予期せぬチームワーク
困難を極めるかと思われたオリジナルプラン作りだったが、蓋を開けてみればそれは思ったよりも楽しい時間だった。
「ああでもない」「こうでもない」と頭を突き合わせているうちに、当初あれほど漂っていた気まずさはどこかへ消え去り、6人の間にはむしろ強い連帯感が生まれつつあった。
「みんな、資料調達してきたよー!」
咲良が旅行倶楽部の顧問・鈴木先生の元から、付箋だらけの京都観光ガイド本を何冊も抱えて戻ってきた。それを机に広げた瞬間、6人は「キャーキャー」と声を上げながらページに群がった。
調べていくうちに、様々な事実が判明する。
まず、お目当ての錦市場は日中から夕方にかけて観光客で激混みするが、午前中の早い時間なら比較的空いているということ。さらに幸運なことに、学校が手配した宿舎からは徒歩15分という目と鼻の先にあることが分かった。
「予算1500円なら、串に刺さった天ぷらとか、ミニコロッケとか、出し巻き卵とか……だいたい4品くらいは余裕で回れるよ!」
「移動も含めて1時間もあれば、しっかり食べ歩きを満喫できそうだね」
和美と翼が熱心にノートに書き留めていく。
懸案だった「主要な寺社二箇所以上」という条件も、錦市場から徒歩圏内にある『八坂神社』と、そこから産寧坂を登った先にある『清水寺』を組み込めば、市バスの渋滞に巻き込まれることなく、すべて徒歩で回れる黄金ルートが完成することが分かった。
「よしっ、ルートは完璧!……ねえ、これ、学校に提出するプレゼン資料の作成、私にやらせてくれない?」
そう言って元気に手を挙げたのは、言い出しっぺの結愛だった。パソコンが得意な彼女は、パワーポイントを使って職員会議用の提出資料を作ると買って出てくれたのだ。
「あ、それ助かる! 結愛、こういう調べ学習のまとめ得意だもんね」
和美が笑顔で太鼓判を押すと、結愛は咲良を振り返って悪戯っぽくウィンクした。
「咲良も手伝ってね。資料の隅に『旅行倶楽部・鈴木顧問 監修』って一筆入れといた方が、先生たちの信頼感が高くなって一発でパスしそうじゃない?」
「さすが結愛、悪知恵が働くわね! 乗った!」
二人がハイタッチを交わす姿を見て、リーダーの翼も嬉しそうに腕を組んだ。
「じゃあ、結愛さん、パワポの基本ベースをお願い。必要な写真とか、詳しい解説文のテキストが出来たら、残りのみんなで手分けして集めるからさ」
「了解!」
パチパチとキーボードを叩く真似をする結愛を中心に、男子も女子も一緒になって笑い合う。
(このチームワーク、すごく気持ちいい……)
和美は胸の奥で、心地よい充実感を味わっていた。一時はどうなることかと思った班分けだったが、今のところ結愛と山崎の間に妙な摩擦が起きる気配もない。
――しかし、和美は気づいていなかった。
全員でひとつの目標に向かって生き生きと指示を出し、周囲を優しく気遣う和美の横顔。
その凛とした姿を、一歩引いた場所からじっと見つめる山崎悠真の視線に。
結愛への失恋を経て、山崎の胸の中で膨らみつつある「別の想い」の存在に、鈍感な和美が気づくのは、まだ少し先のことだった。




