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膿の排除……そして炙り出し

「騎士団長ガイゼル様、まずは初めに忙しい身でありながら急な呼び出しに応じて頂きありがとうございます」


「いえ、女王様に様付けをして頂くような身では……」


ガイゼルは困惑しているようだ。

あ〜、私って白雪姫が流した噂で悪い印象しかないもんね。

本当に私になんの恨みがあるっていうのよ!


「私は王様に嫁いでからこの王宮に来ましたが、騎士おろか近衛兵が配属されることはありませんでした。それについて周りのメイドやメイド長は何も言わず、それが正しいのだろうと解釈しておりました。私は辺境伯の娘ゆえに王宮のことはメイド長の方が詳しいからと……」


「な、そんな!俺は……いや、私はメイド長からは近衛兵は前王妃の護衛をしていた者をそのまま召し上げるからと言われたのでその通りに、騎士については王妃様が選ぶからと言われそこから音沙汰がなかったので、おかしいと思い何度か謁見の許可を求めたのですが……その、メイド長から……成り上がりの者とは……顔を合わせたくない、と……王妃に断られたと……」


うわぁ〜……そもそもメイド長から近衛兵とか騎士の任命の話とか聞いてないんですけど

しかも私が騎士団長を見下したような発言をしたって吹聴して、近づけないようにするとかタチ悪いわぁ〜。


「私はメイド長から…騎士団長から面会を申し込まれているなんて一言も聞いておりません。これは……どういうことでしょうか、メイド長。何か申し開きがありますか?」


私は汗だくのメイド長の顔を見る。

果たしてこのメイド長の汗が急いで来たことによる汗なのか、焦りによる汗なのか。


「そ、それは……その……」


「メイド長は私のことを疎ましく思っていたんですよね?だから私のメイドの派遣も放棄し、前王妃と私を比べて嘲笑していたのでしょう?」


「そ、そんな疎ましいだなんて……」


「では何故、私にこのようなことを?説明出来ますか?」


メイド長は目を泳がせる。良い言い訳が思いつかないのだろう。

言葉を紡げずにいるメイド長の様子を見た騎士団長は、立ち上がるとメイド長に掴みかかる。


「お前、よくも俺に嘘を吹聴してくれたな?王様、今すぐこやつの首を切る許可を!」


ガイゼルが腰に掛けた剣に手をかける。

え、いや、首を切る許可をって……マジで?ここで?


「うむ、そうだな。メイド長はお前を騙し、王妃の身の安全を脅かしたのだ。到底許されることではない」


いやいやいやいや!さすがに首チョンパは早計でしょうよ!?

なんで王様、首を切る許可を与えようとしてるの!?

怖い!グリム童話の世界観怖いっ!

さすが悪役が熱した鉄の靴を履かせて、死ぬまで踊らせる世界だわ、怖すぎるって!

人が首を切られる所なんて見たくないわ!

グリムヒルデの記憶で打首刑とかあるって知識はあるけどニホンの記憶がある私はそこまでする!?という気持ちしかない。


「あっ、あの…そ、その前に前任の近衛兵が今何をしているのか突き止めるのが先なのでは?メイド長は前任の近衛兵を私に召し上げると言ったのでしょう?私、ここに来てその近衛兵を見ていません。」


「うむ、そうだな。うっかりしておった、すまぬ……メイド長よ、前任の近衛兵は今どこにおる」


騎士団長から手を離されたメイド長は床に崩れ落ちると、床に頭を擦り付けひれ伏す。


「申し訳ございません……その…彼は私の部屋に匿っております」


メイド長のその一言に騎士団長・王・私は固まった。

部屋に匿ってる?え?なんで?


「前任の近衛兵は……私の彼氏でして、その……」


ロッテンマイヤーさんな見た目のメイド長に、かれし?

ふーん、それなら私の護衛なんてさせるのは嫌でしょうね〜。

でもその近衛兵、職務放棄じゃない?


