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走馬灯と覚醒





 「あなた、起きてっ。」


 聞き覚えのある声を聞いて、俺は目を覚ました。

だが、さっきまで見ていた景色とは違い、俺が寝ていたのは草原の上だった。

そして、目の前には見たことのない女が立っていた。


 ――夢か。――


 そう思いつつも、俺はずっとここにいたいような、そんな考えがよぎる。

目の前の女は天使か、もしくは女神を連想させるような、どこか神聖な雰囲気を出していた。


 「どうしたの、その傷は? 」


 目の前の女がが俺の腹を指さしながら問いかける。

腹を見ると、さっきまでの激闘で負った切り傷がはっきりと残っていた。


 「夢の中でも反映されるもんだな。」


 俺はその傷をさすってみるが、不思議と痛みは感じられなかった。

それと同時に、さっきまでの激闘の記憶が蘇ってくる。


 ふと、俺は女に気になっていることを問いかけた。


 「どうすれば現実に戻れんだ? 

こんなスピリチュアルなところにいる余裕はないんだ。」


 そいつは俺の後ろを指さした。

後ろを振り返ると、二つの道が分岐していた。


 「あなたは今どちらか選ぶことができるわ。

死に絶えてすべてを終わらせるか、もしくは現実に戻って戦い続けるかね......


 右に行けば死ぬわ、選択はあなたに任せる。」


 そういってその女は俺の背中を軽く押した後、その場から消えた。


 ――死んでたまるかよ。――


 俺は迷うことなく、左の道へ歩き始めた。

進むにつれ、意識が戻ってきたのか傷口が痛み出す......


 「健闘を祈っているわ。」


 最後に女の声を聞いて、再び視界は黒く染まった。






 

 





 「っ......ってぇ。」


 ゆっくりと目を開け、最初に感じたのは激しい痛みだった。

夢の中で見ていた通りに腹に大きな切り傷があり、出血はいまだ続いていた。


 目の前は霞み、近くにあったソファに手をかけて立ち上がったが脚に力が入らなかった。


 「これじゃ......戦えねぇな。」


 俺は少しでも状況を打開できるものがないかと、上に登ろうとした。

その時俺は、一階に降りるための階段がある扉から、衝撃音がしているのに気付いた。


 「降りてくのは無理そうだな......」


 俺は壁伝いに階段を上り、最上階である三階にたどり着いた。

いつもより重く感じる扉を開き、部屋を見渡す。


 ふと、机に置かれたアタッシュケースに目が止まった。

アタッシュケースを開けるとそこにあったのは――


 「これを使えば、人非ず......か」


 使われていない注射器と、怪しい液体だった。

どう考えても正常な液体ではないが、俺はその液体を注射器にセットする。


 一番下に説明書のような紙切れがあるのに気づき、俺はその紙切れの内容を読んだ。




 【薬物使えば、人と非ず。

そうは言いますが、こちらの新製品は依存性が非常に低く、それでいて絶大な効果を得られます。

値段相応の効果は期待できると思いますので、ぜひ新たな世界を開いてください。】


 ――人間、辞めるか――


 その注射器を腕に誘うとしたところで、俺は自分が大切にしているものを思い出した。


 少女の笑顔、行動、それに優の仕草――


 「頼ってられるか――!! 」


 俺は注射器を床にたたきつけ、さらに踏みつぶした。

俺は昔から、とっておきの薬物を知っている。


 「クソ野郎どもが!! 」


 俺は叫びながら、机をひっくり返した。

腰のデザートイーグルを取り出し、階段を下った。


 さらに一階に降りるための扉を開き、その先にいたゾンビに一発、鉛の銃弾を食らわせた。

その一体が階段から崩れ落ちたため、玉突きのように次々と下にいたゾンビどもがバランスを崩す。


 「じゃあな、俺はやらなきゃいけないことがある。」


 ポーチから手りゅう弾を取り出し、ピンを抜いて俺はゾンビの群れに投げ込んだ。

近くのスーパーに入るのと同時に、爆発音がスーパーに響き渡った。


 相変わらず視界は霞むままだが、俺は息を切らしながらスーパーにあった飲み物、食べ物を片っ端からリュックに詰めていった。


 持ち上げるのが一苦労になったところで、俺はその場を走って去った。

後ろからはゾンビどものうめき声が聞こえてくるが、そんなものに構うほど余裕はなかった。





 しばらく走るうち、俺は力が入らなくなり、前に倒れた。

息を吸おうとするが、リュックの重さでうまく吸えない......


 俺は力を振り絞って立ち上がった。

走ってきたところは血が垂れていて、もう俺の命の灯が消えそうになっているのを見せつけている。


 せめて、せめてこの荷物だけでも。――


 さっきまでの速度よりも遅いが、俺は再び走り始めた

頭の中は優と、少女であふれかえっていた。


 体が重くなり、寒さが増していくたびに思い出し、最後の活力にしている。


 




 ついに、俺の視界の前には国会議事堂が見えた。

ほんの数十メートル先も霞んで見えないが、確かに国会議事堂だ。


 俺は足を引きずり、扉の前にいた警備員にリュックを渡した。


 「これで.....しばらく......」


 扉を開けようとしたところで、俺は扉に身を預けるように意識を失った。


 ――とても寒い......


 初めて、恐怖を感じた。

守ろうとしていたものを、守れなくなる......恐怖を


 担ぎあげられるような感覚が、最後に伝わった。


 ――帰ってきたぞ......優――


 絶対に、俺は優にそう言いたい......



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