第37話 小さな灯台守
翌朝。
ベルマーレの港には、今日も潮風が吹いていた。
修が灯台へ向かうと、階段の前に小さな男の子が座っている。
昨日出会った少年だった。
「おはよう。」
修が声を掛ける。
少年は元気よく立ち上がった。
「おはよう!」
「修理屋さん!」
リペも笑顔で手を振る。
「おはようございます!」
少年は胸を張った。
「ぼく、ルカ!」
「今日から灯台守になる!」
修は思わず笑った。
「本物の灯台守?」
「ううん!」
「勝手に!」
リペは吹き出した。
「それは怒られますね!」
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ルカは毎朝、灯台の階段を掃除していた。
小さなほうきを持ち、一段一段、丁寧に掃いていく。
修はその姿を静かに見守る。
「誰に頼まれたの?」
ルカは首を横に振る。
「誰にも。」
「昨日、おじさんが言ってたでしょ?」
『帰る場所は、みんなで作る。』
「だから!」
「ぼくも手伝う!」
修は少し驚いた。
昨日の言葉を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。
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その頃。
港ではマリアが今日もランタンを灯していた。
すると、近所のおばさんが声を掛ける。
「今日も迎えに行くのかい?」
「ええ。」
「なんだか嬉しくてね。」
「私も一緒に行こうか。」
一人だった港に、二人。
翌日には三人。
その次の日には五人。
少しずつ、「おかえり」の輪が広がっていた。
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昼頃。
修は灯台の鐘を調べていた。
「さて。」
「今日は何を教えてくれる?」
【対象:帰港の鐘】
【帰港の習慣 24%】
【変化を確認】
数字が少しだけ増えていた。
修は小さく笑う。
「ちゃんと見てるんだな。」
リペも嬉しそうに鐘を見上げる。
「鐘さん!」
「今日は昨日より元気です!」
すると鐘が風に揺れた。
コン……
昨日より少しだけ、澄んだ音。
「返事しました!」
リペは飛び跳ねる。
修も優しく頷いた。
「ありがとうって言ってるのかもな。」
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その日の夕方。
港へ戻ると、子どもたちが木切れを集めていた。
「何してるの?」
リペが尋ねる。
ルカは得意げに答えた。
「灯台の模型!」
見ると、少し歪んだ木の灯台だった。
窓は曲がっている。
扉も斜め。
でも、一生懸命作ったことはすぐに分かった。
「修理屋さん!」
「見て!」
修はしゃがみ込み、模型を手に取る。
「いい出来だ。」
ルカは嬉しそうに笑う。
「ほんと?」
「うん。」
「ここを少しだけ削ると、もっと丈夫になる。」
修はノコギリではなく、小さなヤスリを手渡した。
「職人は、少しずつ仕上げる。」
ルカは真剣な顔でヤスリを動かし始める。
リペはその様子を見て、目を細めた。
「未来の職人さんですね。」
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夕暮れ。
完成した木の灯台を港へ持っていく。
子どもたちは灯台の前へ並べた。
「灯台が二つ!」
「かわいい!」
町の人たちも足を止める。
エリオットは思わず笑った。
「本物の隣に、小さな灯台守の灯台ですね。」
その時、ルカが胸を張って宣言する。
「ぼくが大きくなったら!」
「本当の灯台守になる!」
港にいた大人たちは、優しく拍手を送った。
修はその光景を見ながら、小さくつぶやく。
「鐘は。」
「こういう未来を待っていたのかもしれない。」
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帰り道。
リペは木の灯台を大事そうに抱えて歩いていた。
「ご主人様。」
「なんだ?」
「私も作りたいです。」
「木工?」
「はい!」
「じゃあ工房へ帰ったら、一緒に作ろう。」
「やったー!」
嬉しさのあまり、木の灯台を高く掲げる。
そのままバランスを崩して転びそうになる。
ルカが慌てて支える。
「危ない!」
リペは照れ笑いを浮かべた。
「ありがとうございます。」
ルカは得意げに胸を張る。
「灯台守だから!」
その言葉に、港中が優しい笑いに包まれた。
そして灯台の鐘は、夕日に照らされながら静かに輝いていた。
まるで未来の灯台守を、誇らしそうに見守るように。




