↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者: 森


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/116

第30話 風車祭りをもう一度


翌朝。


修は風車の前に立ち、村人たちを見渡した。


「皆さんにお願いがあります。」


集まった村人たちは、不思議そうな顔をしている。


「風車は直せます。」


「ですが、それだけではまた止まります。」


ざわり、と空気が揺れた。


「壊れているのは風車ではありません。」


「この村の『賑わい』です。」


村長はゆっくりとうなずいた。


「……その通りじゃ。」


「昔は、この広場に人があふれておった。」


修は木札を掲げる。


そこにはアルドの言葉。


『風は、人が笑う場所へ吹く。』


「この言葉は、ただの詩ではありません。」


「アルドさんは、この村を見て、この風車を作ったんです。」


「だから風車も、この村の笑顔を待っている。」


村人たちは静かに木札を見つめていた。


⸻


その時、一人の少女が手を挙げた。


「お祭り……。」


「昔、お祭りやってた!」


老人たちが顔を見合わせる。


「ああ。」


「風車祭りじゃ。」


「小麦の収穫祭だったな。」


「子どもたちが風車の周りを走り回って……。」


「パンを焼いて……。」


「音楽隊も来ておった。」


リペは目を輝かせる。


「それです!」


「やりましょう!」


修も笑顔でうなずいた。


「風車祭りを復活させましょう。」


⸻


準備はすぐに始まった。


何年も閉まっていたパン窯に火が入る。


壊れていた屋台は修が修理する。


リペは子どもたちと一緒に広場を掃除する。


「ここもピカピカ!」


「こっちも!」


子どもたちも負けじと雑巾を動かした。


一方、ノエルは納屋から古い風車祭りの旗を見つける。


色はあせていたが、まだ使えそうだった。


修は丁寧に破れた部分を縫い合わせる。


「新品にする必要はない。」


「この傷も、この村の歴史だから。」


ノエルは、その言葉を何度もうなずきながら聞いていた。


⸻


夕方。


広場は少しずつ昔の姿を取り戻していた。


そこへ、一人の老人が古びた木箱を抱えてやって来る。


「これも使えるかのう。」


中には古いオルゴールが入っていた。


「祭りの始まりに鳴らしていた物じゃ。」


修が鑑定する。


【祭りのオルゴール】


【損傷率:64%】


【修理可能】


修は工具を取り出した。


「任せてください。」


歯車を一つずつ磨き、ゼンマイを調整する。


最後に小さなネジを締める。


カチッ。


修は静かにゼンマイを回した。


♪


優しい音色が広場に響く。


その瞬間、老人の目から涙がこぼれた。


「この音じゃ……。」


「この音を、また聞けるとは……。」


周りにいた村人たちも耳を澄ませる。


懐かしい旋律。


幼い頃に聞いた思い出。


それぞれの記憶が胸によみがえる。


リペはそっとつぶやいた。


「修理って、不思議ですね。」


「物だけじゃなくて……。」


「思い出まで直るんですね。」


修は優しく微笑む。


「思い出は壊れない。」


「思い出すきっかけが壊れるだけなんだ。」


リペはその言葉を胸に刻むように、何度もうなずいた。


⸻


夜。


広場には提灯が並び始めた。


村長は静かに風車を見上げる。


「アルド殿。」


「もう少しだけ待ってくだされ。」


「明日、この村は、もう一度笑います。」


止まったままの風車は、月明かりに照らされて静かに立っていた。


しかし、その羽根はどこか嬉しそうに、夜風を受けて小さく軋んだ気がした。


明日は、何年も途絶えていた風車祭りが、再び開かれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。