「はっ………呆れたな。おい、メイド長の部屋から引っ張り出して来い」


「「わかりました!」」


ガイゼルの傍に控えていた2人の騎士がビシッと敬礼すると、部屋から走り去る。


しばらくするとさっきの2人の騎士が1人の男をズルズルと引きずってくる。


そしてガイゼルの前に連れてくるとドンッと押し出す。

押し出された男は「グエッ」と言う声を出して、かっこ悪く転ぶ。


「いったた〜……なんなんだよ〜……ってひぃぃっ!?」


転んだ拍子におでこをぶつけたらしい、おでこを抑えながら上を向くと怖い顔をしたガイゼルと目が合い、男は悲鳴を上げる。


ガイゼル様の顔、めっちゃ怖い。

その顔だけで人が殺せそう…そりゃあ間近で見たら悲鳴も出るわ。


私は前任の近衛兵の前に出ると目線を合わせるようにしゃがむ。


「初めまして、近衛兵の方。私の近衛兵であるはずなのに初めましてなんてなんかおかしいわね?ふふっ……」


「へ?な、何を言って…あなたは?白髪の……もしかしてあなたは王妃っ!?」


私が誰だか気付いたらしい前任の近衛兵の男の顔からサーっと血の気が失せていく。


「あっ、いや、その、えーっと……」


「ナイン!!ごめんなさい、わ、私……」


「シャーリー!ど、どうしてこんなことに……」


前任の近衛兵はメイド長を見つけると床を這って、肩を持つとガクガクと揺さぶる。


「理由は私が説明しましょう、よーく聞きなさい。あなたが職務放棄をしたことにより私が白雪姫に用意してたプレゼントである希少な宝石が何者かに盗まれたのよ」


私の言葉に前任の近衛兵は顔を真っ青にし、ガタガタ震える。

さっきも血の気が失せた顔になってたけど、これ以上人間って顔が真っ青になるんだ〜っと関心する。


「あなたはどう責任をとるつもりかしら?ナイン?」


メイド長が呼んだ名前がこの前任の近衛兵の名前なんだろうと当たりをつけて語りかける。


「か、彼は悪くありません!わ、私の……全ては私の責任でございます!」


「あなたの責任を追求しないとは言ってないわ、メイド長」


彼氏を庇う姿は健気であるが、だからと言って許すことは出来ない。

私は身を寄せあい震えてる2人を見下し、王とガイゼルに訴える。


「首を切ってしまうという罰を下すより、近衛兵は見習いからやり直し、メイド長は1番過酷な洗濯メイドに格下げするという形をとるのはどうでしょう?白雪姫の誕生日でもありますし、血なまぐさいのは……ちょっと」


このままではこの部屋に生首が2個転がることになりそうだもの。


首を切るという言葉に前任近衛兵、あ〜……めんどくさい!ナインは手で首を守るように手で抑え、カタカタと震える。

いや、だから首チョンパしないってば………


メイド長は洗濯メイドに格下げという言葉に絶望した顔をしている。

いや、死ぬよりかはマシじゃない?

するとさっきまで存在が空気だった白雪姫が口を開いた


「お義理母様もこう言ってることですし、それで手打ちにしたらいかがでしょうか?メイド長は私が幼い頃からお世話になっていましたし、何卒お情けを……」


王様は白雪姫の話を聞くと、考えるような素振りをすると私に話を振ってきた。


「グリムヒルデよ、そなたがそのような処分を望むのであれば私は従おう。私もガイゼルもだ」


「私は2人の打首は望んでおりません」


「うむ、わかった」


「……御意」


どうにか丸く収まったらしい。

ガイゼルはいつの間にか手に掛けていた剣を離していた。

相変わらず顔は今にも人を殺せそうな凶悪な顔だけども……


「王妃様、早急に信頼出来る近衛兵と騎士を派遣させて頂きますので」


そう言うと騎士団長はバッと私に対して直角に頭を下げる。

その姿からは誠意が感じられた。


「この不肖騎士団長、ガイゼルに今一度挽回のチャンスを頂けませんでしょうか」


「えぇ、あなたは何も悪くないと言ってもガイゼル様はこの事を気にしそうですし……それなら私の大事な娘の誕生日プレゼントを盗んだ犯人を探し出して頂戴」


「御意、感謝いたします。王妃様!」


前任近衛兵のナインとメイド長シャーリーは、盗みの犯人に心当たりがあるかもしれないと言うことで事情聴取のため尋問室行きだと騎士達に引きずられて行った。


まぁ、盗みを行ったのは白雪姫の世話をしてるメイドなんだけど…私がこの2人は関係ないって言ってもなんでそんなこと分かるんだ?ってなるから黙っておこう。


さて、膿を1つ出すことに成功!この調子で他の膿も排除して目指せバットエンド回避!


改めて決意を胸にしているとユイの良く通る凛とした声が部屋に広がる。


「お取り込み中失礼致します、王妃様。お呼びした商人の方はいかがなさいましょう?」


「あら、そうだったわ。どうしましょう?ここに呼んでもかまわないかしら……私からお呼び立てしたのにいつまでも待たせるのは失礼だわ」


その言葉に王様が食いつく。


「商人?何のために?買い物ならこの前したと報告を受けたのだが……何か入用のものでも?」


うわぁ〜……そういう報告は受けるんだ〜。

王妃が派手に散財しましたよ〜!って……本当に悪意しかないじゃん。


「いいえ、前回買った時に鑑定眼のスキルを持っている商人がいて宝石の鑑定書を貰うのを忘れて帰してしまったので、持ってきてもらいましたのよ……その鑑定書付きでプレゼントしたら白雪姫に安心してもらえるかと思って……」


「なるほど……白雪姫にプレゼントしようとしていた宝石の鑑定書か。鑑定書には宝石の特徴などが事細かに記載されていると言うし、盗人探しや宝石探しに役に立つであろう。ここにはガイゼルもおるし、連れて来るといい」


