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『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


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第8話 町長のお願い


朝。


修が工房の扉を開ける。


「今日もいい天気だ。」


リペはすでに掃除を始めていた。


「おはようございます!」


「おはよう。」


「今日は何も壊していません!」


修は驚く。


「本当か?」


「はい!」


その瞬間。


パキッ。


ほうきの柄が真っ二つになった。


「…………。」


「…………。」


リペはゆっくり修を見た。


「今のは、ほうきが壊れました。」


「お前じゃないだけ進歩したな。」


修は笑いながら折れたほうきを受け取る。


「後で直そう。」


チリン。


ベルが鳴る。


入ってきたのは、小柄な老人だった。


立派な服を着ているが、どこか親しみやすい。


「おはようございます。」


修が頭を下げる。


老人も笑顔で返した。


「突然ですまない。」


「私は、この町の町長だ。」


リペは目を丸くする。


「町長さん!」


「えらい人です!」


修も少し驚いた。


「町長さんが、うちに?」


町長は困ったように笑う。


「頼みたいことがあってね。」


そう言って、机の上に一本の古びた鍵を置いた。


錆び付き、歪み、ほとんど原形を留めていない。


「これは?」


「町の時計台の鍵だ。」


修は首をかしげる。


「時計台?」


「百年以上前に作られた、この町のシンボルだ。」


町長は少し寂しそうな顔をした。


「しかし今は、鍵が壊れて中へ入れない。」


「修理屋もいない。」


「鍛冶屋も『新しく作ればいい』と言う。」


修は静かに鍵を持ち上げた。


「見てみます。」


「さて。」


「どこが痛い?」


【対象:時計台の鍵】


【損傷率:93%】


【修理可能】


景色が流れる。


建設中の時計台。


職人たち。


笑い声。


子どもたち。


完成した時計台を見上げる町の人々。


『これから百年、この町を見守ってくれ。』


景色は終わる。


修はゆっくり目を開く。


「……この時計台。」


「町のみんなに愛されていたんですね。」


町長は静かに頷いた。


「昔はな。」


「今では誰も近寄らない。」


修は微笑む。


「なら。」


「もう一度、みんなが集まる場所にしましょう。」


「修理します。」


光が鍵を包む。


錆が落ちる。


歪みが戻る。


古びた輝きはそのままに、しっかりとした鍵へ生まれ変わった。


町長は感激したように鍵を握る。


「ありがとう。」


「時計台へ行こう。」


修、リペ、そして町長は時計台へ向かった。


高くそびえる石造りの塔。


扉に鍵を差し込む。


カチャリ。


百年ぶりに扉が開いた。


「おぉ……。」


中には巨大な時計の歯車が並んでいた。


しかし、その多くが錆び付き、止まっている。


リペは目を輝かせた。


「ご主人様!」


「全部修理できます!」


修も笑う。


「今日は無理。」


「えぇぇぇ!」


町長は笑い声を上げた。


「君たちを見ていると、町まで元気になるな。」


その時だった。


リペが大きな歯車を覗き込む。


「すごいです!」


身を乗り出した瞬間。


バランスを崩す。


「ご主人様ーーー!」


ガタン!


ゴロゴロゴロ!


巨大な歯車の上を転がり落ちていく。


「止まれーー!」


ドンッ!


歯車に頭をぶつける。


すると――


ギギギ……


止まっていた歯車が少しだけ動いた。


修も町長も目を丸くする。


「……動いた?」


リペは目を回しながら親指を立てた。


「少しだけ、お役に立ちました……。」


修は吹き出す。


「結果オーライ……なのか?」


町長は大笑いした。


「はっはっは!」


「時計台を直した英雄が、まさか頭突きとは!」


リペは胸を張る。


「体当たり修理です!」


「違う。」


修は笑いながらツッコむ。


「それは修理じゃなくて事故だ。」


夕日に照らされた時計台には、久しぶりに笑い声が響いていた。


そして町長は帰り際、静かに言う。


「修君。」


「今度は時計台そのものを、直してくれないか。」


修は時計台を見上げる。


百年もの間、町を見守り続けてきた建物。


「……もちろん。」


「でも、一日じゃ終わりませんよ。」


町長は優しく笑った。


「急がなくていい。」


「君たちらしく、ゆっくり直してくれ。」


修も笑って頷いた。


「はい。」


その日、異世界リペア工房は――


初めて「町」から正式な依頼を受けた。

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