それぞれの心の内
山崎が和美に告白する光景を、遠くの物陰からじっと盗み見ていた結愛は、小さく胸の中で息を吐いた。
(……ざまあみろ)
そんな意地悪な感情が、心の奥底からふつふつと湧き上がってくるのを止められなかった。かつてつき合った山崎への冷ややかな想いか、それとも和美が誰のものにもならなかったことへの安堵か。自分でもよく分からない感情を抱えながら、結愛は告白の現場から戻ってきた和美、そして咲良と合流し、三人で何事もなかったかのように部屋へと引き上げていった。
一方、完膚なきまでに玉砕した山崎は、魂が抜けたような足取りで男子の部屋へと戻っていった。
布団にひっくり返り、事の次第を一部始終聞いた高橋と三浦は、顔を見合わせて苦笑いしたあと、山崎の肩をぽんぽんと叩いた。
「まあ、しょうがないよ。面影は学校じゃ『新体操部の妖精』なんて呼ばれるくらいの美少女だぜ? そう簡単に、俺たちみたいな普通の男のものにはならないってことさ」
「高橋の言う通りだよ。告白できただけでも大したもんだって。元気出せよ」
二人のそんな的外れとも言える慰めを聞きながら、山崎はただ天井を見つめて溜息をつくしかなかった。
その夜。
消灯時間を過ぎ、部屋が暗くなった後も、和美は一人布団の中で目を冴えさせていた。
昼間の疲れで体は重いはずなのに、頭の芯だけが妙に冴えている。
――『僕と付き合ってください』
山崎のあの真っ直ぐな言葉と、熱い視線が脳裏に焼き付いて離れなかった。
(私……男の子から、そんな風に『女』として見られてたんだ……)
それまでの和美にとって、自分は生まれながらの女の子より劣る存在。まがい物の女の子。でしかなかった。
そして劣等感を屈服させるための「新体操部の一選手」であり、クラスの一生徒でしかなかった。
それが好意を寄せられる存在、一人の女性として男性から求められる存在。その事実が、急に現実味を帯びて迫ってくる。
(私は、みんなにとって……そして自分にとって、一体どういう存在なんだろう……)
窓の外から聞こえる京都の静かな夜の音に耳を傾けながら、和美はまだ見ぬ自分の「女の子」としての一面に、戸惑いとほんの少しの奇妙な胸の高鳴りを覚えずにはいられなかった。