騎士団長は忙しいし、こうやっている機会はないと判断されたのか許可が降りる。


「それではフォックス様をこちらにお通し致しますね」


「えぇ、お願い。ユイ」


ユイが頭を下げ、部屋から退出するとフォックスを連れてすぐに戻ってくる。


「宝石商人のフォックス様をお連れ致しました」


貴族や王族が勢揃いしてる部屋に通され、ピシリと固まるフォックスであったが、慌てて頭を下げる。


「お、王様、王妃様、白雪姫様、また貴族の方々に挨拶申し上げます」


綺麗な所作であるがよく見ると震えている。


フォックスに悪いことをしてしまったわ、なかなかこんな大勢の貴族がいる場所なんて来る機会ないもの。

緊張して当たり前だわ、何が不敬だと言われるかわからないしね……


「面を上げよ、フォックスとやら」


「は、はいっ!」


王様自ら声をかけられたことにより、フォックスはゆっくり顔を上げる。


「王妃が買った宝石の鑑定書を見たいのだが、見せてもらえるか?」


「も、もちろんでございます!し、失礼致します……こ、こちらです」


鑑定書を持ったフォックスの手は可哀想なくらいに震えている。


「私が王様にお渡ししよう」


ガイゼルがそう申し出るとフォックスから鑑定書を受け取り王様に手渡す。


「ふむ……こんな宝石は見たことがない。ランクは…S+だと!?」


この世界の宝石には階級が存在し、高い順からS・A・B・C・D・Eまである。

S+級は非常に珍しく希少である宝石であると言える。

分かりやすく言うと国宝級の宝石だということ。

王様のS+ランクの発言に周りにいた貴族たちがザワつく


「国宝級の宝石を誕生日プレゼントに……」

「それほどまでに白雪姫のことを……」

「誰が王妃様と白雪姫様が不仲だと言ったのか……」

「メイド長の1件もあるし、誰かが王妃様に明確な悪意を持って噂を流しているようにしか思えん」


おぉっ!貴族達の声が段々私に有利になってきてる!

いいぞいいぞ!あ〜、名誉が回復してる声が聞こえる!


「し、失礼致します!俺…じゃなくて、私にもその鑑定書を見せて頂いても?」


ガイゼルが王様から鑑定書を見せてもらうと目を見開く。


すっごい目を見開いてるな〜……そんな目を見開いたら目玉飛び出そう……


「こ、こんな国宝級の宝石、自分で独占してしまおうと思うのが普通なのに……それを義理の娘である白雪姫様にプレゼントなさろうだなんて……なんというお心の持ち主なんだ!この不肖、騎士団長ガイゼル!必ずや不届き者を血祭りに上げ、宝石を取り戻してみせます!」


そしてなんか感動してるし……

まぁ、見つけても白雪姫にあげるつもりはないけどね?


「この宝石はこの国に1個しか存在しない希少な宝石です。名前は天然オパール。ネックレスとして加工されており、見た目は丸い形をしてまして、大きさはこのくらいですわ」


私は他の貴族にどんな見た目であるかを手振り身振りを加えて説明する。


「あら、そんなに大きい宝石ですの……持っていたら目立ちそうですわね」

「この国に1個しかない宝石を盗むだなんて……そんな宝石を売り払おうとしたら足が着きますし、犯人逮捕は間近ですわね」

「盗人もまさか自分が盗み出した宝石がそんな代物だとは思わなかっだろうな」


貴族達が口々に犯人はすぐ捕まるだろうと言った。

そんな中、白雪姫付きのメイドの挙動が不審であることが目に入る。

暑くないはずなのに汗をかき、寒くもないはずなのに顔を真っ青にしてガタガタ震えているのだ。


それを気にせず、更に天然オパールについての説明をする。


「その天然オパールという宝石は多彩な色の揺らめきが見られるのが特徴で、同じ物は世界に一つとありませんわ。同じ加工を施そうとも一つ一つに特徴が出ますの。光を当てると紫色だったり、緑色だったり、7色の多様な色合いが見れますの。その見た目はまるで雄大な星空を閉じ込めたかのような煌めきで……」


私の説明にメイドは確信を持ったようで、こっそり逃げようとしている姿が目に入る。


私の説明に貴族の令嬢の1人が「あら?」と声を上げる。


「どうかいたしましたか?」


すかさずその令嬢に声をかけると、令嬢はおずおずと言う。


「そ、その……王妃様がおっしゃられたような宝石をつい最近、見たような気がするのです……」


その言葉に王様は食いつき、他の貴族達も騒めく。


「それは本当か!どこで、どこで見たのだ!!」


「そ、それが思い出せなくて……でも、本当つい最近、そのようなネックレスを……」


メイドはその貴族令嬢が注目を浴びてる内に駆け出す。


「ちょっと、あなた……どこへ行くの?」


私がメイドに声をかけると、メイドは一目散に部屋から出ようと走る、が異変を察した騎士によって阻まれる。


「そんなに慌ててどうかしましたか?そんな急いで走ったら怪我しますよ?」


「あっ、い、いえ……その……急に、お、お手洗いに行きたくなって……」


「顔色が悪いな、付き添おうか?今にも倒れそうだ」


「い、いえ、騎士様の手を煩わせることはなにも……」



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