校長室への凱旋、そして放課後の約束
翌日、和美は案の定、校長室へと呼び出された。
校長先生を中心に、杉浦先生と和美が並んで立ち、その向かいに新入生六人が整列する。彼女たちからの報告を「受ける」側としての立ち位置。
ずらりと並んだ後輩たちの凛々しい姿を見て、和美は自分のこと以上に彼女たちのことを誇らしく感じていた。
六人を代表して、高橋えまが緊張で少し声を震わせながら口を開く。
「この間、市営体育館で行われた新体操の秋の地区大会において、団体競技ボール5で三位入賞しました。ここに、校長先生へご報告します」
えまはうやうやしく、三位の楯を校長先生へと手渡した。
校長先生は柔和な笑みを浮かべ、受け取った楯を眺めた。
「よく頑張りましたね。聞いたところによると、わが校の新体操部が秋の地区大会で入賞したのは、今回が初めてだとか。これからのさらなる活躍を期待していますよ」
温かい激励の言葉をいただき、ささやかな報告会は幕を閉じた。
新入生たちが教室へ戻されたあと、和美と杉浦先生だけがその場に残った。
「杉浦先生、お疲れ様。ようやく結果が出ましたね」
「はい。欲しかった賞が、ようやく取れました。この面影がよく新入生を引っ張ってくれたおかげです」
杉浦先生の言葉に、校長先生が深く頷く。
「面影さんか。君の努力も、しっかり覚えておくよ」
「はい。ありがとうございます」
背筋を伸ばし、和美は深く一礼した。「面影」という名が、一人の功労者として校長室に響いたことが、何よりも誇らしかった。
ようやく大きな区切りがつき、和美は自分の教室へと戻った。
昼休み。机を寄せ合い、結愛や数人の友達とお喋りに興じる。
「和美、聞いたよ! 秋の地区大会で賞獲れたんだって?」
「ようやくよ……。なんだか、やっと肩の荷が下りたわ」
「部長さんって大変なんだね。でもすごいじゃん」
「ふふ、でもね。あの子たち、三位の楯を私に託してくれたんだよ」
「えー! どんな感じだった?」
「……重かった。物理的にも、それ以外の意味でもね」
和美が照れくさそうに笑うと、結愛が身を乗り出して和美の顔を覗き込んだ。
「お疲れ様、和美。ねえ、今日一緒に帰ろう?」
「そうだね。今日は部活もお休みだし……久しぶりに、ソフトクリームでも食べに行く?」
「いいね! 約束だよ」
窓の外には、抜けるような青空が広がっていた。
男の子だった和巳が女の子として女の子たちを指導している。自分には人を教え導くなんて資格はない。でも他人から評価されている。そんな現状に不思議なずれている感覚を覚えていた。




