表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/46

第29話 風が止んだ村


「行ってきます!」


工房の前でリペが大きく手を振る。


「気を付けてな。」


町長が笑顔で送り出す。


「時計台は任せておけ。」


ガインは修の肩を軽く叩く。


「土産話、楽しみにしてるぞ。」


ルナは小さな袋を差し出した。


「保存食です。」


「途中でお腹が空いたら食べてください。」


「ありがとう。」


修は仲間たちへ深く頭を下げた。


「それじゃ、行ってきます。」



四日後。


丘を越えた先に、小さな村が見えてきた。


「あれが風車村です。」


ノエルが指差す。


村の中央には、大きな風車。


しかし、その羽根はぴくりとも動いていない。


周囲の畑もどこか元気がなく、風に揺れるはずの小麦も静かだった。


リペは首をかしげる。


「風が吹いていませんね。」


修は空を見上げた。


雲は流れている。


草も揺れている。


「風は吹いている。」


「でも……。」


「風車だけが止まっている。」



村へ入ると、人々が集まってきた。


「修理屋さんだ!」


「本当に来てくれた!」


子どもたちは興味津々でリペの後ろを歩く。


「お姉ちゃん!」


「そのネジ、何?」


リペは胸を張る。


「これは私の大事なネジです!」


「なくすと頭が外れます!」


「すごーい!」


修は思わず笑った。


「そこ、感心するとこかな。」



村長の家へ案内される。


白髪の老人が静かに頭を下げた。


「遠いところ、ありがとうございます。」


修も礼を返す。


「まずは風車を見せてください。」


「もちろんです。」



巨大な風車の前。


近くで見ると、その大きさに圧倒される。


羽根は修理された跡がある。


軸も新しい。


歯車も交換済み。


ノエルの言う通りだった。


「全部直してあります。」


「それでも回らないんです。」


修はそっと風車へ手を当てた。


「さて。」


「どこが痛い?」


【対象:風時計】


【損傷率:31%】


【修理可能】


【警告】


【機械に異常なし】


修は目を見開いた。


「異常なし……?」


リペが覗き込む。


「壊れてないんですか?」


「そうみたいだ。」


それなら、なぜ回らないのか。


修は記憶を読み取る。



昔の風車村。


大きな風車が勢いよく回っている。


子どもたちが笑いながら走り回る。


パンを焼く香り。


粉ひき小屋の音。


そこへ、一人の旅人が現れた。


工具箱を背負った、穏やかな笑顔の男。


アルドだった。


『いい風ですね。』


『この村は、風を大切にしている。』


村人たちは笑う。


『風じゃなくて、人のおかげさ。』


『みんなで回してるようなものだからな。』


アルドは嬉しそうに頷いた。


『それなら安心です。』


『この風車は、きっと長生きします。』


景色が変わる。


時は流れ、少しずつ村から人が減っていく。


若者は町へ出た。


粉ひき小屋も閉まる。


風車の周りに集まる人はいなくなった。


最後に風車が、ゆっくり止まる。


その瞬間だけが、静かに映し出された。



修は目を開けた。


「やっぱり……。」


ノエルが身を乗り出す。


「原因が分かったんですか?」


修は風車を見上げる。


「壊れていません。」


「ただ。」


「役目を失ってしまったんです。」


村人たちは顔を見合わせる。


「役目……?」


「昔、この風車は村のみんなのために回っていました。」


「でも今は。」


「誰も、この風車を必要としていない。」


その言葉に、村長は静かに目を閉じた。


「確かに……。」


「製粉所も閉じてしまった。」


「子どもたちも少なくなった。」


「祭りもなくなった。」


ノエルは拳を握る。


「じゃあ……。」


「どうすればいいんですか?」


修は優しく笑った。


「風車を直す前に。」


「風車が必要な村に戻しましょう。」



その時だった。


リペが風車の下を歩いていると、一枚の古い木札を見つけた。


「ご主人様!」


「何かあります!」


修が受け取る。


そこには、アルドの文字でこう刻まれていた。


『風は、人が笑う場所へ吹く。』


修は静かに微笑む。


「アルドさんらしいな。」


リペも嬉しそうに頷いた。


「時計台と同じですね!」


「うん。」


「きっと全部、つながってる。」


夕日に照らされた風車は、まだ回らない。


けれど。


その前には、少しずつ人が集まり始めていた。


それは、止まっていた風が再び吹き始める、小さな始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