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12.叔父と従兄

その後のことはあまり記憶にない。せっかくのサラフィナの手料理も、ほとんど味がしなかった。立ち直ったサラフィナが話しかけようとしてくれたが、リリアナとマーガレットがかばうようにがっちりガードしており、ほとんど話もできなかった。


フラフラと皇城へ帰ったレンリッヒを待っていたのは土下座リターンズ。


土下座するレンリッヒの前に立つのは皇后キャサリン、侍従長ブルート、侍女長のローザだ。

意外にも皇帝ユアンは傍観を決めこんだ。

「まあ私の息子だからな、しょうがない」

……親父、なんか心当たりあるな?


「マーク、お前がついていながらどうしてこうなったのだ」

同じく傍観していたマークに侍従長の厳しい言葉が飛ぶ。

「殿下がサラフィナ嬢へのお土産に怪しげな食材しか買っていないことは知っていましたから、何度も忠告差し上げたんですけどね。最後の最後に宝石店に入られたから安心したんですよ。まさかこんなオチだったとは」


こんな息子に育てたのは私の責任よね、いや私の指導が至らなかったばかりに、とレンリッヒにしてみれば腑に落ちない会話が交わされていたが、ここはぐっと我慢。

言い返してはいけない。


この様子を最初からずっと見ていた二人の人物がいた。

皇帝の弟でありレンリッヒの叔父にあたるハルバート・カイザー大公とその息子ルイポルト・カイザー。


ハルバートはユアンより3歳年下の42歳。皇族直轄領である広大なカイザー領を治めており、来週行われるレンリッヒ18歳の魔法付与式に合わせて帝都に来ている。

レンリッヒが幼いころからよく遊んでくれ、大好きな叔父だ。

皇帝ユアンとの兄弟仲もよく、こうして上京した際は兄弟でよく飲み明かしている。


今では仲の良い彼らだが、幼いころは兄弟げんかばかりしていたと侍従長から聞いたときは驚いたものだ。


快活で頭もいいハルバートこそ次代の皇帝となるべきだと考えたユアンが、ハルバートを皇太子の座に引き上げようと何度もたくらみ、断固拒否のハルバートとの間で壮絶なバトルが繰り広げられていたそうだ。

あ、そういうことね。それなら納得。二人らしいといえば二人らしい。


し烈な後継者争い(逆の意味で)に決着をつけたのはそれぞれに付与された魔法だった。

兄ユアンに授けられた魔法は、嘘を見抜く力。

弟ハルバートに授けられた魔法は、土魔法。


「決まったな!私は皇族の一員として直轄領を豊かにして見せよう。はっはっは!」

高らかに勝利宣言をするハルバートに対し、ユアンはがっくりとうなだれたのだった。

「どのような魔法が付与されても感謝するべし。わかっている、わかっているが……、これはあんまりだろう!ファイス神様!」


帝位を継ぐ者にとってはこれ以上ないとも思える、嘘を見抜く力。

これにより覚悟を決めたユアンに、その後ハルバートはとても協力的となり、公私に渡ってサポートすることになったのだ。まあ、自分に皇帝の座が降ってこないようにするためなのだが。兄より先に結婚したハルバートが、キャサリンとの婚約に奔走したのもそのためだ。


「まあ兄さんの息子だからね、こんなこともあろうかと思ったよ」

今回の顛末を聞き、乾いた笑いをこぼすハルバート。やっぱり親父も何かやったね?


ハルバートの息子、ルイポルトもなかなかの自由人だ。


レンリッヒにとっては父方の唯一の従兄であり、2つ年上の頼れる兄貴。

幼いころから「ルイ兄、ルイ兄」と慕い、ルイポルトの後ろをちょこちょこ歩いてついて回っていたレンリッヒ。


ルイポルトも面倒見がよく、「レンのことは何があっても俺が守るから安心しろ!」と頼もしいことを言ってくれていた。

その言葉に感動していた幼いころのレンリッヒだったが、今となっては分かる。あの親子のことだ。レンリッヒに何かあれば皇帝の座が自分に降りかかってくる。「レン、がんばれ、お前だけが頼みの綱だ」そんなところだろう。まったくもう……。


そんなルイポルトは今、帝国の外交を担っている。

18歳で授かった雷魔法を武器に自ら諸外国へ赴き、最前線で仕事をしている。


武器と言っても諸外国と戦うわけではない。

この大陸ではもう100年以上戦争は起こっていない、いたって平和な世界だ。


その代わりといっては何だが、各地に魔獣が住み、人を襲うことがある。

人間も魔獣を狩って、肉や毛皮、魔石などを採取しているのだから持ちつ持たれつだが、陸路でも海路でも長距離の移動には常に危険を伴う。


本来、皇位継承権第3位(しかもその次がいない!)のルイポルトが外国へ行こうとすれば、皇太子の視察と同レベルに大きな一団になるはずだ。しかし雷魔法で魔獣を撃退できるルイポルトは少人数で自由に各国を旅している。うらやましすぎるぞ、ルイ兄!


「しっかし、レンに彼女かぁ。兄ちゃんは嬉しい!嬉しいぞ!」

彼女……、彼女なのかなぁ?彼女だったら嬉しいな。レンリッヒの心がぽっと温かくなる。土下座からの立ち直り、早すぎ!

「ルイ兄には彼女いるの?」

「内緒!」


ずっりー。ルイ兄も教えろよ!

レンに彼女とか、生意気~!

あ、やっぱ、いないんだ〜。


大公一家を迎えた皇城はやっぱり今日も平和だった。

ちなみにユアンの嘘を見抜く力は、秘密に対しては効力を発揮しない。残念。

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