怪しい品々
どうも皆様こんにちは、白雪姫が襲来し心臓バクバクになりながらもどうにかやり切りました。
グリム童話白雪姫の物語では名前さえ出ない、白雪姫の継母こと、グリムヒルデです。
この場をどうにかするためにと白雪姫を抱きしめ、感動のシーンを作り出しメイドを黙らせ、白雪姫を封じることに成功した私ですが……
現在腰が抜けて立てません。
白雪姫が広間から出ていったらもう気が抜けちゃって……
足のついた死亡フラグが勝手に来て、勝手に帰って行った。
白雪姫がもう死神にしか見えない。
原作の心優しい白雪姫という話は信用できないわね…まぁ、そこは継母がいるのに実の父親とチョメチョメする時点でねぇーよ!と思っていたけど。
白雪姫は完全にグリムヒルデに対して悪意を持っている。
そう思っていいわ。
もう腰に力は入るかしら?
そろそろ立ち上がらないとジヴァやユイ、そして商人のロナウドに不審な目で見られてしまうわ。
グリムヒルデは心の中でよっこらしょと言いつつ、立ち上がった。
よし、よかったわ。腰に力は入る。
膝が少し笑ってるけど…どうせドレスで見えないわ。
すまし顔よ、すまし顔。悪役っぽい顔してるんだから!
グリムヒルデはゆっくりと広間の椅子に座ると、にっこりと笑う。
「変な茶番に巻き込んで悪かったわね?さて、続きを始めましょう」
ロナウドはフッと笑い、一礼をする。
「かしこまりました」
ロナウドは手を2回叩き「運んでくれ!」と言った。
するとぞろぞろと絨毯を担いでる人や、ワゴンでガラガラとなにか運んでる人、大きな箱を2人がかりで運んでる人などが広間に入ってきた。
「グリムヒルデ様がどんな趣味をお持ちなのかわからなかったので、色々用意してまいりました」
広間に続々と物が運び込まれて行く。
それも見たことの無いような物ばかり。
私はユイを手招きするとコソッと耳打ちした。
「ユイ、残りのお金を宝庫室から全部持ってきてちょうだい」
「かしこまりました」
ユイは一礼して広間を出ていく。
これは選びがいがありそうだわ!
たくさんの中の物から自分がいいなって思った物を買う!それこそが買い物よ!
全部の品物が運び込まれたらしく、品物を運んでいた人達の列が途切れる。
並べられた品物は宝石類に食器、絨毯、小瓶が数本、古めかしい本と木の枝かしら?
「準備が整いました、ぜひじっくりと見てください。」
「えぇ、ありがとう」
どれがどんな値打ちの物なのかわからないので早速、魔法の鏡に念話で話をきく。
「宝石は綺麗だし、食器も細工が細かいし、絨毯は珍しい柄だし凄いと思うんだけどどう?」
『う〜む、そうだな。あそこに置いてある宝石はほぼ2級品だな。1番の値打ち物はダイヤモンドの腕時計だ』
「ダイヤモンドの腕時計!?」
どこだどこだと探すと台の端らへんに置いてある。
うわぁ〜…めっちゃキラキラ光ってる…
ダイヤモンドの腕時計とか、ニホンでも夢のまた夢だわ。
どこぞのナンバーワンホステスとかがつける物だよ?
それがこっちの国で買えるの?
盗まれるの怖すぎて日常使いなんてできないわ!
『食器は凄いな…名品揃いだ。世界に1つしかない金箔を焼き入れた品が1番の値打ち物か』
金箔!?世界に1つしかない?
食器なのに?割るの怖すぎてお茶を飲む手がカタカタ震えちゃうわ!
『あの絨毯は遠い村にだけ伝承される伝統的な代物だな。素材の珍しさと村と取り引きできる者の希少さで中々手に入らない代物だ。』
そんな絨毯を踏む勇気がない。
なんかの拍子にスープとかこぼした日には、染み抜きに一日を費やしそう。
ダイヤモンドの腕時計には心を惹かれるけど、食器と絨毯はいらないや。
次に気になるのは小瓶ね、
中に紫やピンクと言った怪しい色の液体が入っているのが気になる。
「ロナウド、その小瓶の中身はなんなのかしら?」
「この小瓶には世にも珍しい効能のある薬が入ってるんですよ。例えばこの紫色の薬の小瓶は変身薬。自分の思い描いた者に変身できます。ですが細部までちゃんと想像しないと変身できません。」
すごい!ファンタジーなものだ!
ニホンの記憶を持つ私は魔法学校で成長するメガネの女の子が活躍する映画を思い出していた。
そうそう、主人公の女の子も変身薬を使って先生に化けたりして学校を抜け出したりとかしてたのよね〜。
「じゃあ、この瓶に入ったピンク色の液体は?」
「これは魅了薬ですよ。好かれたい相手に振りかけるんです。よほど相手に嫌われてない限り、効能を発揮します」
「なるほど…」
惚れ薬というよりかは、コミュニケーションを円滑にしてくれる物と言った感じかしら?
白雪姫に振りかけたら効果あるかしら?……嫌われてそうだから効果はなさそうね。
「ではこの緑色の液体は?」
「それは食べ物に入れて誰食べさせると…その相手が眠ったように死にます。」
なっ!?なんていうものを持ち込んでるのよ!!
