ロビーで仁王立ち
名残惜しさを振り切るようにして、六人は阿弥陀堂の脇にある石段を一気に駆け下りていった。
帰路は五条坂のタクシー乗り場まで十五分ほど早歩きで移動したものの、そこからが誤算だった。夕方の観光地は大混雑しており、タクシーを捕まえるために三十分もの足止めを食らってしまったのだ。
結局、三人ずつ二台のタクシーに分乗して宿舎に滑り込んだときには、時計の針はすでに午後五時前を指していた。
門限である午後四時を、一時間近くも過ぎている。和美は自分一人で怒られよう責任を被ろうと覚悟を決めていた。
タクシー待ちの間にもう間に合わないと覚悟は決めていたが、宿舎のロビーに一歩足を踏み入れた瞬間、六人の動きが凍りついた。そこには、案の定、仁王立ちになってこちらを睨みつけている担任の先生の姿があった。
六人は完全に観念し、先生の前に一列に雁首を揃えて頭を下げた。重苦しい空気の中、容赦のない叱責が飛んでくる。
そのとき、和美が一歩前に出た。
「申し訳ありませんでした。班長である私の時間管理が甘かったせいで、門限の時間を大幅にオーバーしてしまいました。責任はすべて私にあります」
和美はすべての罪を一人で被ろうとした。しかし、班のメンバーがそれを黙って見ているはずがなかった。
山崎は驚いた顔をして和美の顔を見つめていた。
「先生、違います! 和美のせいじゃありません。途中の道路の渋滞とか、タクシー待ちが凄くて動けなかったんです。あんなの誰が班長でも予測できません!」
高橋をはじめとした男子たちが、すかさず和美を庇い立てする。さらに、隣にいた咲良が、ついに堪えきれずにポロポロと涙を流しながら訴え出た。
「うう……私が、靴擦れなんか作ってみんなの足を引っ張っちゃったせいで……っ。和美ちゃんは私の手当てをしてくれたんです……っ、悪いのは私です……!私が皆と行かなかったら良かったんです」
予想外の展開に、怒っていた先生の方が完全に毒気を抜かれ、混乱を収集するのに苦労し始める。
「あ、いや……お前たちがお互いを庇い合う気持ちは分かった。怪我があったなら仕方ない部分もあるが、連絡は一本入れるべきだろ……。とにかく!」
この感動的な(?)大混乱のおかげで、当初予想されていたような大目玉を食らう事態は免れた。
「もういいから、ほら、全員急いで夕食会場に行きなさい! 他の班はもう集まってるぞ!」
先生に背中を押されるようにして、六人は顔を見合わせ、小さく苦笑いを交わしながら食堂へと走った。ハプニングだらけの、けれどこれ以上ないほどに濃密な、彼らの京都の班別行動が幕を閉じた。
大広間に入っていくと和美たち6人以外はすでに揃って和美たち4班の到着を待っていてくれた。




