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独撃 彼は一人、悪魔の夢を見る

男side



 「外のゾンビどもは何とかなったんだな、声が聞こえなくなってる。」


 正面入り口の扉を見ながら、俺は少し安心した。

ここなら、しばらく少女を置いていくことができる。


 「ええ、すべてを倒すことはできなかったけれど、被害が出ないほどにはなったわ。」

 「よかった。ちょっと待っててくれ、俺はこいつにちょっと話とくことがある。」


 俺は少女の手を取り、人が少ないところに向かった。

話を聞かれないであろう場所まで移動した後、俺は少女の前でしゃがんだ。


 「どこでもお前と一緒って言ったけど、今度は俺が人を守る番だ。

危ないところに行くから、しばらく帰ってこれない、優が面倒を見てくれるから、いうことはちゃんと聞くんだぞ。


 もし俺が帰ってこなかったら、これが俺の形見になる。

あらかじめ渡しとくから、大事にしろよ。」


 そういって俺は少女の手にペンダントを置いた。

このペンダントはかつて、10歳の誕生日に母親からもらったものだ。


 「開けてみてもいい? 」


 そういってペンダントを開けようとした少女の手を、俺は制止した。


 「ダメだ。

俺がここを出てから、開けるんだ。」


 「わかった、でも......」


 少女が言葉をつなげる前に、彼女が俺に俺に抱き着いた。

今にも泣きそうなのが、少女の背中で伝わってくる。


 「帰ってきて......ほしいのっ。

私の、お母さんのために......っ、わたしの......ためにっ......」


 言葉を詰まらせながらも、少女は自分の心に正直になって俺に打ち明けてくれた。

その気持ちに応えられるかわからなかった俺は、少女と目を合わせて、微笑んだ。


 その間に、俺の言葉はなかった。





 
















   優side


 二人がいなくなった後、私はお父様と久しぶりに話す時間を作ることができた。

臨時で作られたような、小休憩のスペースにある椅子に私とお父様は腰かけた。


 「こんな状況になったのも、俺の会社の失態のせいか......」


 お父様は相変わらず、自分のことを責めていた。

私は何も言わず、その言葉を聞き続ける。


 「啓子の死が受け入れられず、死者蘇生という不可能に近い研究を失敗して、それでいて世界中を巻き込んでしまうとは......情けない、啓子に顔向けできない......! 」


 そういってお父様は机に拳をたたきつけ、うつむいた。

その音で周囲の人がこっちを見たので、頭を下げて場を抑えた。


 「お母様は、お父様が思っているよりもあなたのこと、責めてかもしれないわね。」


 冬らしく曇った空を見ながら、私はつぶやいた。

その言葉に、お父様が私を見る。


 「こんな世界になったのは確かに取り返しがつかないかもしれないけれど、それでももしかしたら、生きてるだけで償えることがあるかもしれないわよ。」

 

 私は視線を空からお父様の目に移した。


 ――尊敬してるわよ、それでも。


 お父様の眼差しは、いつだって前向きだった。

けれど、度重なるストレスのせいで、その目は朽ちて、光を失いそうになっていた。


 私はお父様の頬に口づけをした。

驚いたお父様を横目に、私はいたずらに微笑んだ。


 「それでも、私はお父様の娘だもの。

胸を張って、生きていけるわ! 」


 私は席を立って、あてもなく歩き始めた。

お父様とは、後でまた話せばいいわ。


 階段を上ろうとしたところで、私は声をかけられた。


 「おい、俺の代わりにしばらく、あのガキ頼むぞ。」


 ――ぶっきらぼうな、それでもどこか優しさの残る声......


 「絶対に帰ってくるのよ、あの子のためにも。

あと、お土産はしっかり持って帰ってくること、いいわね? 」


 私は振り返って、笑顔でそう言った。

彼は照れくさそうに頭をかいたあと、私に背中を向けて歩き始めた。


 曲がり角で彼の背中が見えなくなるまで、私はその背中を見送っていた。























 男side



 「本当に一人で行くのか? 」



 平澤が止めるようにそう言ってきた。


 「ここの食料もなくなりそうだろ、水だって少ない。

ここで本格的に生活するとしたら、それ相応のリスクを背負うべきだ。


 リスクを背負うのは、俺だけでいい。」


 俺は背中に巨大なリュックと刀を背負い、腰に愛銃のデザートイーグルを仕舞っている。

正面入り口の扉を、俺は両手で開いた。


 冬の寒風が、俺の体を突き刺した。

しかしそれで引くわけにもいかず、俺は国会議事堂を背に歩き始めた。



 スマホを開き、電波を確認した。

議事堂にいたときは確かにあった電波は、すでに圏外になっていた。

それでも関係ない。


 俺は携帯を地面に投げつけ、足で踏みつぶした。

粉々になった携帯をそのままに、俺は出撃する。


 ――まだ、復讐は終わってない。――


 そう、自分に言い聞かせて――。






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