだ。
とはいえ、通常の魔法付与式には誰でも参列できるわけではない。
付与魔法によっては秘匿する必要もあるため、参列者は基本的に身内に限定される。
ユアンの魔法も秘匿されていた。そりゃそうだ。「この人嘘が見抜けるんです」とバレているよりバレていないほうが効果は高い。
そんな魔法付与式への出席を請われ、サラフィナは迷っていた。
「ここに参列するということは、私も覚悟を決めなければいけないということかしら?」
覚悟?何の覚悟?
将来皇太子妃ひいては皇后となり、この国を、皇帝を支えていく覚悟?
それとも自分の目の前で他の令嬢に宝石を贈るデリカシーのない人と一生を添い遂げる覚悟?
そう考えて、サラフィナは笑ってしまった。
男女の機微に疎いのは自分も大して変わらない。
今回レンリッヒは「サラと仲良くしてくれてありがとう」という意味を込めて彼女たちにプレゼントしたのだ。その気持ち自体は嬉しい。その中身は、まあ、あれだったけど。
あの後、レンリッヒからはすぐに謝罪の手紙が届いていた。
「リベンジさせて!」その内容は切実だった。
ふうぅぅ、どうしようかな。
迷ったときは母と義姉に相談しよう。こういう時に父と兄は使えない。
「じゃあサラちゃんは自分の気持ちに迷いがあるのね?」
クリスティーヌの優しい言葉に、素直な気持ちになれるから不思議だ。
「そうなのかな?自分でもわからないの。レンにドキッとするときもあるし、すっごくお子ちゃまに見えるときもあって……」
サラフィナの答えを聞いてクリスティーヌはけらけらと笑った。
「ティムなんて26歳になってもまだお子ちゃまよ」
「あら、それならアンディは公爵閣下で国の宰相まで務めているのに、いまだにお子ちゃまよ」
レティシアも手厳しい。だけど夫に対する妻の評価とはそんなものなのかもしれない。
確かにあの二人はサラフィナから見てもお子ちゃまな時がある……。
「サラちゃん、自分の気持ちを確かめる簡単な方法があるわ。ちょっと目を瞑って」
クリスティーヌに言われるがまま目を閉じるサラフィナ。
「想像してみて。殿下が別の女性、例えばリリアナ様に手を差し出し、二人は手をつないで見つめあっている。彼はサラちゃんには見せたことがないような笑顔でリリアナ様を見つめていて……」
「絶対やだっ!」
ふふふっ、答えは出たようね。クリスティーヌとレティシアが目を合わせて笑った。
「でもレンは?レンは私のこと、本当はどう思っているんだろう。婚約者候補が少ない中で、ノーチョイスだっただけなんじゃ……」
「殿下からは、好きだと言ってもらってるんでしょ?手紙も頻繁にやり取りしてたし」
そう尋ねる母にサラフィナは首を振った。
「レンからは好きだって言ってもらったこと一度もないかも。手紙でも……」
サラフィナの言葉に母と義姉の背後から炎が燃え上がる気がした。
「あんの男~、一度きっちり説教かましましょうか!」
「お母様!全力で協力します!」
そう息巻いているが、その娘(義妹)も彼に好きだと伝えたことは一度もないけど?
その後、サラフィナがレンリッヒの魔法付与式に参列すると聞いたアンドリューとティモシーが「あんなデリカシーのない男にサラはやらん!」「全力で同意!」と騒いでいたが、そういう二人は互いの妻からお子ちゃま認定されているのだった。




