放課後の甘い空気
秋の地区大会という大きな山を越え、部活動は束の間の休みに入った。
久しぶりに、結愛たちと放課後を一緒に過ごす。帰り道、駅前のファンシーショップに立ち寄った。
「見てこれ、可愛いー!」
結愛たちがはしゃぎながら、パステルカラーのファンシー文具を見て回る。その騒がしさが、今の和美には心地よかった。
一通り店を回ったあと、併設されたカフェコーナーで一息つく。テーブルには、色鮮やかなドリンクと甘いスイーツ。
「ねえ和美、新体操始めてからスタイル、すごくなったよね」
ストローをくわえていた結愛が、まじまじとこちらを見て言った。
「えっ、そうかな……」
「そうだよ。なんていうか、全体的に締まったし、女性的なラインが身についてきたっていうか」
――女性的なライン。
その言葉に、和美は内心でドキリとした。
(男の痕跡が、また一つ減ったのかな……)
鏡で見慣れているはずの自分の身体が、他人の目を通して「書き換えられていく」ような、不思議な高揚感。
「ところで和美、レオタード着たんでしょ?」
結愛がニヤリと笑って、顔を近づけてきた。
「え、あ……うん。秋の地区大会で着させてもらったけど」
「で、どうだった? 本番の勝負服とやらは」
期待に満ちた結愛の視線を受け、和美は少し考えてから、正直な感想を口にした。
「……肩、凝った」
「なんだ、つまんない!」
結愛がガクッとした拍子に、みんなから笑いが漏れる。
レオタードの締め付け。背筋を伸ばし続けなければならない緊張感。
確かに大変だったけれど、あの「窮屈さ」さえ今はどこか誇らしい。
甘いジュースが、試合で乾ききっていた身体に、しっとりと染み渡っていった。




