第26話 時計台の秘密
翌朝。
「ご主人様!」
リペが工房の窓を開ける。
爽やかな風が部屋を通り抜けた。
「今日は時計台ですね!」
修は工具箱を肩に掛け、笑顔で頷く。
「ああ。」
「まずは中を調べよう。」
⸻
広場では町長が待っていた。
「鍵を持ってきたぞ。」
町長は古びた鉄の鍵を取り出す。
「この扉が最後に開いたのは……。」
「私が子どもの頃じゃ。」
「そんなにですか。」
修は時計台を見上げた。
近くで見ると、石壁には長い年月の跡が刻まれている。
ツタが絡み、小鳥が巣を作っていた。
「失礼するよ。」
ギィ……
重い音を立てて扉が開く。
冷たい空気が流れ出した。
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内部は薄暗い。
らせん階段が上へ続いている。
「わぁ……。」
リペは目を輝かせた。
「秘密基地みたいです!」
修はランタンに火を灯す。
「足元に気をつけて。」
「はい!」
三段目でつまずいた。
「わぁっ!」
ゴロン。
ゴロン。
ゴロン。
階段を転がって、一番下まで戻ってきた。
「ただいま戻りました!」
修は苦笑する。
「まだ出発して一分だけどな。」
町長は腹を抱えて笑った。
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気を取り直して再び登る。
二階。
三階。
四階。
壁には古い歯車が並んでいる。
どれも錆び付き、動く気配はない。
修はそっと手を添える。
「さて。」
「どこが痛い?」
【対象:時計機構・第一歯車】
【損傷率:64%】
【修理可能】
【交換不要】
修は驚いた。
「交換しなくていい。」
町長が首をかしげる。
「直るのか?」
「はい。」
「磨けば、まだ働けます。」
修は丁寧に錆を落とし始める。
ゴシ……。
ゴシ……。
焦らない。
一本一本。
まるで長年働いた職人の肩を叩くように。
リペも布で歯車を磨く。
「頑張ってください。」
「もう少しですよ。」
すると、小さく。
カチッ。
歯車がわずかに動いた。
「動いた!」
リペは嬉しそうに拍手する。
修も微笑んだ。
「まだ生きてる。」
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さらに上の階へ進む。
そこには巨大な振り子があった。
しかし、その根元には見慣れない紋章が刻まれている。
修は目を細めた。
「この紋章……。」
町長も驚く。
「初めて見る。」
リペが首をかしげる。
「町のマークじゃないんですか?」
修は静かに手を添える。
景色が流れ始める。
まだ町ができる前。
一人の老人が巨大な時計を組み立てている。
その隣には、小さな男の子。
『いつか、この町の宝物になりますように。』
『人の時間だけじゃない。』
『思い出も刻む時計になるんだ。』
景色はそこで途切れた。
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修は静かに目を開ける。
「町長。」
「何じゃ。」
「この時計台。」
「この町の人が作ったものじゃありません。」
町長は目を丸くした。
「なんと……。」
「旅の時計職人が残したものです。」
「そして。」
修は振り子の紋章を見つめる。
「まだ、この続きがあります。」
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帰り際。
修は振り子の裏側に、小さな文字を見つけた。
埃を払う。
そこには、手彫りの文字が残されていた。
『時は、人が刻むもの。』
修はその言葉を静かに読み上げる。
リペは嬉しそうに笑う。
「素敵ですね。」
修もゆっくり頷く。
「ああ。」
「だから時計台は、みんなを待っていたんだ。」
その時。
リペが振り向こうとして、振り子に頭をぶつけた。
ゴンッ。
振り子が少しだけ揺れる。
カチ……。
静まり返っていた時計台に、小さな音が響いた。
三人は顔を見合わせる。
修は思わず笑った。
「リペ。」
「はい?」
「たまには失敗も役に立つな。」
リペは胸を張る。
「えっへん!」
町長も笑いながら空を見上げた。
止まっていた時計台は、ほんの少しだけ――
未来へ向かって動き始めていた。




