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陽性と陰性

優side






 お父様としばらくどこに行くか話し合ったのち、私たちは国会議事堂に行ってみることにした。

国家が本当に法律を破棄したのか、それは国会議事堂の現状を見れば確かだと思ったから。


 「でも、歩きでは到底無理だわ......」

 「そこらに捨てられている車の中で、使えるのがいくつかあるかもしれない。 そしたら俺が運転できる。」


 私たちは大通りに乗り捨てられた車を一つずつ確認し始めた。

大通りの道路には様々な種類の車があり、軽自動車から一般車、路肩にはスポーツカーも止まっていた。

私は路肩に止まっているスポーツカーのドアに手をかけた。


 すると――


 「ごめんなさいっ!! 」


 辺りに車のアラートが鳴り響き、路地裏から大量の感染者が出てきた。

さすがに対応できないと思った私たちは、まだ感染者が見えない路地裏に逃げ込んだ、が......


 「ここにもいたか、仕方ない! 」


 感染者がいないと思っていたその道にも、数は少ないけれど奴らはいた。

お父様は近くにあった鉄パイプを手に取り、奴らの一体の頭に向けて鉄パイプを振りかざした。


 頭をつぶされたそいつは地面に倒れこみ、動かなくなった。

しかし、それで息つく間はなかった。


 気づけば私たちは、前からも後ろからも感染者たちに追い詰められていた。

私はお父様に合図して、ビルの屋上に上り始めた。


 



 「もう少しよ!」


 私はお父様の手を取り、一緒に屋上を伝って再び大通りに出た。

すでに車のアラートは止まっていて、大通りにはまばらに感染者が出てきていた。


 「お父様、車がないからバイクで行くしかないわ、ほら、あそこのバイク、鍵が付いているじゃない?」


 曲がり角から顔をのぞかせると、鍵が付いたままのバイクが路肩に止まっていた。

幸いその近くに感染者はいないので、乗るなら今のうちかもしれない。


 お父様を先頭にして、バイクまで姿勢を低くして歩く。

バイクの前についた私たちは、お父様が前に座り、私が後ろに座った。


 「いくぞ、しっかりつかまれ、優。」


 エンジンをかけると、後ろの方から感染者のうめき声が聞こえてきた。

しかし彼らが歩き始めたのと同時に、お父様はバイクのアクセルを握り、加速を始めた。


 私は何も考えず、ただお父様の背中に体を預けていた。

しかし、何も考えないようにしているはずなのに、頭の中は真奈美のことでいっぱいになっている。


 ――どうして、私たちを置いて先に死ぬのよ――


 悲しみと怒りが混ざった、複雑な感情に私は唇を噛み締めた。







 大毅side








 バイクを走らせて三時間ほど、あたりも暗くなり始めたころ、俺たちは国会議事堂前に到着した。

国会議事堂前についた俺は、思わず足がすくんでしまった。


 「何よこれ、どうなっているの......?」


 俺に続いてバイクから降りた優が、その光景を見て言葉を漏らす。


 国会議事堂の一キロ手前辺りから、大きなバリケードが張られていて、その前には自衛隊が待機していた。

その中の一人に近づき、話しかけてみた。


 「これは、どういうことだ?」


 頭を全力で回転させても、出てきた言葉はそれだった。

その問いに、自衛官は小さく笑い口を開いた。


 「あなた方は、国家が法律を放棄したという真っ赤なウソを信じているのですか?」

 「なんだと......?」


 俺はついに頭の回転が止まり、その場に崩れ落ちてしまった。


 ――法律放棄が、嘘だと?――


 今のこの状況で司法が生きていないにしても、いずれは俺たちも処罰の対象になる可能性があるかもしれない

――


 そう考えただけでも、震えが止まらなくなった。


 「とりあえず、感染チェックをして陰性なら中に入れる。 協力してくれませんか?」

 「......わかった。」


 俺たちはその自衛官に採血をされて、しばらく待たされた。

渋い顔をしているそいつを見て、俺は不安に駆られる。


 「あなたは大丈夫ですが、その女の方が陽性なので中に入れることができません。」

 「......」


 俺は優と顔を見合わせた。

しばらくの沈黙の後、優が口を開いた。


 「いいわ、せめて私はここを防衛する。 一週間、様子を見てそれでも奴らにならなかったら、私を中に入れてくれないかしら?」


 その言葉に自衛官はしばらく考えた後、頷いた。


 「いいでしょう、上官にもそう伝えておきます。」

 「優、頼むぞ。」


 優が力強く頷いたのを見て、俺は安心して中に入ることができたかと思っていた。

自衛官の最悪の報告を聞くまでは――


 「前方250メートル、大量の感染者と人間を確認! 発砲許可願います!」


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