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『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


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第9話 壊れた魔道具職人


朝。


リペは工房の看板を雑巾で磨いていた。


「ピカピカです!」


修は頷く。


「ありがとう。」


「でも、そこ昨日も磨いてたよね?」


「はい!」


「今日も磨きます!」


「木がなくなるぞ。」


そんなやり取りをしていると、工房の扉が勢いよく開いた。


バンッ!


「あなたが修理屋?」


入ってきたのは、一人の若い女性だった。


茶色い髪を後ろで束ね、作業服を着ている。


腰には工具袋。


胸には魔石が埋め込まれたゴーグル。


いかにも職人という格好だ。


修は笑顔で迎える。


「いらっしゃいませ。」


女性は腕を組む。


「私は魔道具職人のルナ。」


「あなたの噂は聞いてる。」


「……良い噂?」


「半分くらい。」


「残り半分は?」


「『変なゴーレムがいる店』。」


修はリペを見る。


リペは胸を張った。


「ありがとうございます!」


「褒められてないぞ。」


ルナは工房を見回す。


「修理ねぇ。」


「そんなものじゃ、魔道具は直せない。」


修は肩をすくめる。


「やってみないと分からないですよ。」


「ふーん。」


ルナは工具袋から小さなランタンを取り出した。


ガラスは割れていない。


見た目も綺麗だ。


「これを直せる?」


修は受け取る。


「壊れてないように見えるけど。」


「魔力回路が切れてる。」


「誰にも直せなかった。」


修は両手で包み込む。


「さて。」


「どこが痛い?」


【対象:魔導ランタン】


【損傷率:42%】


【修理可能】


景色が流れ込む。


若き日のルナ。


父親と工房で笑っている。


初めて完成させた魔導ランタン。


「やった!」


「これで夜道も安心だ!」


しかし景色は変わる。


父親は亡くなり、工房は閉鎖。


ランタンも動かなくなった。


修はゆっくり目を開く。


「お父さんと作ったんですね。」


ルナの目が大きく開く。


「……。」


「なんで、それを。」


修は微笑むだけだった。


「直してみます。」


「修理。」


柔らかな光がランタンを包む。


カチッ。


魔石が淡く輝く。


ポゥ……。


優しい灯りが工房を照らした。


ルナは息をのむ。


「ついた……。」


ランタンを両手で包み込む。


「十年ぶり……。」


修は笑う。


「まだまだ働けそうですね。」


ルナはしばらく黙っていた。


そして小さく笑う。


「……悔しい。」


「でも。」


「ありがとう。」


その時だった。


リペがランタンを覗き込む。


「綺麗です!」


勢い余って鼻先が熱源に近づく。


ジュッ。


「熱っ!」


飛び上がったリペは棚へ激突。


ガタン。


工具箱が落ちる。


ドミノのように棚が倒れていく。


ガシャーン!!


工房中に工具が散乱した。


「…………。」


静まり返る工房。


リペは床に座り込み、小さく手を挙げた。


「ご主人様。」


「うん。」


「今日は、工房を壊しました。」


修は天井を見上げた。


「スケールアップしたな……。」


ルナはお腹を抱えて笑い始めた。


「あはははは!」


「こんな工房、初めて!」


笑いながら涙をぬぐう。


「修理屋。」


「また来てもいい?」


修は散らばった工具を拾いながら笑う。


「もちろん。」


「次はお客さんじゃなくても。」


「遊びに来てください。」


ルナは照れくさそうに頷いた。


「じゃあ。」


「今度は工具を持ってくる。」


「一緒に直そう。」


修は少し驚いてから笑う。


「歓迎します。」


リペは元気よく敬礼した。


「仲間が増えました!」


修は苦笑する。


「まだ常連第一号だよ。」


その日。


異世界リペア工房には、また一人。


帰ってくる理由ができた人が増えた。

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