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援護 上

男side








 もし俺が本当に自衛官に戻りたいのなら、今俺がヘリに乗っているのは試練なのかもしれない。

もちろん、俺の隣には長袖とロングスカートを履いた少女がいる。


 「本当に、覚悟できてるんだな? 」


 俺は言葉を返さない代わりに平澤に頷き、持っていたアサルトライフルを軽く持ち上げる。


 __俺がヘリに乗ることになったのは一時間前だ。


 無線を受けた平澤は、本部らしき建物に俺たちを案内してくれた。


 「大尉、お疲れ様です。」


 管理室と書かれた部屋に入ると、平澤が奥に座っている男に頭を下げた。

その男は俺たちを一瞥した後、口を開いた。


 「うむ、前置きを話す余裕がないため、本題に入るぞ。

 君たちを国会議事堂の応援部隊に参戦させたい。」



 ――願ってもないことだ。――


 その心の声が顔に出たのか、男が俺のことを見てきた。


 「君は、以前ここで非常に活躍してくれたみたいだな、やめた事情は分からないが、君にしか頼めないことなのも事実だ。」


 「ええ、喜んで。」


 俺は男と目を合わせ、頷いた。

少女が俺の手をつかんできた。


 「私も、行くから。

 お兄さん、ちゃんと私のこと守ってくれるよね......?」


 俺は少女の頭を撫でて、「もちろん。」とだけ言った。

無駄なかっこつけは、失敗したときにかっこ悪くなる。


 「では、準備して場所へ向かうように、健闘を祈るぞ。」


 男の言葉を聞いた俺は浅くお辞儀をしたのち、部屋を出た。

それに続いて平澤と少女も部屋を出る。


 次に装備を整えるために俺は平澤についていき、軍服に着替えた。

あいにく少女に合うサイズの軍服がないらしく、そのままの服でヘリに乗ることになった。


 「私たち、ヘリコプターに乗るんだね、ドキドキする!! 」


 ドキドキするという割には楽しそうにしている少女を見ながら、俺はいろんなことを考える。

一番初めに心配になるのは、優たちのことだ。

いくら優に抗体があり力があったとしても、あの怪物と対峙したときに戦えるとは限らない。


 ――無事だといいんだが――


 今まで一度も人のことを心配したことのない俺からしたら、複雑な気持ちになった。


 「おい、行くぞ。」


 平澤に声をかけられ、俺たちはヘリに乗り込む。

ヘリにある椅子に座ると、その向かいに平澤が座り、隣に少女が来た。

俺たちに続いてほかの隊員も乗り込み、ついに満席になったのを確認したパイロットが、ヘリを上昇させた。






 「到着だ、陸上部隊は降下を開始しろ! 」


 その合図を聞いた俺と平澤、そして少女はヘリコプターから垂らされたロープを見た。

少女は後ずさりして、俺の服の裾をつかむ。


 「私、ここに残る......」


 弱気の少女の肩を叩き、笑った。


 「ゾンビどもに噛まれることよりは怖くねぇよ、さ、平澤兄さんに教えてもらいな。」

 「わ、分かった、私......がんばる!!」


 いまだに脚を震わせている少女の肩をやさしく叩き、俺は先に地上に降りた。



 「まもなくバリケードに到達します! 」


 隊員の一人がバリケードから距離を置き叫んだ。

今回ばかりは奴らの量が尋常じゃない、奴らを殺すのが好きな俺でも腰が引けるほどの量だった。


 「やるしか......ねぇな! 」


 俺は支給されたアサルトライフルを構え、 最初のバリケードが突破されるのを待つ。

一回、二回と大きくバリケードが揺れたのを最後に、それは地面に倒れた。

そしてその奥にいたゾンビどもが、俺たちめがけて走り始める。


 「聞いてないぞ! 今回の感染者は走るのか! 」


 狙いも定めず慌てふためく隊員を横目に、俺は近くのゾンビどもの頭を順番に撃ちぬいていった。

ただでさえ厄介な存在なのに、走ると来たら正確に、早く殺さなければならない。

後ろに下がりながら銃を撃っていたが、ついに最初のマガジンが空になった。


 「リロードする! 」


 俺はゾンビの応戦をしている部隊の一番後ろまで下がり、マガジンを入れ替えた。

その時、どこかで聞き慣れたような、そんな声が聞こえてきた。


 「見つけたわ、久しぶり。 」















 優side


 

 国会議事堂に向かって走ってくる感染者を見て、周りの人たちはおびえていた。

もしかしたら、半分諦めていたのかもしれない。


 ――なんて量なの......――


 まだ遠いためよく見えないけれど、一番前に男の人が歩いていて、その後ろには数え切れないほど大量の感染者が走っていた。


 その群れはついに男を追い越し、私たちがいる国会議事堂のバリケードに向かってきた。


 「地上部隊を要請しました。こちらでも応戦の準備を―― 」

 「私が行くわ。」


 私はお父様の腰のホルダーからハンドガンを抜き、マガジンを確認する。


 ――少しでも、役に立たないと。 ――


 お父様は一瞬慌てたけれど、私が奴らに応戦することを察すると落ち着いたみたい。


 「君はまだ若いし陽性反応が出ている。 ここで安静にしていた方が......」


 自衛隊員のその言葉に私は鼻で笑い、キッと睨む。


 「舐めないで、私には私の覚悟があるの。 」


 睨まれた彼は後ろに下がり、何も言わなくなった。



 素早い速度でこちらに向かってくる感染者への応戦のため各々が準備を進めていると、ヘリコプターの音が聞こえてきた。

地上にロープがたらされ、次々と隊員が降りてくる。

その一人に、見覚えのある人がいた気もしたけど、首を振って私は準備を続ける。


 すると、悲鳴をあげながらロープを下りる声が聞こえてきたので、つい再びヘリコプターの方を見る。



 「やだよぉ~!! お注射より怖い~!! 」


 半ば泣きそうになりながら地上に降りてきたのは、間違いなくあの時の少女だった。

私は彼女に近づき、声をかける。


 「久しぶりね、お姉さんのこと、覚えているかしら?」

 「うぅ......って、おねえちゃんっ! 」


 彼女は私の胸に遠慮なく飛び込んできたので、少しよろけたけれど、何とか受け止めた。



――この子がいるということは、彼も――



 私は少女をお父様に任せて、彼を探し始めた。

それと同時に、感染者たちによってバリケードが破壊された。

 

 「リロードする! 」


 どこかで聞いたような声が聞こえてきた。

そして銃のマガジンを抜き、新しいマガジンを装填している人物がいた。

その人物こそ、まさしく私が探していた人......


思わず、声をかけてしまった。


 「見つけたわ、久しぶり。」

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