長き因縁は決着を迎える。
「まぁ落ち着きなさい。
俺の部下たちが殺されるのはあらかた予想がついていた、座って話でもしよう。」
親父は椅子に座るように促したが、俺はその椅子を蹴飛ばす。
しかしその様子に驚くようなこともなく、親父は向かいの椅子に座った。
「母さんは殺された。
最終的に殺したのはお前じゃないが、俺たちの幸せを奪ったのは間違いなくお前だ。」
憎きものを見る目で、俺は親父を見る。
そいつは少し考えたように視線を逸らした後、口を開いた。
「お前のお母さんが死んだのは事実だ、仕方ない。
死んだ者は腐敗して生き返るか、そのまま死ぬかの世界になったんだ。
でもな、俺はお前たちの生活に干渉した覚えはない、実際に俺のおかげでお前はここまで強くなれただろう? 」
無意識に拳を握る。
こいつに心からの殺意を覚えたのは、母親が俺が将来少しでも余裕のある生活をするために必死に働いてためた金を、はした金と言ってギャンブルに使い、風俗に使った時からだ。
それだけでなく、親父が酒を飲み、そのたびに暴れる性格上、母親は常に何処かに痣があり、生気のない目をしていたように見えた。
――それでいて、干渉していないだと? ――
挙句の果てには金目の物をすべて盗んで姿をくらませ、俺と母親は不幸な生活を強いられてしまった。
母親は精神的ショックで勤めていた仕事を解雇され、一日の大半を寝る時間に使うようになってしまい、俺はそれをただ見て、母の代わりにバイトを続けていた。
「謝りもせずに、よくのうのうとこの場所を教えたな......! 」
「謝るつもりはない、どうせ俺がお前を殺すことになるからな。」
目の前が真っ赤になったのと、親父に向かってストレートパンチを繰り出したのはほぼ同時だった。
怒りに任せたその一撃は、重みは乗っていたがそいつに届かず、空を切る。
「せっかく俺が体術を教えたのに、まだ生かせていないのか?
お前には刀術しか取り柄がないのか! 」
鼻で笑いながら、テーブルを俺に向かって蹴り飛ばしてくる。
俺はそれを伏せて回避し、立ち上がった。
しかし――。
「ぐぁっっ!! 」
頭に強い衝撃を感じ、俺はしゃがみ込んだ。
上を見ると、すぐそばに親父が来ていた。
「油断すると隙だらけなのも相変わらずだ。
本当なら叩き直すが、殺した方が早いだろう。」
次の拳が飛んでくる。
俺は間一髪でそれを避け、親父の膝を蹴る。
その一撃で一瞬隙が生まれたのを、俺は見逃さなかった。
ハンドガンを取り出し、腹に照準を定める。
引き金を引くと――。
「甘いっ! 」
銃弾は、親父に当たることはなかった。
俺の太ももから出血しているようで、その血はだんだんと染みを広げていっていた。
あまりの痛さに、言葉も出ない。
俺は腹を蹴飛ばされ、窓まで飛ばされる。
窓にヒビが入り、俺は血を吐いた。
――許さねぇ、母さんのためにも!! ――
母親の笑顔が、浮かんできた。
殺される前、最後に見た笑顔だ。
俺は死ぬ気で立ち上がり、背中の刀を取り出した。
刀を持つと、なぜなのか脚の痛みも消えた。
「やはり刀術に逃げるのか、愚か者め。」
「うるせぇ、そういうならテメェも刀を使えばいい。」
親父はガラスを素手でたたき割り、そこに飾られていた日本刀を取った。
構えると、俺の目を見てまた鼻で笑った。
「本当に死ぬことになるかもしれないなぁ!
見ものじゃないか、ダメ息子の生首なんて、冥途の土産にもってこいだ!! 」
息を深く吸い、狭い部屋を走り出した。
息を吸う度に胸が痛み、いつもより多く息を吐いてしまう。
走り出し、最初に振り下ろした刀は、いとも簡単に防がれてしまった。
俺はそこに足蹴りを加え、距離を取らせた。
受け身を取った親父は少し後退し、俺に刀を突き付けてくる。
横にかわしたが、横腹がかすり、そこからまた出血した。
親父の刀に、俺の血がっ......!!――
俺はかわした勢いをそのままに、回転するように刀を振った。
想定外の動きだったのか、親父はそれを避けれず腹に深々とした切り傷を負った。
「かはっ......このっ! 」
俺の比にならないほどの出血をしているが、かまわず親父は俺に刀を振ってきた。
俺は親父の舌に滑り込み、背後から背中を斬った。
効いたかっ!――
俺は距離を取るために後退した。
しかし後退するよりも早く、親父が振り向き、横振りで刀を振ってきた。
「くそっ......あがっ......この野郎っ......! 」
さらに出血を増し、俺の視界が曇り始める。
俺は刀を手放し、親父の刀を持っている方の腕をひねった。
いともたやすくそいつは刀を落とし、俺の腹にパンチを食らわせてくる。
それも構わず、俺は窓まで親父を引っ張った。
「くたばれ、クソ野郎。」
俺は親父の頭をガラスに何回もたたきつけ、ガラスを割った。
お互いに意識を失いかけているため、力があまり出ないが、俺は最後の力を振り絞り親父を持ち上げた。
そして二階から頭を下にするように落とし、地面にたたきつけられる最後の瞬間まで俺はそいつを見ていた。
「終わったか......げほっ......」
俺は口から多めに血を吐き、倒れた。
視界がだんだんと黒くなっていき、息が浅くなるのを感じる。
――母さん、俺は......終わらせたよ......――
こんなところで息絶えるわけにはいかない。
そう思いながらも、俺の意識は闇に染まった。




