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ライムの日記

―カデンツアの月の8―


僕の名前はライゼリートです.

十歳です,マイナーデ学院の一年生です.

学院に入学したら,日記をつけたらどうだい? とおじい様に言われたので,日記をつけます.


―カデンツアの月の9―


スーズに怒られました.

食べものの好き嫌いはよくないです.

殿下はぜいたくですね,と言われました.


―カデンツアの月の10―


今日は学院がお休みだったので,おばあ様とおじい様の家に行きました.

たった五日ぶりなのに,おばあ様はとっても喜んでくれました.

だから,ケーキを作ってくれました.

甘かったです,舌がおかしくなりました.


イスファスカ兄上が,イスカと呼べと脅してきます.

でも兄上なのに,そんな風に呼んでいいのかなぁ.

それから僕のことを女の子扱いするのはやめてほしいです.


―カデンツアの月の11―


今日は初めて,姉上と兄上,あ,イスカお兄さんじゃない方の兄上に会いました.

怖い人たちでした.


―カデンツアの月の13―


サリナに好きだよって言われました.

でもサリナは昨日,フィリシアに大好きって言っていました.

ということは,僕はフィリシアの下……?

でもフィリシアの上だったら,フィリシアが怖いから,僕は下でいいです.


―カデンツアの月の14―


僕はお城よりもここがいい.

お母様には会いたいけれど,ここの方がいい.

僕は駄目な子どもなのかなぁ.


―カデンツアの月の17―


サリナがおうちに帰りたいって言って,泣いていました.

スーズが,サリナはホームシックだって言っていました.

僕はどうすればいいのか分かりません.


―カデンツアの月の18―


今日は…….

いっぱいしかられたけど,楽しかった.

サリナも楽しそうだった.


えっと,教室へ行こうとしたら,サリナと廊下で会って,そしたらサリナが一緒に授業をサボろうって言った.

僕が行かないなら,一人で行くって言ったから,僕はついていったんだ.

ソウジュの木に登って,あ,ソウジュの木は一番大きな木なんだ.

でも,王都もサリナの村も見えない.

サリナはパパとママに会いたくて,また泣いていた.

僕は何もできなくて,ただサリナが泣きやむのを待っていた.


それから授業中の教室をこっそりと見て回った.

途中でラティン先生に見つかりそうになって,サリナと二人で走って逃げた.

イスカお兄さんは授業中に寝ていて,隣の席の女の人になぐられていた.

お兄さんは不まじめみたい.

隣の席の,眼鏡の女の人と仲よさそうだった.


最後はおじい様に見つかって,二人でいっぱいしかられた.

でもサリナがこそこそと笑いかけてくるから,二人で笑っていたらもっと怒られた.

その後で,スーズがすごいことを教えてくれた.

なんとスーズは,僕とサリナの後ろにずっといたのだ.

僕の護衛だから,授業をさぼっている僕のそばにいたんだって.

ぜんぜん,気づかなかったよ.


―カデンツアの月の22―


ひどいよ,イスカ兄さんは.

そりゃ,僕は女の子みたいな外見をしているのかもしれないけど.


―カデンツアの月の23―


ラルファード兄上は僕のことを嫌っています.

僕が健康で,母上の子どもだから.

イスカ兄さんに,あいつらには近づくな,用があるときは俺を頼れと言われました.

今度から,そうします.

イリーナ姉上も,怖いです.


―カデンツアの月の24―


ユーリはサリナに,べたべたしすぎだと思うけど…….

僕だけなのかなぁ,そう思うのは.


―カデンツアの月の29―


びっくりした.

サリナにキスされた.


―タイスーの月の27―


ひさしぶりに日記をつけます.

……何を書こう.

学院はみんながいて,楽しいです.

イスカ兄さんがお兄さんで,クラスのみんなはいいなぁって言ってくれます.

でも兄さんは乱暴だし,めちゃくちゃだし,悪いことばかり教えてくるし,……あんまりうらやむようなことじゃないと思うなぁ.


―タイスーの月の28―


スーズは解放奴隷で,サリナは平民で,みんなは貴族で.

僕は王子で,イスカ兄さんは解放奴隷で王子で.

僕にはよく分からないよ.


クラスでたった一人だけ,文字の読めないサリナ.

みんなは貴族だから文字を読めるけど,サリナは平民だから読めないんだって.

だから,僕が教えるって言った.

サリナは僕が守らないといけないんだ.


―メーリーの月の3―


本当にひさしぶりに日記をつけます.

サリナに誕生日プレゼントをもらった.

兄さんとスーズに,すごくからかわれた.

絶対に見せるもんか.


サリナが最近,授業中に居眠りばかりしていて困っていたけど,なんだ,僕のためだったんだ.


―アルーリの月の9―


ほとんど真っ白じゃないか,この日記は,と思う.

俺の名前は,ライゼリート・イースト・トーン・シグニア.

マイナーデ学院の八年生だ.


内容が,すごく恥ずかしい.

燃やそうと思う.

そう,今すぐに.


じじいに言われたから日記をつけたって,恥ずかしい理由だな.

おばあ様,おなくなりになる前に母上に会ってほしかった.

俺はいつか,母上を取り戻せるのだろうか.

じいさんがあれほど陛下に……,……俺はじいさんと母上を会わせたい.

おばあ様は間に合わなかったけれど,せめて…….


フィー,フィリシアはいなくなった.

サリナは知っていたみたいだけど,俺はびっくりした.

情熱的な女だったんだな,俺は知らなかったけれど.


ユーリは,嫌いだ.

ますます嫌いになった,サリナを嫌らしい目で眺めまわしやがって.

俺が,もしも俺 がサリナに申しこんだら,どうなるのだろう.

サリナは,ユーリからの申し出も,アレクからの申し出も,ルッツからの……,多いな,なんだよ,いきなりもてだしやがって…….


みんな断ったって聞いたけど,……サリナは誰のものにもならずに,故郷へ帰るのだ.

いや,ちがう,故郷の村で俺の知らないやつといつか一緒になるんだ.

くそっ,何を書いているんだ.


燃やそう,これは.

俺は死ぬ.

母上と一緒に.

できるかぎり,じいさんやスーズにまで罰が及ばないようにして死ぬ.


死ぬのなら,一度でいい,サリナを抱きたいと思ったことがあった.

けれど,あいつは大切なんだ.

だから,俺は申しこまない.

ユーリの見え透いた挑発にも乗らない.


俺は…….

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