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白雪姫襲来

「さて、ロナウド。あなたは私にどんな物を見せてくれるのかしら?」


こういう見た目の商人って瓶底メガネとったらイケメンとか、心に闇を抱えたやり手商人とか、乙女ゲームに出てくる攻略できない系キャラの定石よね。


「私がグリムヒルデ様にお見せしたい品は」


ロナウドが言葉をいい切る前に、広間の扉がノックされる。


「お義理母様ー!私です!入ってもよろしいですか?」


この鈴の鳴るような声…白雪姫!?

なんでここに…いや、大体の予想は着くわ。

宝庫室から金貨を持ち出すユイの姿を見て、メイドが慌てて白雪姫に報告したのでしょう。


これ以上お金を使わないように妨害しに来たか、お金を工面するための時間稼ぎで来たのでしょう。


白雪姫のことだから強引に割り込むことも厭わないでしょう。

周りの目には無邪気なお姫様という風にうつるでしょうから。


なら、それを阻止できるユイに対応を任せましょう。


「ユイ、こちらの商人の方が先約だわ。家族であってもそれは崩してはいけません。白雪姫は聡明で心の美しい王様自慢の娘…。そう説明すればきっと出直してくださるはずだわ。出直してくださるように言ってちょうだい。」


「はい、かしこまりました」


ユイは頭を下げると広間の扉を少し開け、そこに体を捻りこみ白雪姫の対応をする。

断固、白雪姫を入れないというフォーメーションだ。

ユイ、ナイスアシスト!


「さて、続けましょうか」


「よろしいのですか?」


「ロナウド、あなたの方が先約よ。それに昨日急遽来るようにお願いしたのに朝一で呼んで来てくれたお客を待たせるなんて道理が通ってないでしょ?いくら王族でも何がなんでも思い通りになると思っていたら大間違いだわ。白雪姫は由緒正しい王家の血筋を持ったお姫様だもの。それくらい理解してくれると思うわ」


何やら廊下が騒がしい。

白雪姫のすすり泣くような声に、メイドの怒鳴り声。

しばらくして広間の扉が開け放たれる。


「どうやら、理解してかれてないようですね?」


ロナウドが面白おかしいという風にそう言った。


広間に走って入ってきたかと思うと、白雪姫は床にへたり込む。


「お義理母様!ひどいです!私、お義理母様が体調が良くなったみたいだと聞いて顔を見に来たのに…門前払いするだなんて…グスッ…お義理母様は私のこと嫌いですか?」


「まぁ、なんて可哀想な白雪姫様」、「なんてひどいのかしら!」と口々に周りのメイドが言う。


そうやって私を悪者にするという寸法ね。

良いわ、その演技合戦。乗っ取ってあげる。


ハラハラと涙を流すグリムヒルデに、周りのメイドは「とうとう泣き出したわよ」とコソコソ笑う。


「ごめんなさいねロナウド。せっかく忙しい時に訪ねて来てくれたのに…。先約を捨てて王族の我儘で振り回すなんてあってもならないことなのに…聡明で心優しい白雪姫ならわかってくれると思って…。でもそうね、私は子供心もわからないダメな母親。癇癪を起こしてる子供1人諌められないダメな母親よ」


「なっ!?」

白雪姫が驚愕の声を上げる。


それもそうだろう。

さっきまで義理の母の体調を心配し、冷たく門前払いをされた悲劇のお姫様だったのに、グリムヒルデの涙とその一言で、王族であることをかさにきて先約に乱入し、癇癪を起こす我儘なお姫様にされてしまったのだから。


白雪姫側についてたメイドも、予想しない事態に目を白黒させている。


どうにか巻き返さないとと、白雪姫は口を開こうとするがそうはさせるかとグリムヒルデは白雪姫の前に立つと床に座り、白雪姫を抱きしめる。


頭の中ではひぃっ!?白雪姫(死亡フラグ)に抱きつくとか怖い怖い怖い怖いとパニックだが、やらなければいけない。

ここは私の独壇場で終わらせなければ。


「ごめんなさいね、白雪姫。あまり構ってあげられなくて。でも私はあなたが嫌いなわけじゃないのよ…私は王様の後妻で他のメイド達に白雪姫に悪意を持ってると警戒されていると、そう思ったの。王城で白雪姫と関わってもないのに虐めているなどという噂が飛び交っているのもそのせいだと思っているわ。その噂もあったし、あなたに怖がられるかもしれないと関わることをしていなかった。それがあなたのためになると思って…。でもね、いくら構ってほしくても先約の方を蔑ろにしてはいけないわ。あなたならわかってくれるでしょう?」


ねぇ、白雪姫。私がこんな形で反撃してくるとは思わなかったでしょう?

この茶番を穏便に済ませた方が良いってわかってるわよね?

白雪姫。なら、あなたはなんて返事すればいいかも決まっているわ。


「………は、い。我儘を言ってしまってごめんなさい…」


そう、そうよ。これでこの茶番はハッピーエンド。


「あら、いいのよ。寂しかったのね…」


体を離し、白雪姫の頭を撫でる。

さながら猛獣の頭を撫でている気分だ。


白雪姫は美しい親子愛と言った風にしゅんとした顔をしているが、手をグッと握りしめており手のひらに爪が刺さり、血を流している。


顔と仕草があってないのよ!怖いわ!


「お邪魔してしまってごめんなさい…」

そう言うと白雪姫は入ってきた時とは反対に静かにゆっくりと出ていった。

まるで時間稼ぎをするかのように…。


嵐が去って行ったように広間はシーンと静かになる。

グリムヒルデはどっと疲れが出て、倒れるようにイスに座り込んだ。


ロナウドと目が合う。

「悪いわね、ゴタゴタに巻き込んでしまって」


「いいえ、嵐のような方でしたね」


「えぇ、そうね……」


ジヴァがお茶を出してくれる。


「ロナウド様もどうぞ、お召し上がりください」


「はい、ありがたくいただきます」


今まで白雪姫に面と向かって反抗するということはなかった。

それが今日は反抗らしい反抗をした…今後白雪姫がどのような手を出してくるかわからないわ。


どうせいつかは対立するのだ。それが今日になっただけ!

身の回りに気をつけなきゃね、いつ寝首を掻かれるかわからない。

はぁ〜…とグリムヒルデは心の中でため息をつくのであった。

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