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『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


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第31話 風は、笑顔とともに


翌朝。


まだ太陽が昇りきる前から、村は慌ただしく動き始めていた。


パン窯には火が入り、焼きたての香りが村中へ広がる。


子どもたちは広場を走り回り、大人たちは屋台を並べていく。


「こっちのテーブルを少し右へ!」


「花をもっと飾ろう!」


「久しぶりのお祭りだ!」


村には、何年も聞こえなかった活気が戻っていた。



リペは屋台を見回りながら、子どもたちに風船を配っていた。


「はい、一人一つですよ!」


「ありがとう、お姉ちゃん!」


「えへへ!」


その瞬間。


ポンッ。


頭が外れ、風船と一緒に空へ浮かびそうになる。


「きゃーーー!」


子どもたちは大笑い。


修は苦笑しながら頭を受け止めた。


「今日はサービス精神が旺盛だな。」


「計画通り……じゃありません!」


広場は笑い声に包まれた。



昼過ぎ。


村長が鐘を鳴らす。


カーン。


カーン。


「これより、風車祭りを始めます!」


大きな拍手が響く。


屋台には長い列ができ、子どもたちはゲームに夢中になる。


音楽隊の演奏が始まり、広場では自然と踊りの輪ができていく。


ノエルはその景色を見て、目を潤ませた。


「こんな景色……。」


「子どもの頃以来です。」



修は静かに風車の前へ立つ。


そっと手を添える。


【対象:風時計】


【損傷率:31%】


【町の活力を確認】


【修理条件 一部達成】


修は小さく笑った。


「やっぱり。」


「待っていたんだな。」


工具を取り出し、最後の調整を始める。


軸に油を差し、歯車の噛み合わせを整える。


最後の一本のボルトを締める。


カチッ。


その瞬間――


コトン。


風車が、小さく揺れた。


村人たちが息をのむ。


ゆっくり。


本当にゆっくりと。


羽根が動き始める。


ギィ……


ギィ……


一回。


二回。


そして――


ゴォォォン。


大きな羽根が風をつかんだ。


勢いよく回り始める。


「回った!」


「風車が!」


「本当に動いたぞ!」


子どもたちが歓声を上げる。


老人たちは帽子を取り、涙をぬぐう。


ノエルは、その場に座り込みながら泣いていた。


「ありがとう……。」


「本当に……ありがとう。」


修は首を横に振る。


「礼を言う相手は、皆さんですよ。」


「私は最後の手伝いをしただけです。」


「この風車を動かしたのは、この村です。」


村人たちは顔を見合わせ、誇らしそうに笑った。



その時だった。


風車の中心部から、小さな木箱が滑り落ちる。


「これは……?」


修が慎重に開ける。


中には、一冊の小さな手帳。


そして、一枚の設計図。


表紙には見覚えのある文字が刻まれていた。


『アルド修理手帳 第二巻』


リペは目を丸くする。


「第二巻?」


修がページを開く。


そこにはアルドの手書きの文章。


「風車は風では回らない。」


「人の想いが風を呼び、その風が羽根を回す。」


さらにページをめくると、一枚の地図が現れる。


七つの印のうち、二つ目だけに赤い印が付いている。


そして、三つ目の場所へ向かう線。


その先には――


『港町 ベルマーレ』


修は静かに微笑む。


「次の遺産か。」


手帳の最後のページには、短い一文だけが残されていた。


『急がなくていい。寄り道こそ、旅の宝物だから。』


修はその言葉を何度も読み返す。


「……アルドさん。」


「あなたも、こんな旅をしていたんですね。」



夕暮れ。


風車は力強く回り続けていた。


風に乗って、小麦の香りが村へ広がる。


子どもたちは笑い、大人たちは語り合う。


リペは回る風車を見上げながら、大きく伸びをした。


「ご主人様!」


「一つ終わりましたね!」


修は首を振る。


「終わったんじゃない。」


「始まったんだ。」


リペは笑顔でうなずく。


「はい!」


空高く舞う風車の羽根は、まるで二人の新しい旅を祝福するように、青空を切って回り続けていた。

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