交錯する意志、揺れるチーム
新入生の指導、そして自分自身の技術向上。
二つの重責を担う和美にとって、今年の部活動は昨年とは比べものにならないほど多忙を極めていた。
昨年は新入生が三人しかおらず、少人数ゆえのまとまりの良さがあった。けれど、今年は六人。人数が増えれば、そこには自然と小さなグループが出来上がる。切磋琢磨と言えば聞こえはいいが、彼女たちの間にはどこか刺々しい「対抗心」が芽生え始めているようだった。
杉浦先生は「競い合うことは競技スポーツとして正しい在り方だ」と言う。
けれど、新体操、特に団体競技においては何よりも連携が重要だ。和美は、過剰な対抗心が演技の調和を乱すことを危惧していた。だからこそ、和美はあえて特定のグループで固まらないよう、団体演技の組み合わせを意図的に組み替えて練習させていたのだ。
しかし、その配慮が裏目に出た。
こうした和美のやり方に不満を抱いた新入生の一人が、部長である佐々木さんに直訴したらしい。
「和美、新入生の一部に、あなたのやり方が気に食わないって子が数人いるみたいよ」
放課後、佐々木さんに呼び止められ、単刀直入に告げられた。
「私は、秋の地区大会に向けて五人の連携演技に支障が出ないよう、組み合わせを替えながら調整しているつもりなのですが……」
困惑しながら答える和美に、佐々木さんは静かに問いを重ねる。
「メンバーを頻繁に入れ替えて練習や試技をさせている、その『意図』を彼女たちに説明したことはある?」
「いえ……。彼女たちのデビュー戦は秋の地区大会になるわけですから、それに向けて準備するのは当たり前のこととして、あえて話してはいません」
「なるほどね。でもね和美、新入生の頭の中には、まだ秋の地区大会の団体戦のことなんて影も形もないわよ」
和美は思わず目を見開いた。
「杉浦先生があれだけ何度も、目標としてお話しされていてもですか?」
「ええ。一回、あの『板』を踏んで痛い目を見ないと、実感が湧かないこともあるのよ」
佐々木さんの言葉に、和美はハッとさせられた。自分にとっては去年の苦い経験があるからこそ「当たり前」だった意識も、まだ何色にも染まっていない彼女たちにとっては、ただ「やりたいメンバーと引き離される不自由」でしかなかったのだ。
「先輩、アドバイスありがとうございます。……新入生にもちゃんと伝わるような言い方を、もう一度考えてみます」
「そうして。それとね、和美」
去り際、佐々木さんが和美の肩にぽんと手を置いた。
「あまり、一人で抱え込もうとしないでね」
その手の温もりに、和美は知らず知らずのうちに自分が肩に力を入れすぎていたことに気づかされた。
理想を押し付けるのではなく、まずは彼女たちと同じ地平に立って言葉を紡がなければならない。和美は体育館の隅でストレッチを始める新入生たちの背中を見つめ、深く息を吐いた。




