第12話 リペ、初めてのおつかい
朝。
工房では修が工具を並べていた。
「よし。」
「今日は釘が足りないな。」
リペが元気よく手を挙げる。
「ご主人様!」
「はい。」
「私が買ってきます!」
修は少し考える。
「……一人で?」
「任せてください!」
「大丈夫かなぁ。」
ガインが笑う。
「子どもの初めてのおつかいみたいだな。」
ルナも苦笑する。
「迷子にならなきゃいいけど。」
リペは胸を張る。
「私は最新版です!」
修はツッコむ。
「いや、お前まだVer1.2くらいだろ。」
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修は銀貨を一枚渡した。
「釘を一袋。」
「分かりました!」
「寄り道するなよ。」
「はい!」
リペは元気いっぱいに飛び出していった。
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町。
リペはきょろきょろしている。
「釘屋さん……。」
「釘屋さん……。」
すると、パン屋のおばちゃんが声を掛けた。
「あらリペちゃん。」
「こんにちは!」
「どこ行くの?」
「釘を買いに行きます!」
「えらいねぇ。」
頭を撫でられる。
リペは嬉しそうに笑う。
「えへへ。」
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少し歩くと、今度は町長に会う。
「おや。」
「リペじゃないか。」
「こんにちは!」
「何してるんだい?」
「釘を!」
「買います!」
町長は笑う。
「頑張っておいで。」
「はい!」
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さらに歩く。
ガインの鍛冶屋の前。
「おっ。」
「一人か?」
「はい!」
「釘を買います!」
ガインは腕を組む。
「釘なら俺の店にもあるぞ。」
リペは固まる。
「…………。」
「ご主人様は。」
「『買ってこい』って言いました。」
「はい。」
「どこで買うとは言ってません。」
ガインはニヤリと笑う。
「確かにな。」
「一本サービスだ。」
リペは目を輝かせた。
「ありがとうございます!」
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工房。
修は依頼を終えたところだった。
「遅いな。」
ベルが鳴る。
チリン。
「ただいま帰りました!」
リペが元気よく帰ってくる。
「おかえり。」
「ちゃんと買えた?」
「はい!」
袋を受け取る。
修は中を見る。
「……。」
「釘だ。」
「ちゃんと釘だ。」
リペは胸を張る。
「成功しました!」
修は笑う。
「初めてのおつかい、大成功だな。」
その時だった。
ガインが工房へ入ってきた。
「おう。」
「リペ。」
「一本入れといたぞ。」
修は袋を見る。
一本だけ、とんでもなく巨大な釘が入っていた。
「これ何?」
ガインは笑う。
「城門用だ。」
「なんで入れた!」
リペは慌てる。
「返品します!」
勢いよく走り出そうとして――
ズルッ。
転ぶ。
巨大な釘が宙を舞う。
ドスン!!
工房の床へ突き刺さる。
「…………。」
「…………。」
床に大穴が開いた。
地下が見えている。
リペは青ざめた。
「ご主人様。」
「うん。」
「工房、壊れました。」
修は穴を覗き込む。
「今日は床か。」
ルナは吹き出した。
「あははは!」
ガインは腹を抱えて笑っている。
町長まで笑っていた。
修は頭を掻きながら笑う。
「よし。」
「まずは、お前から修理しよう。」
「はい!」
「違う。」
「工房だ。」
みんなの笑い声が工房いっぱいに響いた。
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その日の営業終了後。
リペは一人、工房の床を見つめていた。
「ご主人様。」
「なんだ?」
「ごめんなさい。」
修は優しく笑う。
「失敗しない人なんていない。」
「でも。」
「壊したなら、一緒に直そう。」
リペは大きく頷く。
「はい!」
その夜。
二人は並んで工房の床を修理した。
リペはまだ修理補助しか使えない。
それでも、一生懸命に工具を運び、釘を渡し、木くずを掃除する。
修はそんなリペを見て、小さく笑った。
「少しずつ。」
「ちゃんと職人になってきたな。」
リペは照れくさそうに笑う。
「えへへ。」
その笑顔は、工房の灯りよりも少しだけ温かかった。




