強くなる。そのために
少女side
お兄さんが死にそうになりながら帰ってきて、一か月がたった。
お兄さんは元通りになってくれて、優お姉ちゃんもいつも通り元気になってくれた。
お兄さんの後ろを歩きながら、私は考え事をする。
――私も、お兄さんを守れるように強くならないと......――
そんな考えは何回もしたことがあるけど、いつもお兄さんに守られてばっかり。
感謝の気持ちと申し訳なさが混ざり、変な気持ちになってしまう。
「お兄さん、ちょっと優お姉ちゃんに会いに行ってくる! 」
私はお兄さんと離れ、ある人のもとに走っていった。
「平澤お兄さん、私が戦えるようにして! 」
私は平澤お兄さんの所まで走り、そう言った。
お兄さんは苦笑いをした後に、私と目を合わせながらこう言ってくれた。
「お兄さんに恩返しがしたいのかな? 」
「うん......いつも守られてばっかりだから......私も......っ! 」
そこまで言うと平澤お兄さんは私の頭を撫でてくれた。
「いいんだよ、お兄さんは君に危ないこととか、そういうことを教えたくないと思うんだよ。
君は守られててもいいんだよ。」
どこか胸に引っかかりを感じたけど、私は小さく頷いた。
私は平澤お兄さんと別れ、またお兄さんを探し始めた。
「やっと見つけた、優のところに行ったんじゃなかったのか。」
十分くらい歩いて、私はお兄さんに会えた。
心配な顔をしているのを見て、私は申し訳なくなるけど、私はお兄さんに思っていることを打ち明けた。
「お兄さん、私も......強くなりたいっ! 」
「まだ早い。」
――即答された。
即答された悔しさに足踏みをして、涙が出そうになったけれど歯を食いしばって我慢した。
しかし一粒の涙が私の頬に流れ、床に落ちた。
「はやくてもいい、私はお兄さんをっ! 」
――乾いた音がした。
乾いた音の次に私の右頬が痛んだ。
私は、お兄さんに平手打ちされたんだ......。
「強くなりたいなら泣くな。
守りたかったものを壊されて泣くやつに誰かを守る資格はねぇ。」
私は初めてお兄さんの怒った顔を見てしまった。
悲しみと怒りが混ざった、そんな顔......。
私はお兄さんに叩かれた衝撃でその場を離れ、自分の部屋でお兄さんが言ったことの意味を考えた。
意味が分からなくても、分かるまで......。
男side
少女と話した後、俺は優の部屋の前に行った。
扉の前に着き、ノブを回すが開かない。
「誰なの、ちょっと待って。」
優の震えた声を聞いて、俺は扉を蹴り開けた。
優の静かな悲鳴と同時に、俺の目は涙で目を腫らした優を映した。
「ガキは強くなりたいって言ってたぞ。
強がるのは下手くそだが、下手くそなりに頑張って俺の前で強がってくれたんだ。」
「......そう。」
優がハンカチで自分の目を拭いた。
俺は棚にあった真奈美とのツーショット写真を取り上げ、床にたたきつけた後、何度も踏みつけた。
そのうち写真が黒く汚れてきた。
俺は写真をライターで燃やし、二度とその写真を見れないようにした。
「馬鹿じゃないのっ!!
真奈美との、最後の写真だったのに!! 」
優は俺に掴みかかり、半端ない殺気を見せつけてきた。
しかし、俺はそれに怯むことなく、優を睨み返した。
「どんなに好きな奴だったとしてもな、死んだら思い出なんだよ。
いつまでも自分の心にとめて、引きずって感傷的になってんなら死んでるのと一緒だ。
お前は俺に約束してくれただろ、少女を一緒に守るって。
自分の部屋で一生泣いて、なんもしてねぇお前に何が守れるんだ。」
怒鳴ることはしない。
しかし、俺は確実に目の前の女に対して怒りを感じていた。
一か月前、俺に少女を守ると約束したのに、ずっとこのザマだ。
「真奈美とは浅い関係じゃないのよ、そんな簡単にっ......」
「みんな同じ状況だろ、あのガキだって母親が死んだ。
俺も母親をクズに殺された。
悪いけどな、こうなった以上お前は真奈美のことを忘れて戦い続けるか、真奈美のために復讐をするか。
どっちか二つしかねぇ。」
優はつかんでいた俺の胸ぐらを離し、うつむいた。
その後、決心がついたの顔を上げて、口を開いた。
「わかったわ、私は復讐はしたくない。
だから......あの化け物を殺すけれど、それは真奈美のためにじゃないわ。」
「それは勝手にしろ、手伝ってやるが俺たちが一番しなきゃいけないのはあいつを守ることだ。
もうあいつを甘やかすのは終わりだ、強くなりたいって言った以上、それなりに厳しくすることだな。」
俺は写真の抜けた写真立てを棚に戻し、部屋を出た。
窓を見ると、雪が降っていた。
――ここからは、のんびりしてられねえな。
腰から銀色に光るデザートイーグルを取り出し、俺は国会議事堂を出た。
ゾンビどもを殺す、その行為だけが、俺にとって最強の訓練だから――。




