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『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者:


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第22話 世界で一番小さなお客様


王女アリアが帰ってから数日後。


異世界リペア工房には、王都中から依頼が舞い込むようになっていた。


時計。


椅子。


剣。


ぬいぐるみ。


毎日忙しい。


「師匠!」


リペは帳簿を抱えて走ってくる。


「今日の依頼は七件です!」


修は苦笑した。


「人気になったな。」


「はい!」


「でも、お昼ご飯の時間も確保しました!」


「それは大事だ。」


そんな会話をしていると――


コンコン。


工房の扉が小さく叩かれた。


……いや。


あまりにも音が小さい。


「誰かいる?」


返事がない。


修が扉を開けると、そこには誰もいなかった。


「気のせいかな?」


その時。


足元から、かすかな声が聞こえた。


「……あの。」


修が視線を落とす。


そこに立っていたのは、七歳くらいの小さな女の子だった。


茶色い髪を二つ結びにし、小さな布のポーチを胸に抱えている。


「こんにちは。」


修はしゃがみ込み、目線を合わせた。


「こんにちは。」


女の子は少し安心したように笑った。


「わたし、ミーナ。」


「修理屋さん……ですか?」


「そうだよ。」


「何を直そうか?」



ミーナは大切そうにポーチを開く。


中から出てきたのは、小さな木の人形だった。


片方の腕が折れ、塗装も剥げている。


何度も遊んだことが、一目で分かった。


「この子ね。」


「お兄ちゃんが作ってくれたの。」


修は優しく受け取る。


「お兄ちゃんは?」


ミーナは少し俯いた。


「王都の騎士になったの。」


「遠くへ行っちゃって……。」


「だから。」


「この子だけが、お兄ちゃんなの。」


工房が静かになる。


リペはそっとミーナの隣に座った。


「きっと。」


「寂しいですよね。」


ミーナは小さく頷いた。



修は人形を手に取る。


「さて。」


「どこが痛い?」


【対象:木彫り人形】


【損傷率:48%】


【修理可能】


景色が流れる。


まだ幼い少年が、木を削っている。


「うーん。」


「顔が難しいなぁ。」


何度も失敗しながら、小さな人形を作る。


完成すると、妹へ渡した。


『泣きたくなったら。』


『この子と遊べ。』


『俺が帰るまで、守ってくれ。』


幼いミーナは満面の笑みで抱きしめた。


景色が終わる。



修は静かに微笑んだ。


「優しいお兄ちゃんだ。」


ミーナは驚く。


「どうして分かったの?」


「この子が教えてくれた。」


修は工具箱を開く。


折れた腕を丁寧に接ぎ合わせる。


傷は完全には消さない。


遊んだ証だから。


最後に木目へ優しく油を塗る。


「修理。」


淡い光が人形を包む。


腕は元通りになった。


でも、小さな擦り傷だけは残っている。


ミーナは首をかしげた。


「傷、消えないの?」


修は優しく答えた。


「消そうと思えば消せる。」


「でもね。」


「これは、お兄ちゃんと遊んだ思い出だから。」


「全部なくしちゃったら。」


「少し寂しい気がする。」


ミーナは人形を抱きしめた。


「うん!」


「この傷、大好き!」



その時だった。


工房の扉が勢いよく開く。


「ミーナ!」


若い騎士が飛び込んできた。


肩で息をしている。


「やっと見つけた……。」


ミーナは振り返る。


「お兄ちゃん!」


二人は勢いよく抱き合った。


修は目を丸くする。


「帰ってきたんですね。」


騎士は照れくさそうに笑った。


「今日、任務が終わったんです。」


「家へ帰ったら、妹がいなくて。」


「工房へ行ったと聞いて、慌てて探しました。」


ミーナは人形を見せる。


「見て!」


「直ったよ!」


兄は人形を見つめ、優しく笑った。


「まだ持っててくれたんだ。」


「もちろん!」


「宝物だもん!」


兄妹の笑顔を見て、リペはまた涙ぐんでいた。


「うぅ……。」


修が苦笑する。


「今日は泣いてばかりだな。」


「だって……。」


「嬉しいです。」



帰り際。


兄は修へ深く頭を下げた。


「ありがとうございました。」


「妹だけじゃなく。」


「私まで救われました。」


修は照れくさそうに頭をかく。


「私は何も。」


「人形を少し手伝っただけです。」


兄妹は手をつないで帰っていく。


夕日に照らされた二つの影は、少しずつ遠ざかっていった。


工房に静けさが戻る。


その時。


リペが修へ近づく。


「ご主人様。」


「なんだ?」


「私も木のお人形が欲しいです。」


「作ろうか?」


「はい!」


修は笑いながら木材を手に取る。


一時間後――


完成した木彫りのリペ人形。


リペは大喜びで受け取った。


「そっくりです!」


その瞬間、嬉しさのあまり人形を高く放り投げる。


ポーン。


天井に当たる。


コツン。


落ちてきた人形を受け止めようとして、自分の頭でキャッチ。


ゴンッ。


「いたいです!」


修は思わず吹き出した。


「人形は無事か?」


リペは人形を抱きしめ、満面の笑みで答える。


「はい!」


「私より丈夫です!」


工房には、今日も温かな笑い声が響いていた。

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