第30話 風車祭りをもう一度
翌朝。
修は風車の前に立ち、村人たちを見渡した。
「皆さんにお願いがあります。」
集まった村人たちは、不思議そうな顔をしている。
「風車は直せます。」
「ですが、それだけではまた止まります。」
ざわり、と空気が揺れた。
「壊れているのは風車ではありません。」
「この村の『賑わい』です。」
村長はゆっくりとうなずいた。
「……その通りじゃ。」
「昔は、この広場に人があふれておった。」
修は木札を掲げる。
そこにはアルドの言葉。
『風は、人が笑う場所へ吹く。』
「この言葉は、ただの詩ではありません。」
「アルドさんは、この村を見て、この風車を作ったんです。」
「だから風車も、この村の笑顔を待っている。」
村人たちは静かに木札を見つめていた。
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その時、一人の少女が手を挙げた。
「お祭り……。」
「昔、お祭りやってた!」
老人たちが顔を見合わせる。
「ああ。」
「風車祭りじゃ。」
「小麦の収穫祭だったな。」
「子どもたちが風車の周りを走り回って……。」
「パンを焼いて……。」
「音楽隊も来ておった。」
リペは目を輝かせる。
「それです!」
「やりましょう!」
修も笑顔でうなずいた。
「風車祭りを復活させましょう。」
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準備はすぐに始まった。
何年も閉まっていたパン窯に火が入る。
壊れていた屋台は修が修理する。
リペは子どもたちと一緒に広場を掃除する。
「ここもピカピカ!」
「こっちも!」
子どもたちも負けじと雑巾を動かした。
一方、ノエルは納屋から古い風車祭りの旗を見つける。
色はあせていたが、まだ使えそうだった。
修は丁寧に破れた部分を縫い合わせる。
「新品にする必要はない。」
「この傷も、この村の歴史だから。」
ノエルは、その言葉を何度もうなずきながら聞いていた。
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夕方。
広場は少しずつ昔の姿を取り戻していた。
そこへ、一人の老人が古びた木箱を抱えてやって来る。
「これも使えるかのう。」
中には古いオルゴールが入っていた。
「祭りの始まりに鳴らしていた物じゃ。」
修が鑑定する。
【祭りのオルゴール】
【損傷率:64%】
【修理可能】
修は工具を取り出した。
「任せてください。」
歯車を一つずつ磨き、ゼンマイを調整する。
最後に小さなネジを締める。
カチッ。
修は静かにゼンマイを回した。
♪
優しい音色が広場に響く。
その瞬間、老人の目から涙がこぼれた。
「この音じゃ……。」
「この音を、また聞けるとは……。」
周りにいた村人たちも耳を澄ませる。
懐かしい旋律。
幼い頃に聞いた思い出。
それぞれの記憶が胸によみがえる。
リペはそっとつぶやいた。
「修理って、不思議ですね。」
「物だけじゃなくて……。」
「思い出まで直るんですね。」
修は優しく微笑む。
「思い出は壊れない。」
「思い出すきっかけが壊れるだけなんだ。」
リペはその言葉を胸に刻むように、何度もうなずいた。
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夜。
広場には提灯が並び始めた。
村長は静かに風車を見上げる。
「アルド殿。」
「もう少しだけ待ってくだされ。」
「明日、この村は、もう一度笑います。」
止まったままの風車は、月明かりに照らされて静かに立っていた。
しかし、その羽根はどこか嬉しそうに、夜風を受けて小さく軋んだ気がした。
明日は、何年も途絶えていた風車祭りが、再び開かれる。




