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束の間の休息。

男side






 少女の部屋の扉をノックすると、少女はすぐに扉を開けた。

そして俺の姿を見るや否や、抱き着いて泣き始めた。



 「ちょっ......いてぇな。」


 「お兄さん、生きててよかったぁっ......!!

 わたし、もしお兄さんが、おにいさんがぁっ......」


 ――死んでしまったら。


 そう言おうとしているのは伝わってきたが、少女の口からそれを聞くことはできなかった。

もちろん、聞きたかったわけじゃない。


 ――こいつにも悪いことをしたな。


 血が滲み少女の服に付くかもしれなかったため、俺はすこし強引に少女を引き離した。



 「俺も、頑張ってこの傷治すから。

もう少しだけ、いい子にして待ってるんだぞ。


 優もいるだろ、真奈美はしばらく見てねぇけど......」


 そういえば俺はここに来てから真奈美を見てない。

はぐれたにしてもいつも優と一緒にいるような奴だ、離れるわけがない。


 「わかった、私......もう少し頑張るからっ! 

 お兄さんも頑張って! 」


 少女は背伸びをして、俺の頭を撫でた。

ぎこちないが、俺はその撫でを受ける。



 「それじゃ、また後でな。」

















 少女と離れ、俺は医務室に戻るついでに真奈美を探すことにした。



 「おう、生きててよかったよ。」



 後ろから声を掛けられる。

ゆっくりと振り向くと、そこには優の親父の大毅が立っていた。


 軽く会釈して、俺はずっと気になっていることを聞いた。



 「真奈美を見てないか? 」


 「っ! 」


 一瞬、大毅は暗い顔をした。

それだけで真奈美はもうこの世にいないということを察し、もう一つ質問する。



 「あの化け物に殺されたのか? 」


 「あぁ。」


 頭の中が怒りで溢れたが、今暴れたところで何も変わらない。

しかし、消えかかっていた復讐の炎はまた燃え盛った。


 大毅は俺に一つ、願いをつぶやいた。


 

 「お前の復讐劇に......優を巻き込まないでくれ......。」



 悲痛な願いだった。

――しかし。


 

 「それは俺に言われてもどうしようも無い。

あいつがあの化け物を殺したいってなら、俺たちに止める権利はないんじゃねぇか?


やつはそれをされるだけのことをしたんだ。」


俺はその願いを突っぱねた


大毅は納得している様子ではなかったが、最後に殺すか殺さないか決めるのは自分だ。


もしかしたら俺は殺すために背中を押してしまったかもしれないが、それでも後悔はしていない。

 

 大毅は複雑な顔で階段を上り、自分の部屋に戻っていった。
























  優side



 彼が生きていたことに驚きと喜びと、いろんな感情が交差するけれど、私はそれを飲み込んで部屋を出た。

部屋を出てすぐ、少女が私の胸に飛び込んできた。

上手く受け止め、少女の顔を見ると涙の跡が浮かんでいた。



 「お兄さん、生きてたっ。

 でも、ボロボロで...私、わたしっ......」


 うまく言葉にできていない彼女の頭をやさしく撫で、落ち着かせた。

息を整えると彼女は再び口を開いた。



 「お兄さん、私を守るために戻ってきてくれたのっ、嬉しくって......。」


 「私も嬉しかったわ。私のお部屋で休むかしら? 」



 少女は大きく頷き、私の部屋に入った。

二人でベッドに座り、話を始める。



 「優お姉ちゃん、真奈美お姉ちゃんはどこに行っちゃったの......? 」

 「っ......」


 不安な顔をして、少女は私に聞いてきた。

私は彼女を不安にさせないようにうまく言葉を考えたけれど、その言葉は見つからず、非情な現実を突きつけるしかなかった。



 「真奈美は......死んだわ......」

 「そんなっ......! 」


 大きく開いた口を自分の手で塞ぎ、その目からは涙がとめどなく流れ出していた。

声を押し殺そうとしたが、我慢できずついに大声で泣き始める少女を見て、私もつられて涙が流れる。



 ――殺されていなければ......! ――



 そんな無駄な考えはいつまでも抜けないまま、私の中の復讐の炎が燃え始めていた。

それと同時に、お父様から言われた言葉を思い出す......。




 ――頼むから、優に誰かを殺してやろうとか、復讐の心は持ってほしくない。――


 ――優には、綺麗な心のままでいてほしい。――



 「これからは私とあの人が守ってあげるからねっ....」


 涙を流しながら、私は少女にそう言った。

それだけが、今の私にできることだから。






















 ???side



 「......」


 しわくちゃになった写真を眺める。

そうすることで断片的だった自分の記憶がつながっていく感覚がした。


 だが、俺はそんな考えを消し去り、その写真を再びポケットに仕舞った。


 「......」


  一度死んだ俺の口から、言葉は出ない。

同時に感情も失った俺は、目の前にあるものをひたすらに殺した。


殺し、殺し続け、それでも俺は満たされなかった。


 ――なにがしたいんだ、俺は。――



 出るわけのない答えは、深いため息の中に捨てた。


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