「誰かに…この薬を飲ませたいとは思いますか?」
ロナウドがなにかを探るように私を見る。
「思うわけないでしょう!この薬の用途は何?そんな物騒な代物をこの王城に持ち込んだ理由が気になるわ。その理由によっては…容赦しないわよ!」
ギロリとロナウドを睨むと、ロナウドは降参という風に両手をあげる。
「すみません、この薬は動物用です。剥製とかにしたい動物を綺麗に殺すためのね。たまにこれを悪用する方もいらっしゃるので、聞いたんです。ご不快にさせてしまい申し訳ありません。」
剥製用の薬?どちらにしろそんな物騒な物、いらないわ。
グリムヒルデは小瓶に入った真っ黒な液体を指さし、ロナウドに尋ねる。
「この小瓶に入った真っ黒な液体はどんな薬?」
「あぁ、これは髪の毛に塗るんですよ。そうすると色が鮮やかになったり、より一層ツヤツヤになるんです。」
へぇ〜、こんなものが。
ヘアオイルみたいな物かしら?これは欲しいかも。
「その黄色の液体は?」
「これは蜂蜜です」
「蜂蜜…?」
「蜂蜜が入ったクリームで、肌に塗ると2歳くらい若返るとか」
なにその、どこかの有名な化粧品会社の謳い文句みたいなのは。
これを塗ればマイナス2歳肌!って…
まぁ、惹かれるかと言えば惹かれる。
これも買おうかしら…
貴族の買い物って値段を見て買うとかじゃないのよねぇ。
ニホンでの庶民の記憶を持つ私にとっては、値段を見ないで買うなんて怖すぎて無理だけど…グリムヒルデの記憶もあってか、普通に振る舞えている。
次に私はロナウドが持ってきた中で異質な2つの品を見ている。
この古めかしい本はなんなのかしら?
「ロナウド、この本を手に取って見てもいいかしら?」
「えぇ、大丈夫ですよ。古い品なので所々脆くなっているので取り扱いに注意していただければ」
ロナウドに許可を取ってから、慎重に本を開く。
これは何かの呪文?知らないはずの文字なのに何故かスルスルと本の内容が頭の中に入ってくる。
狼男を弱体化させる薬、お菓子の家の作り方、幸せの青い鳥のいる場所と捕まえ方、毒林檎の作り方に老婆への変身薬の作り方…
グリム童話に出てくるキャラクターの名前に、童話などで見覚えのあるお菓子の家。
まるでお膳立てをするかのように白雪姫を殺す毒林檎の作り方や、老婆に変身できる薬の作り方が載っている。
怖い…これはなんなの?
「この本はどこの国の言葉が解読されてないんです。よって読んでも何が書いてあるかわからないのですが…選ばれた者しか読むことが出来ないと言われているんですよ」
選ばれた者しか読めない?
それは私がニホンの記憶を持っていることと関係があるのかしら?
「へぇ〜、そうなの。全く読めないわね」
「……そうですか」
ロナウドの瓶底メガネから見透かすような視線にドギマギする。
本を元の場所に置き、宝石に目を通すことにする。
「そうだわ、ジヴァ!あなたが私の専属メイドになった記念になにか宝石のブローチでも贈らせてちょうだい!」
なんとなくロナウドと視線を合わせるのが嫌で、ジヴァに話を振る。
「え?わ、私にですか!?そ、そんな恐れ多いですっ!」
私の斜め後ろに控えていたジヴァは自分に話が振られると思ってなかったのか、ブンブンと頭を振り慌てている。
「いいのよ、専属メイドということは私の特別だもの!王様だって自分が評価している臣下に褒美をとらせるじゃない。それと同じよ、私はジヴァにとても期待しているの、だからこれは投資よ。」
「とうし…?ですか?」
ジヴァがコテンと頭を傾げる。
「さすが女王様、投資なんて難しい言葉をよく知っておいでだ。投資とはこれから発展、または成長する企業などを見越して支援するんです。」
ロナウドの説明にジヴァは目を見開く。
「え、私、そんな…」
このままじゃ埒があかなさそうだ。
「ロナウド、ジヴァに似合いそうなブローチを見繕ってちょうだい」
「かしこまりました」
ジヴァがどうしようとアワアワしているのを見て見ぬふりをして、ロナウドがブローチを選ぶ。
「これなんか良いと思います」
そう言うとロナウドは緑のブローチを差し出す。
「そんな大きな!高そうなブローチ…いただけません!」
ジヴァを無視し、ロナウドに告げる。
「これにするわ。」
ロナウドは深々とお辞儀をした。
広間の扉をコンコンとノックする音が聞こえる。
ジヴァがハッとしたように、取り次ぐとユイが台車を転がして入ってきた。
「ただいま戻りました、宝庫室にあった金貨ですが…ちゃんと確認して、もうないなと思った所から金貨が湧いていました」
騒ぎにならないように白雪姫のお金を宝庫室に入れて誤魔化したわね?
それの時間稼ぎのためだったのかしら…やっぱり想像した通りね。
「そう……不思議なことがあるものねぇ?ふふふっ…」
グリムヒルデは優雅に扇子を持って微笑んだ。
わ〜、今絶対私悪役っぽい笑み浮かべてるわ〜と思いながら。




