↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/65

第37話 小さな灯台守


翌朝。


ベルマーレの港には、今日も潮風が吹いていた。


修が灯台へ向かうと、階段の前に小さな男の子が座っている。


昨日出会った少年だった。


「おはよう。」


修が声を掛ける。


少年は元気よく立ち上がった。


「おはよう!」


「修理屋さん!」


リペも笑顔で手を振る。


「おはようございます!」


少年は胸を張った。


「ぼく、ルカ!」


「今日から灯台守になる!」


修は思わず笑った。


「本物の灯台守?」


「ううん!」


「勝手に!」


リペは吹き出した。


「それは怒られますね!」



ルカは毎朝、灯台の階段を掃除していた。


小さなほうきを持ち、一段一段、丁寧に掃いていく。


修はその姿を静かに見守る。


「誰に頼まれたの?」


ルカは首を横に振る。


「誰にも。」


「昨日、おじさんが言ってたでしょ?」


『帰る場所は、みんなで作る。』


「だから!」


「ぼくも手伝う!」


修は少し驚いた。


昨日の言葉を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。



その頃。


港ではマリアが今日もランタンを灯していた。


すると、近所のおばさんが声を掛ける。


「今日も迎えに行くのかい?」


「ええ。」


「なんだか嬉しくてね。」


「私も一緒に行こうか。」


一人だった港に、二人。


翌日には三人。


その次の日には五人。


少しずつ、「おかえり」の輪が広がっていた。



昼頃。


修は灯台の鐘を調べていた。


「さて。」


「今日は何を教えてくれる?」


【対象:帰港の鐘】


【帰港の習慣 24%】


【変化を確認】


数字が少しだけ増えていた。


修は小さく笑う。


「ちゃんと見てるんだな。」


リペも嬉しそうに鐘を見上げる。


「鐘さん!」


「今日は昨日より元気です!」


すると鐘が風に揺れた。


コン……


昨日より少しだけ、澄んだ音。


「返事しました!」


リペは飛び跳ねる。


修も優しく頷いた。


「ありがとうって言ってるのかもな。」



その日の夕方。


港へ戻ると、子どもたちが木切れを集めていた。


「何してるの?」


リペが尋ねる。


ルカは得意げに答えた。


「灯台の模型!」


見ると、少し歪んだ木の灯台だった。


窓は曲がっている。


扉も斜め。


でも、一生懸命作ったことはすぐに分かった。


「修理屋さん!」


「見て!」


修はしゃがみ込み、模型を手に取る。


「いい出来だ。」


ルカは嬉しそうに笑う。


「ほんと?」


「うん。」


「ここを少しだけ削ると、もっと丈夫になる。」


修はノコギリではなく、小さなヤスリを手渡した。


「職人は、少しずつ仕上げる。」


ルカは真剣な顔でヤスリを動かし始める。


リペはその様子を見て、目を細めた。


「未来の職人さんですね。」



夕暮れ。


完成した木の灯台を港へ持っていく。


子どもたちは灯台の前へ並べた。


「灯台が二つ!」


「かわいい!」


町の人たちも足を止める。


エリオットは思わず笑った。


「本物の隣に、小さな灯台守の灯台ですね。」


その時、ルカが胸を張って宣言する。


「ぼくが大きくなったら!」


「本当の灯台守になる!」


港にいた大人たちは、優しく拍手を送った。


修はその光景を見ながら、小さくつぶやく。


「鐘は。」


「こういう未来を待っていたのかもしれない。」



帰り道。


リペは木の灯台を大事そうに抱えて歩いていた。


「ご主人様。」


「なんだ?」


「私も作りたいです。」


「木工?」


「はい!」


「じゃあ工房へ帰ったら、一緒に作ろう。」


「やったー!」


嬉しさのあまり、木の灯台を高く掲げる。


そのままバランスを崩して転びそうになる。


ルカが慌てて支える。


「危ない!」


リペは照れ笑いを浮かべた。


「ありがとうございます。」


ルカは得意げに胸を張る。


「灯台守だから!」


その言葉に、港中が優しい笑いに包まれた。


そして灯台の鐘は、夕日に照らされながら静かに輝いていた。


まるで未来の灯台守を、誇らしそうに見守るように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。